アリババの損益構造について探る

アリババグループ

アリババの2016年3月期の取扱高は3兆923億RMB、売上高は1011億RMB(157億ドル)、営業利益が291億RMB(45億ドル)という水準。営業利益率は28.77%と極めて高い水準にある。

まず、全体の売上と主要なコスト(売上原価、開発費、販促費、一般管理費)の推移をグラフにしてみる。

売上に対してコストがどれもかなり小さく抑えられていることが一目見てわかる。2016年3月期の各コストの売上に対する比率をみると、売上原価率が33.96%、開発費率が13.6%、販促費率が11.18%、一般管理費率が9.1%となっている。

と、ここまで書いてみて思ったが、コストと売上はセットにして考えるべきである。特に成長企業の場合、売上に対して費用を抑えたというよりも、投じた費用に対してこれだけの売上成長がもたらされた、と考える方が実にあっているような気がする。


アリババの売上を構成する要素

では、アリババの収益はどのようにしてもたらされるのだろう。当然だが、売上は数字であり、一つ一つの取引額に対してその回数を掛け合わせることで作られているはずだ。逆に、全体の売上高も、個々の取引にまで究極的には分解することもできる。とはいえ、外部の立場としては無理なので、セグメントや製品ごとになるべく要素分解して考えるということになる。


アリババの製品・サービスごとの売上はこのページに整理してある。

P4P and display marketingが531億8500万元と全体の52.58%を占める。続いてCommissionが277億9300万元(27.48%)、Othersが85億7500万元(8.48%)、Membership fees and value-added servicesが76億2700万元(7.54%)、Other online marketing servicesが39億6300万元(3.92%)とのこと。

① P4P marketing services

上の円グラフのように、アリババが得る収益の半分以上が「P4P(Pay for Performance) and display marketing」、すなわち成果報酬型広告からきている。

この事業では、アリババを利用する事業主がキーワードに対して入札し(オークションシステム)、クリック数に応じた費用(cost-per-click, CPC)が課金される。

パッと読んだ感じ、グーグルの検索広告とかなり共通している。アリババの場合はマーケットプレイスなので、なおさら検索広告の収益性が高いのかもしれない。

人気の商材であるほどアリババに支払う広告費用が高騰し、プラットフォーム側が儲かるという構図が容易に想像できる。

② Commissions

次は、277億元と3割弱を売り上げている「Commision」について。これは単に取引手数料のようだ。アリババを利用する事業主は、上記のマーケティングサービスに対してお金を支払うほかに、取引の額に応じた手数料を支払う

この手数料の割合は、基本的に0.4%から5.0%の間とのこと。手数料率は製品カテゴリに応じて変化し、利益率の低い製品(電化製品など)には低い手数料、利益率の高いカテゴリ(アパレルなど)では高めの手数料率を設定しているそうだ。

GMVが3兆RMBなので277億RMBはおよそ0.92%である。この辺が平均なのかも。

③ その他

その他、Wangpuへの月額課金やクラウドサービスの利用料などが2割ほどを占めている。


コストを構成する要素

次に、それぞれのコストに関する説明を読む。

売上原価

アリババの売上原価は主に次の3つである。

・Alipayや他の決済サービスに対して支払う決済手数料

・サードパーティのアフィリエイトに対して支払うトラフィック獲得コスト

・システムの運用コスト(サーバーやネットワーク代)

・その他人件費、ロジスティクス、などなど

製品開発コスト

この中には主にエンジニア従業員への給与や福利厚生などが含まれる。2014年9月にIPOするまでは、ヤフーに対して支払うロイヤリティがあったようだ。

セールス・マーケティングコスト

オンライン・オフラインでの広告プロモーション、セールスコミッションやそのほか従業員への給与など。

一般管理費

主に給与、ボーナス、福利厚生など。


コストに関してはまったく何の変哲もないことがわかった。それはそうか。


まとめ

以上をまとめると、アリババの主な収益は次の2つから生み出される。

・商品の検索結果に対して事業者側が入札する、成果報酬型広告

・商品購入の取引手数料(0.4%から5.0%の間)

アリババのコストの多くは決済事業者に対して支払う決済処理手数料と、人件費である。

アリババといえば中国のECプラットフォームの覇者、というのでなんとなく楽天のような感じを想像していたのだが、主な収益源が成果報酬型広告であるところを見ると、むしろGoogleやFacebook、Twitterなどのメディアプラットフォームに近いのかもしれない、という印象を持った。

取引手数料による売上も全体の3割と決して小さくはないが、全体の構造として、やはり中小事業者の利益のどの部分を取るか、という仕組みになっている以上、事業者側が広告に入札するというモデルこそが結局、プラットフォーム側にとって利益が大きくなる形なのかもしれない。