新規制で中国市場が18倍に!Baidu元CTOが設立したスクーター版テスラ「Niu」が新規上場

電動スクーターを開発する中国のハイテク企業「Niu」のNASDAQ新規上場が発表されました。

公式HP

創業者のYinan Li氏は1970年生まれ。

15歳で華中科技大学に入学した天才児で、Huaweiのバイス・プレジデントやBaiduのCTOなどを経て2014年にNiuを創業しました。

Niuは中国語で"水牛"を意味しており、Li氏によるとその由来は「祖先の移動手段が水牛だったから」とのこと。

残念なことにLi氏は2015年にインサイダー取引の疑いで逮捕されてしまい、現在はPEファンド・KKR出身のYan Li氏がCEOを務めています。

参考

Niuは2015年6月に最初の製品ラインナップであるNシリーズを発売。

CMはかなり格好いいので必見です。

また、中国で初めてスクーター向けオンライン保証サービスの提供を開始しました。

2016年8月にはヨーロッパ進出を果たします。

2016年10月にNiuドライバーの合計走行距離が1億キロを超え、2018年4月には10億キロを突破しました。

中国国内での累計販売台数は43万台を超えています。


業績推移を見てみましょう。

上半期の売上は5.6億元(93億円)。

16/12期から17/12期にかけて売上が2倍以上増加しています。

営業利益は出ておらず、2018年上半期は損失が拡大しました。


モバイルアプリで17種類のステータスを管理

Niuが開発するのは、ガソリンではなくバッテリーを動力源とする「電動スクーター」です。

需要予測や販売計画、顧客やディーラーからの注文に応じて部品を調達し、自社で完成車を組み立てる受注生産モデルとなっています。

現在の製品ラインナップは3シリーズ全6モデル。

Nシリーズはデュアルバッテリーで機動性が高く、MシリーズとUシリーズはよりコンパクトな機体設計となっています。


Niuを代表する車種はNシリーズの『NGT』モデルで、価格は1万9,999元(33万円)。

変速ギアは「スポーツ」「ダイナミック」「省エネ」の3段階で、最高速度は時速70キロです。

スクーターの設計においてNiuがこだわったのはバッテリーの大きさでした。

従来の電動スクーター用バッテリーはブロック状の鉛蓄電池が中心で、50キロを超えるものもありました。

Niuは1個あたり11キロのパナソニック製「18650」リチウムイオンバッテリーを採用。

100キロ走行するために必要な充電時間は3.5時間で、耐用年数は5年間となっています。

また、ブレーキのエネルギーをバッテリーの電力に変換できる「EBS Energy Recovery System」という先進的なシステムも搭載しています。


ドライバーにとって最も大きな悩みとなっていたのは、スクーターやバッテリーの盗難被害の多さ。

盗難を防ぐためのシステムとして、Niuはモバイルアプリを提供しています。

車体に32個のセンサーを実装しており、アプリでは全17種類の車体ステータスを閲覧可能

3軸モーションセンサー(3-AXIS Movement Detection Alarm)とGPSを組み合わせ、スクーターの正確な場所をリアルタイムに把握することができます。

さらにはバッテリーの劣化状態をモニタリングしたり、スクーターの解析情報をNiuへ送信すればアフターサービスを受けることも可能です。

Niuはスクーターから送信される様々なデータを自社クラウド『NIU Cloud ECU』に集約しており、これまでに40テラバイト以上のデータが蓄積されているとのこと。

毎分200回の解析処理を実行し、「OTA(Over the Air)」によってスクーターのソフトウェアをワイヤレスで常時最新に保つことができます。

Niuはスクーター版テスラともいえるかもしれません。


セグメント別売上高を確認してみましょう。

スクーター本体の販売が売上全体の90%以上を占めています。

上半期のパーツ販売は0.4億元(6億円)、サービス収益は749.6万元(1.2億円)でした。

各セグメントの売上成長率を比較してみましょう。

サービス収益が急速に増加しており、成長率は400%を超えています。

モバイルアプリの普及やオンライン保証サービス『Niu Cover』の契約増加が大きな増収要因となりました。


ヨーロッパ市場の開拓に成功

最先端の電動スクーターを開発したNiuですが、どのような販売戦略でユーザーを獲得していったのでしょうか。

最初の製品が完成した後、彼らは正式な販売開始に先駆けてクラウドファンディングを実施しました。

Indiegogo

フルサイズとコンパクトサイズを販売し、2種類合計で1.5億元(24.8億円)以上の支援を獲得します。

クラウドファンディングの成功を受け、2015年6月からJD.comへの出品を開始。

わずか15日間で7,555万元(12.5億円)を売り上げました。


オフラインのリアル店舗における打ち手として、Niuは「シティパートナー」制度を導入しています。

ビジネスモデルは一般的なフランチャイズと同様ですが、オーナーはエリア単位で複数の店舗を管理します。

Niuは商品や物流機能だけでなく店舗管理システムを提供し、都市ごとの販売データを分析しています。

現在、Niuの販売店は国内150都市、571店舗まで増加しています。


中国国内でのシェア拡大後、海外進出の際にNiuが狙いを定めたのはヨーロッパ市場です。

2015年11月、ミラノで行なわれた世界最大級の国際モーターサイクルショー「EICMA」へ出展。

ヨーロッパにおける認知度を高め、2016年8月から本格的に販売を開始しました。

2018年に入ってからは、オランダ・アムステルダム、フランス・パリ、スペイン・バルセロナの3都市でフラッグシップストアをオープンしています。

フラッグシップストアの出店条件は最大都市かつ100平方メートル以上の面積を有すること。

スクーターの出入りが簡単な店舗設計にこだわっています。

ヨーロッパ独自の施策として、2018年6月からオーストリア・ウィーンとスペイン・マドリードでシェアリング事業を開始しました。

主にフランスなどでシェアリングサービスを提供する「Indigo Weel」と提携し、Niuのスクーターを提供しています。


地域別売上高の推移を確認してみましょう。

ヨーロッパでの売上が急増しており、2018年上半期は0.7億元(12億円)とすでに前年を上回っています。

売上全体に占めるヨーロッパの割合は12.4%まで上昇。

ヨーロッパにおける躍進もNiuの成長を加速させる一因となっています。


プロダクトミックスも原価率の改善に寄与

Niuのコスト構造を確認していきます。

16/12期に100%を上回っていた売上原価率が、2018年上半期は85.7%と大幅に低下しています。

販売台数増加による生産コストの低下だけでなく、Uシリーズなどのコンパクトモデルを製品ラインナップに加えたことも売上原価率の低下につながったようです。

販促費率も12.6%と低下傾向。

2018年上半期に一般管理費が増加したのは倉庫で火災が発生したためです。


バランスシートもチェックしていきます。

総資産8.2億元(136億円)に対し、現金・金融資産の合計は5.8億元(96億円)。

資産の調達元を確認してみると、払込資本が6.7億元(111億円)、転換優先株が6.0億元(99億円)となっています。

銀行借入による資金調達も行なっており、累積損失は10.9億元(181億円)まで積み上がっています。


キャッシュフローも見ていきましょう。

17/12期は営業キャッシュフローがプラスに転じています。

2018年上半期もすでに0.6億元(10億円)を稼ぎ出しています。

フリーキャッシュフローもプラスとなっており、17/12期は0.6億元(10億円)を創出しました。


電動バイクの重量規制開始で国内市場は18.5倍に

最後に、目論見書で言及されている今後の市場展望をチェックしていきます。

「China Insights Consultancy」の調査によると、中国国内におけるリチウムイオンバッテリー搭載の電動バイク市場規模は2017年時点で4億ドル。

販売台数ベースでは70万台となっており、Niuの国内シェアはおよそ27%です。

2018年以降に予想される年平均成長率(CAGR)は81.9%で、なんと5年後の2022年には18.5倍となる74億ドルまで市場規模が拡大する見込みとなっています。

市場規模の拡大が加速している背景には、2019年4月から中国国内で開始される電動バイクの重量規制(上限55キロ)があります。

現在ドライバーが利用する電動バイクの98%以上に鉛蓄電池(Lead-acid batteries)が採用されており、多くのバイクはこの規制をクリアできません。

そこで、鉛蓄電池と比べて重さが5分の1、大きさは4分の1と言われるリチウムイオンバッテリーへの移行が急速に進むと予測されています。


電動バイク本体が増加すれば、当然ながらパーツ市場も拡大していきます。

電動バイク向けのアクセサリや交換用パーツの市場規模は2017年時点で1.3億ドル。

今後は約19%のペースで拡大していき、2022年は3.2億ドルとなる見込みです。


Niuの成長を加速させているヨーロッパ市場はどうでしょうか。

ヨーロッパにおける電動バイク市場は2017年時点で中国の10倍以上となる37億ユーロ(43億ドル)。

5年後には75億ユーロ(86億ドル)まで拡大し、Niuにとっては今後も主要なターゲット市場となりそうです。


アジア圏でも市場拡大が期待されています。

東南アジアは2022年に25億ドルまで拡大する見込み。

加えて、インド市場に対する期待も高まっています。

2017年時点でインドのバイク市場全体は116億ドル規模とされていますが、その99.8%はガソリン車です。

インド政府は環境対策を強化しており、2022年には約1.9億ドルまで電動バイクの市場規模が拡大するようです。


テクノロジーに裏打ちされた高い製品力に加え、中国政府の規制開始も追い風となりそうなNiu。

今後の成長確度はかなり高いのではないでしょうか。

 

・参考

This company is changing how China moves

Legendary IT Entrepreneur and Former Vice President of Huawei Arrested for Insider Trading