5年で売上2倍!マツモトキヨシを追い抜いた「ツルハホールディングス」の戦略とは

今回取り上げるのは、『マツモトキヨシ』を抜いて業界2位となったドラッグストアチェーン「ツルハホールディングス」です。

ツルハHP

ツルハの発祥は1929年と古く、北海道旭川市に『鶴羽薬師堂』を創業したのが始まり。

1956年に『ツルハ薬局』へと名前を変えたのち、1975年より本格的なチェーン拡大を開始しました。

直近6年間の売上を見てみます。

2013年から売上が約2倍ほど増えており、2018年の売上は6730億円ほど。

売上成長率は2017/5期を除いて13%以上と、今でも二桁成長をキープしています。

営業利益も見ていきましょう。

売上の拡大に伴い、営業利益も拡大しています。

営業利益率を見ると、6%前後で推移していることがわかります。

ドラッグストア業界大手4社の売上推移を見てみましょう。

2014年5300億円を売り上げていたマツモトキヨシが業界トップでしたが、2018年は業界3位に転落。

業界3位だったツルハホールディングスが業界2位に上り詰めています。

一体どのような戦略で業績拡大したのでしょうか。


ドミナント戦略により四国中国地方で事業拡大

ツルハHDの掲げる戦略は「ドミナント戦略」「プライベートブランド戦略」の2つです。


ドミナント戦略とは、特定の地域に「集中的に」出店するというもの。

小売チェーンにはよくある(というかほぼ全てやっている)戦略です。

出店戦略

ざっくりいうと「出店地域を集中させることで、その地域でのトップシェアを狙う」というもの。

出店地域を集中させることで、物流や販促など、あらゆる側面から経営を効率化できます。  

例えば、10つの店舗を全国バラバラにチェーン展開したとしたら、テレビCMを打つために10地域での広告費が必要です。

反対に、一つの地域に集中して10店舗展開すれば、テレビCMは一つの地域だけでOK。それで10店舗分の広告効果を見込めます。

かなり単純化した例ですが、これだけでも10倍経営効率が良いことになります。

ツルハグループ総合採用サイト

ツルハグループの場合、北海道からスタートしたこともあって北海道・東北に店舗が集中しています。

ツルハ全体の店舗数の推移を見てみます。

2013/5期の1074店舗から、2018年は1931店舗と5年で約2倍に増加しています。

地域別で見ていくと四国中国の店舗数増加が顕著です。

特に2015年から2016年にかけて大幅に拡大。

これは本社を愛媛県におく「株式会社レデイ薬局」を買収したため。45億円ほどの株式公開買い付けによって子会社化しました。

これにより、中国四国地方の209店舗が増加しました。


ツルハホールディングスは、「レデイ薬局」以外にも多くの薬局チェーンを抱えています。

2007年に買収した「くすりの福太郎」にはじまり、2009年には「ウェルネス」、2013年には「ウォンツ」、2017年に「杏林堂」、2018年に「B&D」と、カバー地域を徐々に拡大しています。

1店舗あたりの平均売上を計算してみましょう。


2013/5期の1店舗あたり売上が3.19億円ほど。

2015年頃から上昇傾向にあり、2018年の1店舗あたりの売上は3.49億円ということになります。


業界トップクラスのプライベートブランド売上比率

ツルハホールディングスが掲げるもう一つの戦略は、「プライベートブランド」への注力です。

プライベートブランドでは、自社で製品を企画開発する分、価格に対して仕入れコストを安く抑えることができます。

そのため、ナショナルブランド(一般製品)と比べて利益率が高くなるのが特徴。

ツルハグループでは、医薬品を扱う「メディズワン」と、それ以外を扱う「エムズワン」というプライベートブランドを展開しています。

ツルハHP

上のページは少し情報が古いですが、プライベートブランドだけで数百億円もの売上をあげています。

エムズワンでは、化粧品や食品、日用品を扱っています。

イーショップ

排水管やトイレ周りの掃除道具など、数多くの日用品を取り揃えていますね。

メディズワンも見ていきます。

イーショップ

風邪薬から虫刺されの治療クリームなど、数多く揃えています。

一般的な医薬品は、メーカーがふんだんに広告費を割いているために価格は高くなります。

プライベートブランドでは積極的な広告展開はしないのが通常ですから、その分価格を抑えることができます。


先ほどのページではデータが古かったので、直近のデータをチェックしてみましょう。

2018年5月期のプライベートブランド売上は497億円。

商品売上全体の対する構成比は8%にまで低下しています。思ったほどプライベート商品の売上は伸びていないようです。

50%以上をプライベートブランドが占めるというセブンイレブンに比べればはるかに小さいですね。


「その他」の売上が右肩上がり:機能性飲料やサプリが好調か

先ほど、店舗あたりの売上が増加しているという話がありました。

商品ごとの売上構成はどうなっているでしょうか?

興味深いのは「その他」の項目が大きく伸びていること。この中にはサプリメント、機能性飲料、食品などが含まれています。

全体で最も大きいのは「日用品」で、売上の26%ほどを占めています。

「その他」の中でも特に伸びているのが「食品」の売上。前年から39%と、グループ全体で2番目に高い成長率を記録しています。

一番高い売上成長を記録しているジャンルは何かというと、「調剤事業」です。

ただ、この中には2017年10月に買収した「杏林堂グループ」の影響が大きく、それを取り除くと7.7%の増収にとどまります。

食品売上は買収の影響を除くと13%の増収で、ツルハグループ全体で最も成長したジャンルとなっています。


世界に2万店、売上6兆円が長期目標

コスト構造を見ていきます。

2013年以来、原価率71%販管費率22%ほどとなっています。

財政状態をみていきます。

総資産は3400億円ほど、現預金は440億円。

商品が850億円ほどです。

利益剰余金が1370億円、負債純資産の40%を占めることになります。

キャッシュフロー推移も見ていきます。

2018/3期の営業キャッシュフローは271億円ほど。

投資キャッシュフローはマイナス85億円。財務キャッシュフローはマイナス170億円です。

フリーキャッシュフローも見ていきます。

2016年は4230億円。

それ以外の年はプラスマイナス100億円前後を推移しています。

企業価値も計算していきます。

時価総額は6450億円ほど。

現預金550億円と借入金88億円を加味すると、企業価値は5988億円となります。

営業キャッシュフローが平均して300億円くらいとして、その20倍の値札がつけられています。

なお、意外なことに(?)ツルハグループの目標は「世界2万店」と非常に高いものです。

売上6兆円というのは直近の10倍近い規模です。

セブンイレブンの国内チェーン全店売上が4.7兆円。

絶対に不可能ということはありませんが、現在の状況から見ると荒唐無稽な目標ではあります。

国内の小売市場の中で成長が続いている数少ない分野が「コンビニ」と「ドラッグストア」の二つ。

ドラッグストアには「医薬品を扱える」という他の小売店にはなかなか持てない強みがあります。


それでも現状は「セブンイレブン」をはじめとするコンビニ業界の方が、「革新性」という意味でははるかに勝っているように感じます。

ドラッグストア業界、そしてその中で急拡大を続けているツルハグループがどこまで伸びて行くのか注目していきたいと思います。