今四半期だけで6件のM&A!「シェアリングテクノロジー」の営業利益が約7倍になった理由とは

先日、2017年に上場したインターネット企業「シェアリングテクノロジー」の2018年度Q3決算が発表されました。

のちほど説明しますが、消費者と業者をつなぐ『暮らしの110番』を看板事業としている会社です。

そのシェアリングテクノロジーですが、売上高が前年の3.5倍となる16億8,132万円と急拡大しています。

営業利益はさらにすさまじい増え方をしています。

2017年Q2以降に営業利益は減少を続け、前四半期は営業損失2488万円を計上しました。

しかし、今四半期は7億9942万円まで急増。前年から7倍以上まで増加しています。

上場から1年が経過したシェアリングテクノロジーにいったい何が起こっているのでしょうか?

これは果たして好決算と言ってよいのでしょうか?


シェアリングテクノロジーの事業内容

まずは、シェアリングテクノロジーの事業内容について確認しましょう。大きく「WEB事業」「投資事業」の二つに分かれています。

① WEB事業

WEB事業では、その名の通りインターネットサービスを提供しています。

前述した通り、その中で代表的なのが生活支援メディア『生活110番』です。

生活110番

『生活110番』では、家のリフォームや掃除から家電などの修理まで、暮らしに関する「お困りごと」を解決する業者とのマッチングサービスを提供しています。

決算説明資料より)

上のスライドにあるように、全国およそ2,900社もの加盟店と提携しており、1日に2,700件もの問い合わせがきているそうです。

月間170万PV以上をほこる『生活110番』のほか、およそ200もの領域特化型のメディアサイトを運営しており、特化型メディアサイトの合計PVは200万を超えているそうです。

シェアリングテクノロジーはユーザーと加盟店のマッチングを行い、サービス提供が行われた段階で「成果報酬」を受け取ります。

また、自社サイト運営のノウハウを生かしてクライアント企業の集客支援コンサルティングも行なっています。


取り扱うジャンルは『カギ110番』や『雨漏り修理110番』など生活関連がほとんどでしたが、上場後は積極的なM&Aにより対象分野を拡大しています。

上場してからの7ヶ月で6件のM&Aを実施しており、純資産の総額25億円分を総額24億円で買収するという「割安」なM&Aに特化しているようです。(このことがポイントとなります)

買収した6社のうち、4社がWeb事業に属しています。

・留学支援サイト「スマ留」

・「フランチャイズの窓口」

・「お金つくーる」

・内装業社比較サイト「アーキクラウド」


② 投資事業

シェアリングテクノロジーはWEB事業以外に「投資事業」にも取り組んでいます。

ここからがおかしなところで、今四半期の決算をみると、営業利益が売上収益よりも大きくなっています。


上の画像は今四半期の決算短信から抜粋したものですが、売上収益が7.9億円に対して営業利益が9.4億円も出ています。

通常の事業では売上よりも大きな利益が出るはずはありません。これはいったいどういうことでしょうか。


6件のM&Aによって11億円の利益を計上

この謎を整理するために、まずはセグメントごとの売上をグラフ化してみます。

WEB事業の売上高は8億9,000万円と、前年同期比で90%の成長です。

そして、投資事業は前四半期に初めて692万円の収益を上げ、今四半期は7億8,667万円と急増しました。

突発的な増加の原因はシェアリングテクノロジーのM&A攻勢にあります。

シェアリングテクノロジーは上場後に8件のM&Aを行なっており、今四半期(4月〜6月)だけで6社を買収しました。

そのうち、WEB事業を行なっていない3社の売上高が投資事業の売上高に貢献しています。

営業利益の急増についても、投資事業が大きく伸びています。

前四半期まで赤字が続いていた投資事業が、今四半期は9億7486万円の利益を上げています。

利益が売上高を上回っているのはなぜでしょうか。その理由は会計基準の変更にあります。

シェアリングテクノロジーは今四半期からIFRSを適用しており、M&Aによる負ののれん収益は「その他の収益」として営業利益に含まれるようになりました。

決算短信を読み解くと、塩谷硝子株(株)の買収によって「割安購入益(負ののれん)」が4億1,505万円発生しています。

電子プリント工業(株)の買収では、4億円の割安購入益が発生。


(株)名泗コンサルタントの買収では3億円の割安購入益が出ています。

「その他の収益」が11億4,096万円であり、3社の割安購入益の合計(11億2,834万円)と一致します。

つまり、シェアリングテクノロジーの投資事業の利益9.7億円のうち、11億円は「割安購入益」によるのの。

たとえ会計的には正しくとも、現実のキャッシュフローを生んでいない利益です。

「割安購入益」の影響を除いた場合、シェアリングテクノロジー全体でも実質的には営業損失が出ているということになります。


コンテンツへの投資で売上原価率は40%超に

今四半期はWEB事業で2億9000万円の営業損失が出ています。

売上原価と販管費の推移を見てみると、いずれも今四半期に急増しています。

売上原価が6億9952万円、販管費は13億966万円となっています。

これまで5%に満たなかった売上原価率が、今四半期は40%を超えました。

売上原価の詳細は開示されていませんが、シェアリングテクノロジーは投資戦略としてコンテンツ強化に注力しています。

自社メディアへのトラフィック上昇のために大量の記事を作成する必要があり、社内人件費と外注費を合わせて約5億円を費やしたことで原価率が大幅に上昇しました。

総資産104億円のうち66億円を有利子負債で調達

最後にシェアリングテクノロジーの財政状態を確認しておきます。

まずは資産から見ていきます。

総資産は103億5006万円、そのうち約半数となる48億313万円が現金及び現金同等物です。

M&Aや会計基準の変更が重なっており単純比較はできませんが、総資産は前年度末から5倍近くまで増加しています。

調達原資の負債・純資産をチェックしてみましょう。

借入金及び社債の合計が約66億円となっています。

シェアリングテクノロジーの手元にあるお金は、そのほとんどが借金によるものだと言えます。


キャッシュフローは前四半期までのデータが開示されています。

営業キャッシュフローは2016年度、2017年度とプラスが続いていましたが、前四半期は1億円のマイナスに転じています。

財務キャッシュフローは長期借入金と社債発行で40億円のプラスとなっています。


市場はどのように反応しているでしょうか。


なんと、株価はこの数ヶ月で3倍近くに上昇しています。

時価総額389億円に対して、現金と金融資産の合計は54億円、有利子負債は66億円ですので、実質的な評価額は約400億円と推定できます。

事業による利益が出ていないにも関わらず、株価が伸び続けているということで大変興味深いですね。

これからどうなっていくのか、引き続きチェックしていきたいところです。