中国でファッションECを運営する「MOGU」がニューヨーク証券取引所に新規上場を果たしました。
今回はそのMOGUについてまとめていきたいと思います。
MOGUは2011年2月にファッションECプラットフォーム「Mogujie」として創業されました。
創業者のChen Qi氏は浙江大学のコンピュータサイエンス学科を卒業した後、2004年に淘宝(Taobao.com)に入社。
Chen Qi氏は淘宝でUIデザインの設計を担当し、2011年に共同創業者のWei Yibo氏と共に「Mogujie」を創業しました。
2016年にはライバルライブコマース企業「Meilishuo」を買収し、社名を「MOGU」に変更。
そして2018年11月にニューヨーク証券取引所に上場申請をしています。
主要な投資家にはテンセントやセコイアキャピタルも名を連ねており、大株主はテンセント(株式保有率18%)となっています。
それではMOGUの売上推移を見ていきます。
2016/3期には11.1億元(182億円)あった売上は、2017/3期には9.73億元(159.6億円)にまで減少しています。
そして2017/3期の営業損失はマイナス8.47億元(-138.9億円)、2018上半期はマイナス3.08億元(-50.5億円)と毎年売上並みの損失を出しています。
ファッションECを運営するMOGUですが一体どのようなサービスを運営しているのでしょうか。
MOGUのサービスは大きく「ファッションコンテンツ事業」と「Eコマース事業」の2つの事業に分けられます。
ファッションコンテンツ事業
ファッションコンテンツ事業では、インフルエンサーを使ったライブストリーミング動画やファッションSNS、独自動画コンテンツを提供しています。
(MOGU)
ライブストリーミング動画では毎日1,000を超えるコンテンツが投稿されており、1日の放送時間は3,000時間にも及びます。
コンテンツはファッションからスキンケアまで多岐にわたっており、インフルエンサー数は4万8,000人にまで増加しています。
MOGUは、ファッションSNSの運営も行なっています。
(SNS)
MOGUが運営するSNSはいわばファッションに特化したインスタグラムのようなもので、ユーザーは自分のファッションやショッピングしている様子を写真で投稿するとこが可能になっています。
現在、MOGUの運営するSNSのユーザ数は10万人に達しているとのこと。
さらに独自動画コンテンツも充実しており、ユーザーは髪の結び方やスタイリングまで動画で学習することができます。
Eコマース事業
続いては二つ目のEコマース事業です。
(Eコマース)
Eコマース事業では商品を売りたいブランドとユーザをマッチングしており、女性向けはもちろん、男性向けのEコマースプラットフォームも運営しています。
アプリでは上部分にフォローしているインフルエンサーのアイコンが表示され、ユーザーは瞬時にインフルエンサーのページに移ることができるようになっています。
そしてインフルエンサーのページにいき、欲しい服があった場合は写真にタグ付けされている商品をタッチ。
ユーザーは欲しいものがあったらすぐに購入することができるようになっています。
現在MOGUが運営するEコマースプラットフォームには2.2万社ほどが出店しているとのこと。
MOGUの収益源は、クリック数に応じた「広告料」とプラットフォーム運営による「仲介料」の大きく二つに分かれます。
MOGUの売上構成比を見ると、2017/3期から仲介料売上の割合が増加し、2018年上半期には仲介料売上が広告売上を上回っています。
その一方、2016/3期まで売上の大半を占めていた広告売上の割合は減少。
広告売上が減少している要因としては、MOGUの戦略が影響しています。
2016年からMOGUはライブストリーミング動画により力を入れていく方針を採用した結果、広告主が減少したとのこと。
2016/3年には1.75万社ほどだった広告主の数が2017/3期には1.54万社にまで減少しています。
広告売上が減少した一方、仲介料の売上は増加しています。
仲介料による売上が増加した要因にはGMVの増加があります。
2016/3期には118億元(1935.2億円)だったMOGUのGMVは、2017/3期には147億元(2410億円)にまで増加。
GMVだけでなく、買い手も増加しており2016/3期には2,440万人だったMOGUのアクティブバイヤー数(買い手)は2017/3期には3,300万人にまで増加しています。
MAU(月間アクティブユーザ数)も増加傾向にあり、2016/3期には5,100万人だったMAUが2017/3期には6,520万人にまで増加しています。
ユーザーごとのサービス利用時間も2016/3期の47.2分から2017/3期は51.4分にまで増加しています。
それではMOGUのコスト構造をチェックしていきましょう。
2016/3期には62.4%だった販促費率は、2017/3期には76.9%にまで上昇。
2018年上半期は73.7%となっており、販促費率は依然として高い水準となっています。
一方、2016/3期には34%だった原価率が2017/3期には31.1%と改善傾向にあります。
続いてバランスシートをチェックしていきます。
資産の部を見てみると、総資産6.3億ドルのうち金融資産が1.7億ドルと全体の27%を占めています。
資産の源泉をみると損失がマイナス7.3億ドル積み上がっています。
営業キャッシュフローは毎年マイナスで、2017/3期の営業キャッシュフローはマイナス3.15億元(-51.7億円)となっています。
現在の時価総額は14.5億ドルです。
金融資産1.7億ドルを考慮した企業価値(EV)は12.8億ドル。
2017/3期の通期売上9.73億元(1.5億ドル)のおよそ8.5倍の評価を受けていることになります。
それでは最後にMOGUの今後の展望を見ていきます。
テンセントと協業
MOGUがテンセントと戦略的パートナーシップを結んでいることによって、WeChatユーザーはスムーズにMOGUにログインできるようになりました。
さらにテンセントが運営するアプリプラットフォーム「Weixin Mini Programs」を活用し、今後はさらにEコマース事業に力を入れていくとのこと。
最後に中国ファッション市場の動向についてもチェックしていきます。
中国のファッション市場におけるマーケティング費用は急速に増加しており、2013年には759億元(1.2兆円)ほどだったマーケティング費用は2017年までに1,906億元(3.1兆円)まで成長。
さらに2022年までに5,254億元(8.6兆円)にまで拡大する見込みとなっています。
中国のEコマース市場も拡大し続けています。
中国のEコマースの市場規模は2013年の4,360億元(7.1兆円)から2017年には2.5兆元(41兆円)にまで成長。
2022年までに7兆元(114兆円)にまで拡大すると予想されています。
・参照
WeChat 2018 Strategies: China's super app WeChat bets its future on mini programs and games
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