WeChat Payの成長で「その他」売上が爆増!売上構成の変化で減益の「テンセント」2018年2Q決算まとめ

中国のインターネット企業「テンセント」の決算が発表されました。

まずは概況を把握したいので、売上の推移を確認します。

売上737億元で、日本円だと1兆1744億円ほどです。

とてつもない金額ではありますが、売上の増加率としては大きく鈍化しています。

前の四半期までは前年比1.5倍が当たり前だった中、今四半期では30%の増収にとどまっています。

まあ、それまでの成長率が異常だったと言うべきような気はしますが。。


市場からみて問題なのは、おそらく営業利益の方です。

今四半期の営業利益は218億元、日本円だと3,474億円ほどもありますが、前年同期の226億元(3602億円)と比べると3.6%ほどの減益となっています。

1Qから2Qにかけて減益となることは過去4年間なかったことです。


2010年ごろまで過去の数字をさかのぼっていくと、2011年と2013年には1Q-2Q間で減益となっているため、テンセントにとって初めてのことというわけではありません。


それでは、今回の場合は何が減益の理由となったのでしょうか。


ゲーム売上の比率が下がり「その他」が拡大

まずは、売上の内訳からチェックしていきましょう。


テンセントの中でもっとも売上が大きいのは「ゲーム課金」で、252億元(4016億円)の売上となっています。

4種類の売上はどれも大きく伸びてきましたが、「その他」を除いた主要な売上の伸び率がそろって鈍化してしまいました。

ゲームに至っては6.0%と、これまでと比べればほとんど横ばいになってしまっています。

(とはいえ、この6%は223億円くらいですが)


そんな中で、目立っているのが「その他」売上の成長です。


3年前には9.4億元(150億円)と、テンセントにとってはケシ粒ほどの売上にすぎませんでした。

それがここにきて175億元(2789億円)と、全体売上の四分の一近く(23.7%)を占めるまでに拡大しています。


この中に含まれているのは「payment related and cloud services」、すなわち決済サービス「Weixin(WeChat) Pay」に関する収益や、クラウドサービスによる売上が爆増しているようです。

以下は2017年アニュアルレポートからの抜粋ですが、事業者向けの決済サービスとしてのWeixin Payが大きく伸びているとのこと。

Tencent 2017 Annual Report


また、テンセントHDのコスト構造をみると、売上原価率がどんどん上がっていることが分かります。

3年前は原価率38%程度だったのが、徐々に拡大していき、直近では53%を超えています。

こちらも1Q決算では詳細が明らかにされていませんが、アニュアルレポートをみると、「コンテンツや決済関連サービス、チャンネルにまつわる費用が増えた」と書いてあります。

そして、原価率上昇の理由を「売上構成の変化」にあるとしています。

3年前までテンセントの売上の6割を占めていたのはゲーム課金による売上でしたが、直近では34%にまで低下。

そして反対に、「その他」売上が5%から24%にまで拡大したというわけです。


とても利益率が高いスマホゲーム課金による売上の割合が減り、利益率の低い決済サービスの売上が伸びることで、テンセントの利益率が全体として下がってしまっています。


3つの戦略ハイライト:ミニプログラムとミニ動画、ゲーム実況への投資など

ここまで見てくれば、テンセントに何が起こっているのかという「概況」は掴めた気がします。

次に、決算リリースにあった三つの「戦略ハイライト(Strategic Highlights)」についてまとめてみます。


① 「ミニプログラム」と他サービスの連携

「ミニプログラム」をWeixin Payなどの他のデジタルツールと統合できるようにして、より幅広い特定アプリが固有のソリューションを提供できる方法を拡張している。

テンセントが「ミニプログラム」による革新をリードしていくことで、巨大で拡大していく開発者のエコシステムを作り上げ、2億人を超えるDAUを実現することができた。

「ミニプログラム」はネイティブアプリの補完的な存在として見ており、ユーザー体験や企業との関係性、我々の決済・広告・クラウド事業の開発に貢献してくれるものと信じている。


② 「QQ Kandian」のミニ動画でユーザーエンゲージメントが拡大

ユーザーに対して魅力的で革新的な機能や製品を公開することで、われわれのソーシャルネットワークやコンテンツサービス、便利アプリに対するユーザーのエンゲージメントを深めている。

例えば、「QQ Kandian」にユーザーが費やす時間は大きく増加したが、それは短いミニ動画のフィードを追加することによるものだ。

この四半期、「QQ Kandian」とモバイルQQブラウザの1日あたりのページビューは前年から55%も増大し、短い動画の閲覧数は3倍以上に増加した。


③ ゲーム実況やスマート小売への投資と一部投資の利益確定

資本を優先度の高いプロジェクトに振り分け直している。

最近、ゲームのライブ実況サービスに積極的な投資を行った。それらは我々のゲームプラットフォームに有利だと思う。

また「スマート小売」にも投資したが、これも我々の決済サービスやクラウドサービスに有利だと考えるからだ。

これらの投資原資の一部は、「Ele.me」や「Mobike」など過去の投資ポジションの利益を確定することで調達した。


テンセントが保有するSNSのKPIについても確認しておきます。

QQのMAUは8億人で、前年から5.5%の減少だが、スマートデバイスに限れば7億人で、7%の増加。

Wechat/Weixinは10億5,770万人で、前年から9.9%の増加。

Qzoneは5億4,830万人で、9.5%の減少。スマートデバイスに限っても7.3%の減少。


課金ユーザー数は1億5,390万人で、30%の増加。


市場からの評価は下がり気味

売上の成長率が鈍化し、営業利益が前年比で減ってしまったことで、市場はテンセントに対する期待値を下げています。

株価はピーク時から33%も下落し、時価総額は3兆香港ドル(43兆円)となっています。

その一方、手元の現金と金融資産を合わせた金額は5,256億元(8.4兆円)もあります。

金融負債が1,769億元(2.8兆円)あるのでそれをさしひくと、5.6兆円のネット金融資産を持っていることに。

つまり、テンセントHDの実質的な企業価値は37.4兆円と考えることができます。


今四半期のフリーキャッシュフロー は154億元(2469億円)と、前年から12%も減少してしまいました。

このペースだと、1年で1兆円くらいのフリーキャッシュフローを稼ぐことになります。


それに対して企業価値が37年分ですから、市場的にはまだまだもっと成長してくれないと困る、という形でしょう。