在宅系介護の利益率は15%超!全国377拠点で介護サービスを展開する「ケア21」

今回取り上げるのは、大阪で介護サービスを展開する「ケア21」という会社です。

ケア21ホームページ

創業は1993年、大阪府吹田市で(株)ヨダゼミイーストとして学習塾の運営からスタート。

1999年には介護事業への事業転換とともに「ケアにじゅういち」に社名を変更、2000年4月より訪問介護ステーションを3拠点にて訪問介護事業の運営を開始しました。

2003年には現在の「ケア21」が社名となり、同年に「介護タクシー」の事業許可を取得。

同じく2003年、大阪「ヘラクレス」市場に株式を上場しています。


2005年3月には有料老人ホーム「たのしい家」を大阪府内に新設し、翌年には東京にも進出しました。

過去7年間の業績推移を見てみましょう。


売上高は252億円。6年前(2011年10月期)の101億円と比べると2.5倍の規模に成長しています。

利益率は高くないものの、直近で6.6億円の経常利益を稼いでいます。


今回のエントリでは、大阪で介護サービスを展開する「ケア21」の事業内容を軸に、介護サービスの事業環境について調べてみたいと思います。


「在宅系」「施設系」二つの形式で介護サービスを提供

ケア21の事業は、「在宅系介護」「施設系介護」「その他」の大きく3セグメントから成り立っています。

まずは一つずつ詳しく見てみましょう。


① 在宅系介護事業

在宅系介護事業は、「訪問介護(ホームヘルプ)サービス」「居宅介護支援サービス」の二つに分かれます。

訪問介護サービスでは、利用者の自宅において介護福祉士や訪問介護員(ホームペルパー)が、入浴や排泄、食事などのお世話を行います。

居宅介護支援とは、介護支援専門員(ケアマネジャー)が、利用者の心身、家族の希望などを考慮して居宅サービス計画(ケアプラン)を作成すること。

② 施設系介護事業

もう一つの事業は、介護付き有料老人ホームにて日常生活などのお世話を行う「施設介護サービス」です。

たのしい家

これが2005年より開始している有料老人ホーム「たのしい家」です。

ホーム内は段差のないバリアフリー設計で、居室や共用エリアなどいたるところに「緊急用コールボタン」があります。

職員が24時間体制で常駐し、入居者を24時間サポートするというサービス。入居者3人に対して1人以上という形でサービスを提供するそうです。

③ その他

「在宅系」「施設系」という二つの介護サービスがケア21のメイン事業ですが、その他に福祉用品のレンタルなどの周辺サービスも展開しています。


施設系介護が急成長しているが人件費が重い

続いて、ケア21のセグメント毎の業績についてチェックしてみましょう。


全体売上252億円のうち、131億円が「施設系介護」事業による売上。

88.5億円が「在宅系介護」による売上で、その他の周辺事業による売上も32億円あります。

2012年10月期まで在宅系介護の売上が最も多かったのが、施設系介護の売上成長により逆転したということが分かります。

利益率をみてみると、在宅系が15.4%と高いのに対して施設系はわずか2.5%。

そこからさらに本社の費用も引かれますから、施設系介護事業はほとんど儲かっていないことがわかります。

コストの内訳をみると、売上原価率が78.4%と非常に高くなっています。

介護業界では他の多くの業界と同様、人材不足が深刻化しています。

そのためにケア21も給与水準を引き上げてそれに対応。

従業員の平均勤続年数もそれに応じて上がってきているようです。

2012年までは平均勤続年数が2.5年まで下がっていましたが、その後5年で3.7年まで上昇。

従業員が絶えず辞めていってしまうような会社は、教育などにより多い負担がかかる上に、サービスの質を維持するのが難しくなります。


そのことを一因として、売上原価率は拡大しています、

2010年10月期には74%ほどだったのが、直近では78.4%と、80%近い水準にまで拡大。

先ほど見たように、2017年10月期のケア21の平均年間給与が391万円、フルタイムの従業員数(本社)が3,552人ですから、139億円の人件費がかかります。

そのうち「施設系」介護事業(すべてフルタイム)は 95.7億円。


ケア21のグループ全体における売上原価は198億円。このほとんどが介護士などの人件費になっているようです。


施設展開によりリース資産・負債が急増

続いて、ケア21の展開拠点について軽く確認しておきます。

全国のサービス拠点をみてみると、関西と関東における「居宅サービス」拠点が最も多いことがわかります。

先ほど確認したように、居宅サービスの利益率は施設系介護(有料老人ホーム、グループホーム)に比べてはるかに高くなっています。

「居宅サービス」で利益を稼ぎながら有料老人ホームを展開するというのが今の状況です。


ここで財政状態について確認してみると、総資産267億円に対して現預金は11.7億円、有価証券は20.5億円ほどあります。

有形固定資産は166億円と大きく、中でもリース資産が158億円と大部分を占めています。

リース資産の内容は、主に有料老人ホーム・グループホームにおける建物。


バランスシートの反対側(負債・自己資本)をみると、借入金の合計は30億円ほど。

一番大きいのは「リース債務」で158億円あり、利益剰余金は15億円程度にとどまっています。

稼ぎ出す営業キャッシュフローは直近では8.1億円。

見かけ上は利益率が小さいケア21ですが、かなり安定してキャッシュフローを稼いでいます。

ケア21の株価は2017年に急上昇しましたが、その後は低調です。

現在の時価総額は82億円。 

借入金の合計40億円、現金と有価証券の合計が40億円ほどなので、ちょうどバランスしています。

年間に稼ぎ出す営業キャッシュフローは直近で8億円なので、設備投資などを度外視すれば、11年で元が取れる「価格」ということになります。


介護ニーズは膨らむが、人件費・社会保険により利益減

「訪問型」「施設型」の量事業で着実に拡大してきたケア21ですが、市場からの期待値は高いとは言えません。

今後の展望はどうなっているのでしょうか?


まずは大前提となるマクロ環境からおさらいしましょう。

公的介護保険制度の現状と今後の役割

厚生労働省が発表した資料によると、65歳以上の「被保険者」の数は3,492万人(2000年の1.6倍)。

一方で要介護認定者は644万人(同じく3.0倍)、介護サービス利用者は474万人(3.2倍)に増加。

利用者474万人のうち一番大きいのは「在宅サービス」で、366万人の利用者がいます。

一方の「施設サービス」は93万人と、あまり伸びていません。

三つ目の「地域密着型」とは、市町村が指定・監督を行う介護サービス(参考)。


介護サービスのニーズが高まっているのは間違いありませんが、それは消費者が全て負担しているわけではありません。

(データ:厚労省『介護分野の最近の動向』)

2017年の介護保険による給付額は10.8兆円に。

こうした状況を受けて、国は保険料を全国平均で2,911円(2000〜2002年度)から5,514円(2015〜2017年度)へと倍増させています。

今後はこの金額がさらに上昇していく見込みですが、なかなか大変ですね。

介護保険料は原則として、年金からの天引きによって財源を集めているようです。

少子高齢化が進む中で、この仕組みがどこまで続くのかというのが一つの懸念点ではあります。

ケア21 中期経営計画

上記以外にも、就労人口の減少による介護人材の不足など、根本的な課題が数多く存在します。

ロボットの活用や外国人就業者の増加など、今後も大きな変化が考えられるのは間違いありません。


そのような背景をふまえて、2018年1月に策定されたケア21の中期経営計画をみてみましょう。

ケア21では2020年10月期を最終年度とする計画を立てています。

売上目標は380億円、経常利益率は3.5%という計画。

2018年10月期の実績が売上252億円、経常利益率2.6%なので、売上は50%の増大、利益率は35%の上昇ということになります。

キャッシュフローの計画はさらに強気で、2020年の営業キャッシュフローは19億円近くと、2017年の2倍以上に達する予定。


それにより、有利子負債は28億円と、現在の40億円から大きく減らす計画を立てています。

有利子負債はリース負債を含めると195億円ありますが、これを入れてしまうとさすがに実現不可能です。

なので、借入金のみを対象にした計画だと思われます。


さて、実際に営業キャッシュフローが19億円に拡大し、有利子負債を減らしていくことができれば、ケア21の時価総額82億円というのは明らかに安い水準です。

ところが今期の業績をみると、売上は207億円(+11.5%)に増えていますが、営業利益が1.4億円で77%の減収になっています。

売上原価率は81%と前年からさらに増加しています。

理由としては、人材獲得のコスト増と、社会保険関連料率が引き上げによるコスト増が挙げられています。


売上300億円到達は無理そうということで、売上目標は287億円に下方修正しています。

ケア21では、これまでの福祉サービスだけでなく、医療や宅配色、不動産、学童保育などの教育サービスまで手を広げようとしています。

少し迷走しているような気がしないでもないですが、介護領域で売上を拡大させているケア21が今後どうなっていくのか、また次回もチェックしたいと思います。