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世界最大のクラウド型CRMを提供するセールスフォースのコスト構造は上場前後でどのように変わってきたか?

  • 収益の内訳
  • 上場前後のコスト構造を比べて見る
  • 資産構造の変化
  • 資産の調達源泉
  • フリーキャッシュフローの状況

今回取り上げるのは、世界最大のクラウド型CRM(顧客管理)を提供するセールスフォース(Salesforce.com)です。

始まりは1999年、企業向けソフトウェア企業オラクルの幹部だったマーク・ベニオフ氏が設立し、2004年6月にはニューヨーク証券取引所に上場しています。

セールスフォースはいわゆる「SaaS(Softweare as a Service)」型のクラウドサービスとしては先駆けと言ってよく、企業向けサブスクリプション(定期課金)モデルの中でも最も参考にすべき企業の一つと言えます。

まずは損益の推移を見てみます。

売上高はかなり綺麗な成長を見せ、2017年1月期には83.9億ドルにまで達しています。

一方、利益率は今のところ10%を超えるようなことはなく、2012年1月期からの4年間は営業赤字となっています。


収益の内訳

次に、収益内訳の推移をみます。まずはサービス別です。

これは3年分しか追えませんでしたが、直近だと「Sales Cloud」が30億ドル、「Service Cloud」が23億ドル、「Salesforce Platform and Other」が14億ドル、「Marketing Cloud」が9.3億ドルの収益をあげています。

4種類の製品ジャンルから、比較的バランスよく収益をあげているように見えます。


続いて、地域ごとの収益内訳です。こちらは2003年1月期までさかのぼることができました。



アメリカの売上が62億ドルと、かなりの部分を占めていることがわかります。ヨーロッパでは13.7億ドル、アジア太平洋地域では7.93億ドルの売上。

割合ベースでもみてみます。

アメリカの割合は一時期70%以下まで下がったものの、再び上昇して収益の74%を占めています。


上場前後のコスト構造を比べて見る

続いて、セールスフォースの営業費用を対売上比率でみてみます。世界最大のCRMサービスのコスト構造は、収益の成長とともにどのように変化してきたのでしょうか?

まずは上場した2004年以前のコスト構造をみてみましょう。





創業から1年ちょっとしか経っていない2001年1月期には、売上原価率63%、マーケティング&セールス費用が467%、研究開発費62%、一般管理費126%となっています。最初は短期的な採算度外視で思いっきりアクセルを踏み込んだことがよくわかります。

その後、上場直前の2004年1月期には売上原価率19%、販管費合計が78%となり、現在とそんなに変わらない水準になっています。

次に、上場した2005年1月期以降のコスト構造です。


売上原価率は概ね20%前後となっていますが、近年は25%前後となっており、少し増加傾向です。

セールスフォースの売上原価には、データセンターの運営費や償却費、カスタマーサポートなどに関する人件費などが含まれています。

営業費用の中で一番大きいのはマーケティング・セールス費(Marketing and sales)で、売上の半分程度のコストがここにかかっています。この多くは営業スタッフへの人件費で、企業向けSaaSならではの構造と言えます。

研究開発費(Research and development)は2010年ごろまでは10%程度でしたが、近年は15%前後にまで増大しています。

一般管理費(General and administrative)はむしろ減少傾向で、10年前は20%近くあったのが、近年は12%前後にまで抑えられています。


セールスフォースの創業期を想像すると、大量の営業部隊を雇って企業向けに導入してもらい、3年スパンで採算を立てるという明確な経営戦略を立てていたのではないかと推察されます。

ある程度メドが経ったああとも、成長が続く限りはセールスに大きなコストを割くことでシェアの拡大を優先するという、ジャンルは異なりますがAmazon.comなどとも共通するものを感じます。

資産構造の変化

続いて、セールスフォースの資産構造の変化を追ってみます。


一目見て大きいことがわかるのは買収によるのれん(Goodwill)で、2017年1月末には72億ドルにものぼっています。

比率でもみてみましょう。

2010年1月期までは流動資産(Current assets)が資産の6割以上を占めていましたが、その後、少しずつのれん(Goodwill)が増大し、直近では総資産の41%を占めています。

セールスフォースが積極的なM&Aを重ねてきたことがわかる資産構造となっていると思います。

資産の調達源泉

続いて、セールスフォースがこれらの資産のための資金をどのように調達してきたかを累積で見るために、バランスシートの右側(負債と純資産)をみてみます。

一番目立つのは「Additional paid-in capital」、日本でいう資本剰余金です。セールスフォースが主に株式発行により資金を調達してきたことがわかります。

逆に長期借入金などの負債はあまり多くありません。流動負債(Total current liabilities)は事業の中で一時的に発生するものも多いため、調達源泉というよりは単なる「ツケ」と言えます。


フリーキャッシュフローの状況

最後に、セールスフォースのキャッシュフロー状況をみます。

損益上は赤字になることも多いセールスフォースですが、営業キャッシュフローは安定してプラスになっています。

資本支出(Capital expenditures)もそれほど大きいというわけではないため、フリーキャッシュフローも順調に増えてきています。

2017年1月期のフリーキャッシュフローは17億ドルほど。


セールスフォースの現在の時価総額は710.79億ドルなので、FCF倍率は41.8倍ということになります。つまり、セールスフォースを今の時価総額で丸ごと買収すると、現在のFCF規模のままなら42年で元が取れることになります。

実際には今後も安定して成長していきそうなので、現在の時価総額が割高か割安かの判断は、セールスフォースの未来を投資する人がどのように予想するか次第、ということになります。

しかし、損益上では赤字スレスレなのに、キャッシュフローで見ると順調に拡大、というケースもあるものなのですね。今後も勉強を重ねていきたいと思います。

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