『SIXPAD』等を展開する「MTG」(証券コード: 7806)の2018年9月期決算が発表されました。
MTGはクリスティアーノ・ロナウド選手をイメージキャラクターに起用した『SIXPAD』や美容ローラー『ReFa』など数多くのブランド商品を世界中で展開しています。
今期の売上は605億円、経常利益は89億円と増収増益を達成しています。
対前年の売上成長率は33.4%でこれまでと比べれば緩やかとなったものの、引き続き高い成長率を維持しています。
経常利益率は14.7%で上昇傾向にあります。
業績規模が拡大し続けるMTGの成長は一体何が支えているのでしょうか?
自らを「ブランド開発カンパニー」と称するMTGは販売チャネルごとの収益を重視しています。
自社ECを中心とする「ダイレクトマーケティング」、量販店やテレビ通販「リテールマーケティング」、百貨店や免税店の「ブランドストア」の3つは多くの人が目にするチャネルです。
美容サロンやフィットネスクラブなど健康に関心のあるユーザーが集まる場所をターゲットとしているのが「プロフェッショナル」、海外販売は「グローバル」事業としています。
グローバル事業の売上が急速に伸び続けており、今期は200億円を突破しました。
2番目に大きいのがダイレクトで121億円、リテールが104億円で続きます。
ブランドストアも82億円と前年から42%増加しました。
なお、15億円ほどある「その他」売上にはウォーターサーバー事業などが含まれます。
売上構成比は直近2年で大きく変化しており、グローバル事業が36.3%に。
プロフェッショナルの比率が下がる一方でブランドストアが伸長しています。
MTGブランドが急速に浸透しているのが、美容大国・韓国です。
韓国での売上は前年から71%増加し、97億円に達しています。
中国の成長も著しく、前年から約2倍となる63億円を売り上げています。
韓国の売上構成比は16%、中国も10%を超え、この2か国がMTGにとって非常に重要なマーケットとなっています。
なぜかグローバル事業の売上構成比と海外構成比に差異が生じていますが、越境ECなどの収益は計上方法が異なることが考えられます。
MTGのブランド別売上を確認してみると、韓国での業績拡大を牽引している要因が見えてきました。
MTGの2大ブランドは美容ローラーを筆頭とする『ReFa』とクリスティアーノ・ロナウド選手のCMが印象的だった『SIXPAD』です。
最も売上が大きいのは『ReFa』で、今期は295億円と前年から19%の増加。
『SIXPAD』は44%増の137億円と100億円の大台を突破しました。
注目したいのが『ReFa』の地域別構成比です。
日本での売上は50%程度で、半分近くが海外での売上です。
韓国が4分の1を占めており、金額に直すと約74億円。
韓国での売上は『ReFa』が75%を占めているということになります。
美容への関心が高い韓国市場を攻略できていることがMTGの急速な業績拡大を支えているということがわかります。
美容ローラーの競合企業である「ヤーマン」の海外売上は約35億円で、その大部分は中国が占めています。
韓国市場は2017年に進出したばかり。
ヤーマンは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の投資先である「tokopedia」に出店するなどインドネシア市場を開拓しようとしており、MTGとの地域戦略が少し異なる点は非常に興味深いです。
一方、前年比44%増収となった『SIXPAD』は日本での売上がほとんど。
売上の96%が日本となっており、国内売上426億円のうち30%が『SIXPAD』によるものとなっています。
MTGは『SIXPAD』ブランドを活かして事業領域を拡大しています。
2018年7月、世界初のEMS(Electrical Muscle Stimulation)トレーニング・ジム『SIXPAD STATION』を東京・代官山にオープンしました。
全身9部位18箇所に電極が配置されたEMSフルボディスーツを着用し、デジタルトレーニングミラーを見ながらトレーニングを行ないます。
(料金プラン)
プログラムは1回わずか15分という短時間の設計となっており、初回トライアルは4,000円。
以降は1回限りのビジター会員が8,000円、月4回〜12回のマンスリープランも用意しています。
また、サプリメントやドリンクのセットプランも提供しています。
MTGが展開するその他のブランドも着々と成長しています。
マドンナを開発パートナーとしている化粧品ブランド「MDNA SKIN」は前年から2.5倍以上を売り上げており、顔用フィットネス器具「PAO」も88%増収を達成しています。
MTGのコスト構造を確認してみると、売上原価率は36%前後で横ばいとなっています。
広告費と販促費を合わせたマーケティングコストは14.6%と改善傾向にあります。
一方、研究開発費の比率は徐々に高まってきています。
チャネル別の利益率を見てみると、ダイレクトマーケティングの収益性が向上し続けています。
また、2年前まで営業赤字だったグローバル事業の利益率が19.6%まで上昇。
自社を含めたECサイトが好調であるのに加え、グローバル事業の収益性向上がMTG全体の利益を押し上げています。
MTGのバランスシートは総資産721.2億円のうち、現預金が300.6億円と41.7%を占めています。
資産の調達元を確認してみると、2018年6月のIPOによって株主資本が80%以上に増加しました。
有利子負債による調達は行なっていません。
営業利益は出ているものの、売掛金や棚卸資産の増加によって営業キャッシュフローはマイナスとなっています。
今期の財務キャッシュフローはIPOによって大幅なプラスとなっています。
2018年6月の上場から株価は軟調に推移しており、現在の時価総額は2,364.9億円です。
現預金300.6億円を考慮した企業価値(EV)は2,064.3億円。
営業利益88.9億円に対して23.2年分という評価を受けています。
急速な成長を遂げているMTGですが、彼らは19/9期を「ブランド開発投資期」と位置付けています。
売上目標は700億円(成長率15.8%)、経常利益は100億円(成長率12.6%)を掲げており、これまでの成長と比べれば抑えめの目標設定です。
マーケティング費用に100億円、研究開発費には32億円を投じる方針を打ち出しました。
新ブランドとして2018年11月に立ち上げたのが『五島の椿』です。
(プレスリリース)
MTG創業者・松下剛氏の出身地である長崎・五島列島で新たな産業の創出を目指し、特産品である椿を活かした研究開発を行なっていくそうです。
2020年に「国際ツバキ会議」が長崎県五島市で実施される予定で、そのタイミングに合わせて新ブランドをリリースする予定となっています。
また、MTGはマットレス市場にも参入します。
日本人は平日の睡眠時間が年々短くなっており、1976年の7時間56分から現在は7時間27分と30分短縮しました。
そこでMTGはAIモーションマットを開発しており、2019年に新ブランド『NEW PEACE』の発売を予定しています。
さらにMTGは2018年10月、コーポレートVC「MTG Ventures」を設立しました。
(プレスリリース)
「美容」「ウェルネス」「フード」「スポーツ」の4領域とテクノロジーを掛け合わせた事業に投資していく方針で、投資枠50億円を設けています。
MTG Venturesの代表には「ジャフコ」出身の藤田豪氏が就任しました。
さらなる飛躍に向けて成長投資を加速させていくMTGの動向を今後も引き続き追いかけていきたいと思います。
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