今回は焼き鳥屋チェーンの「鳥貴族」について改めて調べてみます。
鳥貴族の創業は1985年のことで、大阪で1号店「鳥貴族 俊徳店」を開業したのがはじまりです。翌年(株)イターナルサービスとして法人化。
1991年には加盟店(フランチャイズ)1号店を開始し、1995年には他の居酒屋業態をやめて鳥貴族の単一ブランドに集中します。
1998年に10店舗を展開し、2002年に兵庫県、2005年には東京都に初進出。
2008年には100店舗を達成。
2010年には大阪本社に焼鳥タレ製造工場を併設。
2014年に東証ジャスダックに上場し、翌年に東証二部に指定。さらに翌年には東証一部に指定され、今に至ります。
そんな鳥貴族ですが、利益率は高くないものの順調に成長を続けています。
材料国産化や値上げなど、いくつかニュースもあった鳥貴族ですが、今回のエントリでは同社のビジネスモデルと決算数値、今後の目標などについて整理してみたいと思います。
鳥貴族のビジネスモデルはシンプルですが、少し変わった点がいくつかあります。
一つ目は、「タレ工場以外にセントラルキッチンを保有せず、各店舗で仕込みを行なっている」ことです。それにより、手作りの美味しい焼き鳥が提供できます。
二つ目は、「TCC(鳥貴族カムレードチェーン)」と言われる独自のフランチャイズ・システムです。
当初は普通に「FC(フランチャイズ)」と呼んでいたようなのですが、代表の大倉忠司氏が「FC」という言葉に違和感を感じており、「同志」という意味をもつ「カムレード」という言葉を採用。
鳥貴族のTCCが従来のFCシステムと異なるのは、「新規の加盟を受け付けておらず、 閉鎖されたチェーンシステム」であり、そして「フィーが世間一般のFCフィーと比較して非常に低額である」ためとのことです。
参考:鳥貴族代表の大倉忠司氏のブログ「鳥貴族カムレードチェーン」
また、「国産国消」を事業戦略として重視しているのも特徴的です。
(会社ページより)
2016年10月にコーン・ポテトフライから枝豆まで、全食材が国産になったとのこと。
店舗数の推移を見てみます。
TCC店舗数の増加(161から225)よりも直営店舗の増加(169から342)の方が大きくなっています。
TCC店舗は既存の事業パートナーが店舗を増やしているだけ、ということでしょうか。
あるいは、厳選しているだけで今はTCCパートナーも増やしているのかもしれません。
ここからは少し財務指標を紐解いてみます。まずはコスト構造を対売上比率でみてみます。
売上原価率は32%前後と意外に低い印象。給与手当と雑給(アルバイトなどへの報酬)が売上に対してそれぞれ9%前後、24%前後を占めています。
雑給が大きいのは、鳥貴族の従業員比率として臨時雇用者数が大きくなっているためです。
店舗あたりの収益も計算したいところですが、鳥貴族のTCC店舗向けの売上がいくらかわからないため、今回は算出するのは難しそうです。
最後に、鳥貴族の財政状態をみてみます。まずは資産の内訳です。
総資産159億円のうち、建物が純額(減価償却費を差し引いた額)で64億円とかなり大きくなっています。現預金も48億円と大きいですね。
資産の出どころである負債と自己資本の内訳です。
項目が多すぎて少しわかりにくいですが、利益剰余金が34億円、資本金と資本剰余金が合わせて29億円、借入金が24億円ほどあります。
キャッシュフローです。
営業キャッシュフローは30億円にまで増加しており、なかなかのものです。
投資キャッシュフローも24億円ほどとかなり大きく、設備投資も大きいことがわかります。
有形固定資産の取得に20億円ほどを費やしています。フリーキャッシュフローは9億円にまで増加。
鳥貴族は、2017年までの中期経営計画として500店舗、売上250億円などを掲げていましたが、目標をおおむね上回る結果となっています。
そして今度は、2021年までの中期経営計画「うぬぼれチャレンジ1000」が発表されています。
鳥貴族は、長期的なビジョンとして「国内2000店舗」「海外展開」の二つを掲げています。
そのための土台作りとして、2021/7期までの目標として掲げられているのが「うぬぼれチャレンジ1000」。
その中では、関東・関西・東海の3商圏において、1000店舗の出店を目指すこと、営業利益率8%を実現するという高い目標が据えられています。
そのための計画として、毎年純増100店舗以上という積極的な出店戦略を展開。
人材強化と新規店舗の早期黒字化などによって、経営効率の改善を目指すとのことです。
その中ではタッチパネルなどの導入も進めるとのことで、客として純粋に楽しみですね。
具体的な数値計画を見ると、売上高640億円、営業利益51億円となっています。
現在の時価総額は375億円で、上場から一貫して伸び続けていますが、営業利益が50億円を超える水準になれば、実際の企業価値はもっと高くなるはずです。
ただ、現時点での水準(営業利益14億円、純利益9.6億円)からすると、決して安い水準ではありません。
掲げた高い目標を実際に達成することができるか?というのが鳥貴族の今後の注目ポイントと言えそうです。