学生生活ではAmazon以上に必須!アメリカで急速に拡大する大学生向けオンライン教育サービス「Chegg」

今回はアメリカで大学生向けのオンライン教育サービスを提供する「Chegg」(ティッカーシンボル:CHGG)について取り上げます。

Chegg 公式HP

Josh Carlson、Mike Seager、Mark Fiddelkeの3人は、2001年からアイオワ州立大学の学生に向けた求人広告サイト「Cheggpost.com」を運営していました。

その後、アイオワ州立大学の生徒でCheggpost.comの熱狂的なユーザーだったRashid氏がCheggpost.comにCEOとして参画。

2006年、Rashid氏によって正式に現在のCheggが創業されました。

Cheggの名前の由来は「chicken and egg」とのこと。

当時CEOだったRashid氏は、NetflixのオンラインDVDレンタル事業を参考にし、大学生向けに教科書レンタル・販売事業「textbookflix.com」を開始。

名前までNetflixに似せています。


2010年には教科書のレンタル数が200万を突破。

そして2013年11月にニューヨーク証券取引所に株式を上場しました。

Cheggが大学生にとってどのような存在なのかは、あるアンケート結果からわかります。

投資家向け説明資料

アメリカの調査会社「Hall and Partners」が2017年10月に発表した調査結果によると、「学生生活に不可欠なサービスは?」という質問に対して、34%の学生が"Chegg"と回答。

これはAmazonやGoogleを上回る最も高い比率で、さらには80%以上の学生が「一度は聞いたことがある」と答えており、大学生の間で圧倒的な認知度を誇っています。

2011年は1.7億ドルほどだった売上が2014年には3.1億ドルほどまで増加。

しかし、2015年から売上が減少し始め、2017年には2.6億ドルにまで売上が減少しています。

売上がピークに達していた2014年の営業損失が6,500万ドルほどだったのに対し、2017年は1,900万ドル程度に損失が減少しています。

2015年から急速に黒字化へ近づいているCheggですが、一体どのような事業を展開しているのでしょうか。


学習からインターンシップまでサポート

Cheggのオンライン教育サービスは大きく『Chegg Service』と『Required Materials』の2つに分けられます。


『Chegg Service 』

『Chegg Service』では学生生活を支援する様々なサービスを定期課金モデルで提供しています。

特に学生から人気が高いのは「Chegg Study」「Chegg Tutors」「Chegg Internship」の3つです。

①Chegg study

学生は「Chegg Study」に登録することで、講義などで分からなかった問題を質問することができます。

月額の利用料は19ドル前後。

解説は通常30分以内に送信され、科目は数学・エンジニアリング・サイエンスさらにはビジネスまで対応しています。

②Chegg Tutors

「Chegg Tutors」は個別チューターとマンツーマンでやりとりができるサービスです。

Chegg Tutors

ビデオチャットでオンライン上のホワイトボードを使いながら質問できるため、質問内容をしっかりと理解したい場合は「Chegg Study」よりも「Chegg Tutors」を活用する学生が多くなっています。

最もお手軽な15ドルのプランでは、1週間に30分間だけチューターとのビデオチャットが可能です。

③Chegg Internships

Cheggは学業面のサポートだけでなく、「Chegg Internships」を通じて就職活動の支援も行なっています。

Chegg Internships

採用からインターンシップまで様々な募集があり、合計14万社の中から自分に合った仕事・インターンシップを探すことができます。

GoogleやAdobeといった学生から人気の高い企業からも多くの募集が投稿されていました(2018年10月22日時点)。


『 Required Materials』

教科書の販売・レンタルを行なうのが『Required Materials』事業です。

Cheggは学生向けに教科書マーケットプレイス「Chegg Books」を提供。

Chegg自身が販売するのはデジタルの教科書のみとなっており、紙の教科書については様々な出版社が『Chegg Books』に出品しています。

「Chegg Books」では一般的なマーケットプレイスと同様に、注文に応じて出版社から手数料を受け取ることでマネタイズしています。

Chegg Books

Cheggが提供するデジタル教科書を活用すると、ネット環境があればどこでも教科書を閲覧可能に。

さらには分からない箇所をそのまま「Chegg Study」で質問することもできます。

受ける授業を締め切り直前に変更したい学生も多いため、教科書は21日間まで返品無料となっています。


『Chegg Services』売上は2年で倍増

Chegg全体の業績は横ばいで推移していましたが、事業ごとの売上を見てみると『Chegg Services』は急速な成長を遂げています。

2013年には0.4億ドルほどだった『Chegg Services』の売上は、2017年には1.9億ドルにまで拡大。

 2018年上半期はすでに1.2億ドルまで達しており、売上成長はさらに加速しています。

『Chegg Services』の定期課金者数は年平均成長率(CAGR)39.3%という急速なスピードで増加し、2017年は220万人を突破しました。

定期課金者数の急速な増加に伴って顧客単価は84.0ドルに低下しています。

月額利用料15ドル前後のサービスがほとんどですので、継続期間が1年未満の学生が多くを占めているということになります。


自社での仕入販売から撤退してコスト構造が改善

『Chegg Services』が急成長している一方、教科書の販売・レンタル事業である『Required Materials』の売上は減少しています。

しかし、『Required Materials』売上には大きな変化が生じています。

これまで『Required Materials』売上のほとんどどを占めていた「自社仕入」による紙の教科書販売・レンタルの売上が、2017年にはゼロになっています。


売上構成が変化した背景にはCheggのデジタルシフト戦略があります。

2015年にCheggは、書籍流通企業である「Ingram」社と業務提携を締結。

IngramはIT関連書籍を出版する「オライリー」の在庫管理なども受託している書籍流通の大手企業です。

Ingram

この提携によって紙の教科書については在庫管理や物流を全てIngram社に委託。 

コストを圧迫していた仕入販売モデルから撤退したことで、Cheggのコストは劇的に改善しました。

2014年まで70%前後で推移していた原価率が、Ingramとの提携を開始した2015年以降に年々低下。

2017年は31%にまで改善しています。

これまで収益の柱だった仕入販売モデルからの撤退という大胆な意思決定は、今のところ功を奏しているといえそうです。


財政状態

Cheggの財政状態についてチェックしていきます。

総資産7.2億ドルのうち、現金同等物が4.6億ドルと資産全体の60%ほど。

負債・純資産を見てみると、払込資本が7.8億ドルで最も大きな割合となっています。

累積損失が3.9億ドルほど積み上がっています。

そのほか、転換社債によって2.7億ドルを調達しています。

年間の営業キャッシュフローは継続してプラスで推移しています。

2018年上半期は2,300万ドルほどの営業キャッシュフローとなっています。

2017年のFCFは2,501万ドルを稼ぎ出しており、2018年上半期時点では1,343万ドルとなっています。

アメリカ大学産業の市場規模は960億ドル

デジタルシフト戦略が順調に進んでいることで、市場からの期待値は上昇傾向にあります。

株価は2017年ごろから上昇し、時価総額は28.8億ドルとなっています。

キャッシュ4.6億ドルと有利子負債2.7億ドルを考慮すると、実質的な企業価値(EV)は26.9億ドル。

2017年の年間フリーキャッシュフローが2,501万ドルに対しておよそ107.6年分の評価を受けていることになります。


気になるのは今後の市場ポテンシャルですが、Cheggはアメリカにおけるハードな学生生活に注目しています。


アメリカの大学の授業料は1995年からおよそ296%高騰しており、卒業時の平均借金額は3.5万ドルほどとのこと。

アメリカの学生の40%は大学の授業と並行して、1週間に平均30時間ほどアルバイトをしており、なかなか思うように学習に時間を割くことができません。

そのため効率的に学ぶことができるCheggの学習サポートサービスの需要が、今後ますます増加すると考えられます。

見据える大学産業の市場規模も巨大です。

アメリカの大学産業の市場規模は960億ドルにものぼるとのこと。

なかでもBack-to-school(学生向けの文房具や日用品のセール)が530億ドルと半数以上を占めています。

Cheggは大学入学前から就職活動まで包括的に学生をサポートする方針です。


最後に2018年度の業績目標と進捗状況を確認しておきましょう。

2018年の業績目標3.1億ドルに対し、上半期時点の売上は1.5億ドル。

進捗率は48%で比較的順調といえる状況です。


今回はアメリカのオンライン教育サービスCheggについて取り上げてきました。

大学産業の960億ドルという巨大な市場においてCheggがどのように成長していくか目が離せません。


・参照

プレゼンテーション資料

Q2-18 Investor Presentation

Andy Brown, CFO

February 2016 Presentation

Chegg-Analyst-Day

SFC-Filing

FORM 10-Q

FORM 10-K