ずっと営業赤字のテスラは株式市場のクラッシュ(するかわからないけど)前に黒字化を達成できるのか?

今回は、EV(電気自動車)メーカーとして注目を集めるテスラについて調べます。

始まりは2003年、シリコンバレーの技術者だったマーチン・エバーハードとマーク・ターペニングによって「テスラ・モーターズ」として設立されました。

有名な実業家のイーロン・マスクはその1年後、保有していたペイパル株式をeBayに売却し、テスラへの750万ドル(約8億円)の投資のほとんどを個人で出し、取締役会長に就任。

2007年にエバーハードをCEOから解任すると、2008年にはイーロン・マスクがCEOに就任。マスクが事業に深く関わり始めたのはそれからのことだと言います。その後、2010年にナスダックへの上場を果たします。

製品としては今までに3つの車種を発表しており、2008年に「ロードスター」、2012年に「Model S」、2015年に「Model X」、2017年に「Model 3」を発売していきます。

最初に発表した「ロードスター」はわずか4秒弱で時速100キロ以上に加速する性能を持ち、価格も9万8000ドル(約1060万円)とかなり高価で、年間500台しか作れない車でした。

高級セダンの「Model S」は10万6900ドル(およそ1200万円)とさらに高価でしたが、「Model X」では7万4000ドル(約820万円)、「Model 3」では3万5000ドル(約390万円)と徐々に価格帯を下げてきていることがわかります。

収益の推移を見てみます。

売上のほとんどが車両販売(Automotive sales)で、2016年には56億ドル近くに増加しています。

車両リース(Automotive leasing)の収益も7.6億ドル、サービスその他(Services and other)も4.7億ドルあります。

また、2016年には太陽光発電事業を行うソーラーシティを株式交換により買収したことで、「Energy generation and storage」収益も1.8億ドルに増えています。

割合ベースで見てみます。

2016年の車両販売(Automotive sales)は収益の80%ほど。車両リース(Automotive leasing)がおよそ11%を占めています。

地域ごとの収益もみてみます。

アメリカの収益が42億ドル(2016年)と大きいですが、中国とノルウェーの売上もそれぞれ10億ドル、3.3億ドルあります。

テスラ車がノルウェーで売れている理由は制度的な理由で、テスラの年次報告書(Form 10-K)では次のように説明があります。

> In Norway, for example, the purchase of electric vehicles is not currently subject to import taxes, taxes on non-recurring vehicle fees, the 25% value added tax or the purchase taxes that apply to the purchase of gas-powered vehicles.

ノルウェーでは輸入税や通常25%もかかる消費税などの税金が、電気自動車を購入する際には免除されるそうです。

地域ごとの売上も割合ベースでみてみます。

2010年にはヨーロッパでの売上が60%を占めていますが、その後減少しています。

この収益比率は各地域での電気自動車に対する優遇措置の変化によって大きく変わっているようです。例えば、2016年にはデンマークにおける優遇制度が変わり、収益が減少したようです。

> For example, on January 1, 2016, a previously available incentive in Denmark that favored the purchase of electric vehicles expired and was replaced with a newly phased-in incentive that is less generous than the incentive that it replaced.


テスラのコスト構造はどこまで改善したか?

ここからは、よりテスラの経営数値を掘り下げて追っていきます。コスト構造から資産の内訳、そしてそれらの調達元がどのようになっているかを具体的な数値としてビジュアライズしていきます。


それではまず、テスラのコスト構造を対売上比率でみてみます。創業から一貫して営業損失を出し続けているテスラですが、具体的に何にどのくらいのお金を費やしているのでしょうか?



売上原価率(Cost of revenue)は2009年と2012年には90%を超えていますが、それ以外の年では77%ほどに収まっています。トヨタ自動車の売上原価率が78%前後になっていることを考えれば悪くない水準です。

その他、ここ4年間は研究開発費(Research and development)が売上に対して12%、販売管理費(Selling, general and administrative)が20%前後を占めています。


結果として、営業損失はマイナス10%前後くらいには改善してきています。売上原価率が自動車業界として悪くない水準になっていることからも、出荷を開始した量産モデルの「Model 3」が成功すれば、営業黒字化になる可能性はありそうです。

積極投資を続けるテスラの資産内訳の変化

続いて、テスラの財政状況の内訳をチェックしてみます。まずは資産の内訳とその変化をみてみます。

2015年から2016年までで、総資産は80億ドルから226億ドルへと3倍近くに増加しています。

増加分の多くはソーラー発電システム(Solar energy systems, leased and to be leased, net)と有形固定資産(Property, plant and equipment, net)で、それぞれゼロと34億ドルだったのが59億ドルと60億ドルに増大しています。


その他、現金同等物(Cash and cash equivalents、12億ドルから34億ドル)、在庫(Inventory、13億ドルから20億ドル)、リース車両(Operating lease vehicles, net、18億ドルから31億ドル)なども大きく増加しています。

比率ベースでもみてみます。

総資産の20%から50%と、かなりの部分を有形固定資産が占めてきたことがわかります。2016年末のソーラー発電システムは総資産の26%を占めています。


226億ドルの資産をどうやって調達してきたのか

上で見たように、テスラの総資産はすごい勢いで膨れ上がっていますが、テスラはずっと赤字です。資産の源泉はどこからきているのでしょうか?


それを知るためには、バランスシートの右側(負債と資本)を見ればいいことになっています。それではその変化をみてみましょう。

資本剰余金(Additional paid-in capital)が77億ドルと、かなりの額に上っています。長期借入金(Long-term debt)も58億ドルと大きいですね。

累積損失(Accumulated deficit、利益剰余金の逆)は30億ドルほどにまで膨れ上がっています。

テスラが株式発行と借入を駆使することで100億ドルを優に超える資金を調達してきて、これまでに30億ドルほどを溶かしたということがわかります。


こちらも、総資産に対する比率で見てみましょう。

やはり累積損失の大きさが目立ちますが、2016年末時点で長期借入金の額は総資産に対して26%、資本剰余金は34%にのぼっており、この二つで6割に達することになります。

自己資本比率の推移です。

上場した2010年末には自己資本比率50%を超えましたが、その後はやはり負債に頼る部分が大きいために20%ほどになっています。


ここ数年、株式市場はおおむね好調であり、そのことがテスラの資金調達にも優位に働いたことは間違いありません。

しかし、現在の株高・好景気もいつまで続くかわからない中で、テスラは今後どうなっていくのでしょうか。市場の崩壊が先か、テスラの黒字化が先かは同社の経営においてとても大きなポイントになるように思います。


ひとまずは、初の大量生産モデルとなった「Model 3」が今年や来年、どのような結果をもたらすかが注目されるところです。