中国市場の75%以上を支配!巨大音楽サービス企業「Tencent Music」がIPO申請

IPO

中国最大の音楽サービス企業「Tencent Music Entertainment」がアメリカ証券取引委員会(SEC)に上場申請書類を提出しました(市場は未指定)。

公式HP

Tencent Musicは2003年、テンセントが提供するSNS『QQ』のオンライン音楽再生機能としてスタート。

2005年、『QQ Music』として独立したサービスとなりました。

(『QQ Music』)

2014年にはオンラインカラオケサービス『WeSing』を開始します。

そして2016年、テンセントは同じく音楽配信サービスを提供する「China Music」を買収。

音楽サービスを提供する企業グループとして新たに「Tencent Music」を設立しました。


直近2年間の業績推移を見てみましょう。

17/12期は109.8億元(1,821億円)と前年から大幅な増収。

2018年上半期もすでに86.2億元(1,430億円)を売り上げています。

16/12期は営業損失を出していましたが、17/12期は黒字化を達成。

営業利益は12億元(199億円)となりました。


投げ銭の売上が3倍以上に増加

Tencent Musicは中国国内で音楽サービス4ブランドを展開しています。

『QQ Music』と『WeSing』はテンセント自身が立ち上げたオリジナルのサービスです。

『Kugou(酷狗=Cool Dog)』と『Kuwo(酷我=I'm Cool)』はChina Musicの買収によって2016年7月からTencent Musicグループに仲間入りしました。

それぞれのサービス内容を見てみましょう。


QQ Music

『QQ Music』は中国を代表する音楽ストリーミングサービスです。

(『QQ Music』)

音楽をダウンロードせずにPCやモバイルアプリで聞くことができ、「Spotify」と同様に広告付きであれば無料で利用可能です。

もともとテンセントが提供するSNS『QQ』に含まれる一つの機能として始まったこともあり、現在聞いている楽曲を友達にシェアしたりコメントする機能が豊富です。


『QQ Music』では主に3つの方法で収益化を図っています。

「绿钻(=Green Diamond)」は楽曲を高音質で聞くことができるサービスで、年間会員も提供しています。

また『QQ Music』内の楽曲は個別に購入すればiTunesなどと同じようにダウンロードすることができます。

そして、定額制のストリーミングパッケージ「付费音乐包(=Paid Music Package)」です。

「付费音乐包」では楽曲のダウンロードや『QQ Music』が主催するコンサートの観覧が可能です。

また、海外アーティストなど100万枚以上のアルバムは「付费音乐包」の有料会員ユーザーだけが視聴できる限定コンテンツとなっています。

料金プランは月に300曲ダウンロードできる月額8元(133円)プラン、500曲まで可能な12元(199円)プランの2種類が提供されています。


そのほか、『QQ Music』ではミュージシャン向けに楽曲配信プラットフォームを展開しています。

ミュージシャンは自身の楽曲をQQ Music上で配信することができ、単品販売によるレベニューシェアや「付费音乐包」での視聴数に応じた成果報酬など、様々な形で収益化を支援しています。


WeSing

Tencent Musicは2014年からオンラインカラオケサービス『WeSing』を開始しました。

WeSing

『WeSing』では収録した音声の投稿や、生歌をライブ配信することも可能。

友達とグループを作って一緒に歌うことができる「Virtual karaoke rooms」という機能もあります。

また、『WeSing』の視聴ユーザーは気に入った作品に対してバーチャルギフトで投げ銭をすることができます。

オンラインコンテストも多数開催しており、賞金や豪華賞品を争ってたくさんの作品が投稿されています。


Kugou

『Kugou Music』は国内で『QQ Music』に次ぐ音楽配信サービスです。

(『Kugou Muisic』)

2004年にスタートし、『QQ Music』と同様に単品での楽曲販売や定額ストリーミングサービスを提供しています。

Kugouブランドの人気を支えているのが、2012年から開始したライブストリーミングサービス『Kugou Live』。

(『Kugou Live』)

Kugouのオフィシャル番組や音楽イベント中継、タレントのトークショーなどが人気コンテンツとなっています。

ユーザーは放送主に対して楽曲のリクエストやオンラインギフトによる投げ銭ができます。

人気アーティストに対してはアルバム制作の提案なども行なっているようです。

料金プランは『QQ Music』と同じく300曲で8元(133円)と500曲で12元(199円)の2種類。

加えて、高速ダウンロードや広告ブロックが可能なVIP会員を15元(249円)で提供しています。


Kuwo

『Kuwo Music』は主に中国北部で人気となっているサービスです。

(『Kuwo Music』)

『QQ Music』や『Kugou Music』がオールジャンルであるのに対し、『Kuwo Music』はDJリミックスやアニメソングなどのジャンルが豊富です。

2013年からはライブストリーミングサービス『Kuwo Live』の提供も開始しました。

有料会員は月に300曲ダウンロードで8元(133円)、ミュージックビデオもダウンロード可能なVIP会員は15元(249円)となっています。


Tencent Musicは4ブランドの収益を、楽曲販売や広告収入などによる「音楽サービス」とバーチャルギフトによる「投げ銭」売上の2つに分類しています。

それぞれの売上高を確認してみましょう。

売上の70%以上を占めるのは投げ銭による売上で、17/12期は前年から3.5倍増の78.3億元(1,299億円)となっています。

2016年7月のChina Music買収によって『Kugou Live』と『Kuwo Live』の売上が加わったことが主な増収要因となっています。

音楽サービスの売上は31.5億元(522億円)で売上全体の30%程度ですが、17/12期は前年から47%増と着実に成長しています。


グループ全体の国内シェアは75%以上

売上規模が大幅に拡大したTencent Musicですが、ユーザー数はどの程度いるのでしょうか。

平均月間アクティブユーザー数(MAU)の四半期推移を見ていきましょう。

Tencent Musicが提供する3つの音楽サービス『QQ Music』『Kugou Music』『Kuwo Music』のモバイルMAUは合計で6.4億人。

WeChatユーザー11億人の約半数が利用しているということになります。

Spotifyは全世界のMAUが1.8億人であるのに対し、Tencent Musicは中国市場だけでSpotifyの3.5倍となるユーザーを獲得しています。

『WeSing』や『Kugou Live』『Kuwo Live』を合計した「配信プラットフォーム」のMAUは2.3億人となっており、2年で8,000万人近く増加しました。

参考

音楽ストリーミングサービスの国内シェアを見てみると、『QQ Music』が41%でトップシェアを誇っており、次いで『Kugou Music』が25%、『Kuwo Music』は10%となっています。

グループ全体のシェアは75%を超えており、Tencent Musicが中国市場を支配しているといっても過言ではありません。

ユーザーの平均利用時間は1日70分以上とも言われています。


課金ユーザー数の推移も見てみましょう。

音楽サービスは2,330万人まで増加しましたが、課金ユーザー比率は3.6%です。

配信プラットフォームについても課金ユーザー比率は4.2%程度。

Spotifyの有料会員比率が46%であることを考えると、Tencent Musicグループの課金ユーザー比率はかなり低いといえます。


課金ユーザーあたりの平均売上高(ARPPU)もチェックしていきます。

音楽サービスにおける課金ユーザーの平均顧客単価は8.7元(144円)。

配信プラットフォームのARPPUは111.8元(1854円)と上昇傾向です。

月に618円、年間で7,416円を費やしているということになります。


グループ統合により原価率が改善

Tencent Musicのコスト構造を確認していきます。

売上原価率は16/12期の71.8%から10pt以上低下し、59.7%となっています。

China Music買収によってライセンス費用や音楽レーベルに支払うロイヤリティがグループとして統合されたことが大きな要因です。

Tencent Musicは音楽レーベルに対して定額の「最低保証フィー」と、再生回数やダウンロード数に応じた「インセンティブ・ロイヤリティ」を支払う契約を結んでいます。

グループ統合によって定額フィーを一元化できたことが売上原価率の改善につながっていると思われます。

Spotifyの売上原価率74%と比較すると、Tencent Musicの売上原価率が低いことがわかります。

販促費率は8.6%で横ばい、一般管理費は10.5%まで改善しています。


バランスシートもチェックしてみましょう。

総資産359.5億元(5,962億円)に対して現金・金融資産の合計は95.3億元(1,580億円)。

China Musicの買収には約186億元(2.7億ドル)を費やしたと言われており、のれんが資産全体の45.3%を占めています。

資産の調達原資である負債・純資産を見てみると、払込資本が263.5億元(4,370億円)で最も大きくなっています。

有利子負債による資金調達は行なっていません。


キャッシュフローも見ていきます。

営業キャッシュフローは順調に増加しており、大幅なプラスとなっています。

17/12期はフリーキャッシュフローは24.2億元(401億円)を稼ぎ出しています。


Tencent Musicの株主構成を確認してみると、Spotifyが大株主に名を連ねています。

目論見書

Tencent Musicは2017年12月にSpotifyとの株式交換を実施しており、Spotifyの持株比率は9.1%となっています。


中国の音楽市場は3.5兆円規模に拡大

Tencent Musicが支配する中国の音楽ストリーミング市場ですが、今後の成長性はどの程度あるのでしょうか。

目論見書からストリーミングや投げ銭なども含めた音楽サービス全体(online music Pan-entertainment)の市場規模を見てみましょう。

2017年の市場規模は330億元(5,473億円)です。

年平均成長率(CAGR)36.7%で推移し、6年後の2023年には6.5倍となる2,152億元(3兆5688億円)まで市場規模が拡大する見込みです。


市場拡大のカギを握っているのはオンラインサービスに対する課金率の向上です。

現状3.9%ほどしかない音楽サービス課金比率は、今後6年間で28.7%まで上昇すると予測されています。

すでに22.5%まで高まっている動画についてはこれから40%を超えてくる見通し。

これまでは海賊版の利用が主流だった中国ですが、価値のあるコンテンツに対して対価を支払う文化は少しずつ醸成されてきているようです。


中国の音楽文化を発展させる大事な要素として、音楽のコピーライティングによるライセンス市場への期待も高まっています。

2017年現在は22億元(365億円)ほどですが、2023年には137億元(2,272億円)まで増加する見込みです。

Tencent Musicは2018年6月末時点で「ソニーミュージック」「ユニバーサルミュージック」「ワーナーミュージック」など200以上の音楽レーベルと契約しており、取り扱い可能な楽曲数は2億曲を超えているそうです。

PR Newswire

最近では大手メディアグループ「Zhejiang Radio & TV Group (ZRTG)」と3年契約を結んだと発表。

お互いのライセンス共有に加え、独自コンテンツの制作を強化していくとのことです。


Tencent Musicがアメリカでの上場の先にどのような事業展開を見据えているのか、今後の動向が非常に楽しみです。