Yahoo!ショッピング収益性改善の一方でスマホ決済戦争に突入する「ヤフー」2018年度1Q決算

今回は、日本の代表的なインターネット企業となった「ヤフー」の2018年度1Q決算についてまとめます。

ヤフーは先日、レシピ動画「クラシル」を運営するdelyを買収したことで話題となりました。

まずは売上高と営業利益の四半期推移を見てみましょう。

全体の売上は2318億円、営業利益は475億円という規模です。

2015年8月に「アスクル」を買収したことで売上規模は倍増しましたが、その後は特に営業利益が伸び悩んでいます。


売上収益と営業利益の変化率の推移です。

アスクル買収により、2015年に売上は大幅に増加しましたが、その後は前年比で5%未満にまで成長率は落ち込みました。

今四半期は、2016年度3Q以来の10%以上増収。

営業利益については今四半期もマイナス8.86%と、減少傾向が続いています。


「ショッピング事業」が売上増を牽引

セグメントごとの売上高を見てみましょう。

「ヤフオク」や「Yahoo!ショッピング」に代表されるコマース事業の売上は1,584億円で、全体の67%を占めています。

検索広告を中心とするメディア事業は721億円と、コマース事業の半分ほどの売上です。

前年同期からの成長率を計算してみましょう。

コマース事業の成長率は4%から11%まで増加と、売上成長が加速しています。

メディア事業は4%を下回る成長率となっていましたが、今期は6%まで上昇。

ヤフーの売上成長を引っ張っているのは「コマース事業」であることが分かります。


ショッピング取扱高が1752億円に拡大

それでは、何がコマース事業の売上を増加させているのでしょうか?



コマース事業には、「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」などのeコマース、「Yahoo!プレミアム」等の会員向けサービスが含まれています。

直近の取扱高は4699億円と前年同期から10%増加しています。 

「ヤフオク!」の取扱高は2176億円とおよそ半分ほどですが、2014年ごろからずっと2000億円前後で横ばいです。

取扱高の増大を牽引しているのは「ショッピング事業」で、直近では1752億円と、コマース事業全体の37%にまで拡大しています。


前年同期からの成長率の推移を見てみましょう。

 「ヤフオク!」の成長はほとんど止まっています。

その一方、ショッピング事業が20%以上の成長を続けています。 

ショッピング事業には「Yahoo!ショッピング」のほか、アスクル傘下の「LOHACO」や、ペット商品を扱う「チャーム」なども含まれています。

ロハコの2018年5月期の売上が417億円、チャームの2016年11月期(買収前)の売上が129億円。

両社とも直販ECを基本とし、店舗参加も含んでいるので、現在は四半期あたり200億円ほどの取扱高がありそう。

1752億円のショッピング取扱高のうち大部分は「Yahoo!ショッピング」によるものと思われます。


決算説明会において川邊社長は、Yahoo!ショッピングの広告売上のテイクレートが4.5%と説明していました。


直近のショッピング広告売上が70億円であること、テイクレート4.5%という数字から、Yahoo!ショッピングの取扱高は1555億円と計算できます。

ショッピング事業全体の取扱高が1752億円なので、残りは197億円。だいたい計算が合います。


ちなみに、Yahoo!ショッピングでは、2013年の「eコマース革命」以来、売上にかかる取引手数料(売上ロイヤルティ)をゼロ円という施策を継続しています。

孫正義「eコマース革命宣言」

取引手数料がゼロの中で売上をあげる方法が、マーケットプレイス上に出稿する広告収入というわけです。


売上手数料を無料にして出店を促進し、マーケットプレイス上の広告によってマネタイズするという戦略は、アリババグループの巨大EC「Taobao」などと同じです。

アリババはソフトバンクの関連会社であり、ヤフーはソフトバンクの子会社ですから、もしかするとジャック・マーから戦略を授かっているのかもしれません。


また、ヤフーのショッピング事業において重要な役割を担っているのが「Yahoo!プレミアム会員」です。

プレミアム会員に登録すると、買い物時のポイントが5倍になったり、『ヤフオク!』出品の際の手数料が8.64%(通常は10%)に割引されたりというメリットがあります。

プレミアム会員が増えるほど単純に収益も増えますし、エンゲージメントの高いユーザーを囲い込むことができます。

ヤフーとソフトバンクは、2017年4月にソフトバンク利用者に対してYahoo!プレミアムの特典も利用できるという施策をスタートしました。

“ソフトバンク”のスマホは 「Yahoo!プレミアム」の全特典が使い放題! さらに「Yahoo!ショッピング」などのポイントも 全品いつでも10倍!

それにより、2017年度Q1には会員数がドカンと増加し、直近では2000万人を超えています。


このように、グループ全体で総力を挙げてコマース事業に注力していることが、ショッピング事業の取扱高に出ていると言えます。

ヤフーは、コマース事業を2020年代初頭までに「国内1位」になるまで伸ばすことを宣言しています。

現時点では、上のグラフの濃赤部分のように、『Yahoo!ショッピング』はようやくトントンになってきたというフェーズ。


国内トップの楽天の取扱高が3.3兆円(2017年度)ですから、そこまで伸ばすことができれば、テイクレート4.5%として1485億円の売上が立つことになります。

アマゾン・ジャパンも超絶便利な中で、『Yahoo!ショッピング』がどこまで成長できるか注目したいと思います。


広告デザイン変更で検索広告が14%増収

ここまでヤフーの成長を牽引している「コマース事業」について確認してきました。

しかし、利益を支えているのは「メディア事業」の方です。


上のように、コマース事業の利益が154億円なのに対して、メディア事業の利益は367億円もあり、利益率では50%以上という高水準です。

そのメディア事業には、「ディスプレイ広告」と「検索連動型広告」の大きく2つの収益源があります。

直近では検索連動広告による売上が395億円、ディスプレイ広告が369億円と、ほぼ半々の割合となっています。 

前年同期からの成長率を計算してみます。

ディスプレイ広告の成長率は年々減少しており、直近では10%未満の成長が続いています。

一方の検索連動型広告は、2015年ごろに一度マイナス成長に陥りましたが、ここにきて10%以上の増収率を取り戻しています。


検索連動型広告が伸びた理由は、次のような主に二つの施策を行ったからです。

一つは、広告の表示デザインの変更。

もう一つは、カテゴリ補足オプション機能の提供です。

こんなことでそんなに収益性が上がるのかという印象はありますが、実際に数字が伸びていることは事実です。


スマートフォン利用比率が70%に

ここまで事業の各論をチェックしてきましたが、ここでヤフー全体のユーザー数がどのように変化しているかを確認してみましょう。

まずは、月間ログインユーザー数の推移です。

月間ログインユーザー数は直近で4433万人と、前年同期から11%の増加。


ヤフーの月間ログインユーザー数は、今でも前年比10%から15%程度の増加を続けています。

2016年ごろは成長率が上がりましたが、ここのところはやや落ち着いています。

続いて、ログインユーザーの利用時間を見てみましょう。

3ヶ月合計の利用時間は直近では23億時間となっており、うちスマートフォン経由が16億時間となっています。

2014年ごろは、スマホの利用時間比率は36.2%でしたが直近では69.75%にまで拡大し、スマートフォンへのシフトは成功しつつあるといえます。

その一方、パソコン経由での利用はむしろ減少しており、今後もスマホ経由での利用が増えていくことになりそうです。


LINEと同様「手数料無料」で『PayPay』を2018年秋に開始

コマース事業の取扱高を拡大してきたヤフーですが、まだ「利益」という結果には表れていません。

2017年度1Qの営業利益は522億円ありました(うちアスクル火災による保険金が40億円)。

広告収益の拡大による増収が59億円あった一方、販管費が88億円増加し、株式売却益を含んでも475億円に減益という状態。

その中には、メディア・コマース両事業への新規投資額11億円も含まれています。


当然ながら投資家はこれまでの状態を快く思っておらず、株価は2018年から大きく値下がりしています。

2018年初の株価は530円ほどでしたが、6月には354円まで値下がりしました。

直近では421円にまで回復していることから、今回の決算は好感されているようです。


現在の時価総額は2.4兆円で、現金同等物7831億円、借入金(有利子負債)1875億円を考慮すると、企業価値は1.7兆円ほどと評価されていることになります。

参考までに前年度の年間フリーキャッシュフロー703億円を比較すると、フリーキャッシュフローの24年分となっています。


利益率の押し下げ要因となっていた「Yahoo!ショッピング」の収益性が改善したことで、今後は利益率の向上を期待したいところです。

が、そんな中でまた新しい事業として開始するのがモバイルペイメント事業『PayPay』です。

『PayPay』は、ソフトバンクとヤフー、「Paytm」の3社の協力によって提供するスマートフォン決済サービスです。

「Paytm」はインドのスマートフォン決済サービスのトップ企業で、利用者はすでに3億人超、加盟店数は800万店と圧倒的な実績があります。


ヤフーは『PayPay』でモバイルペイメントの取扱高No.1を目標としており、次のような強みを挙げています。


一つはソフトバンクのリソースを使えること、既に口座数4000万を超えている『Yahoo!ウォレット』の顧客基盤が使えること、「Paytm」のテクノロジーの活用の三つです。

さらに注目すべきは、決済手数料を3年間無料としていること。これは『LINE Pay』の戦略と全く同じです。

当然、まずは取扱高拡大を優先していくことになります。

せっかくショッピング事業の利益が見込めるフェーズとなったところですが、『PayPay』が大企業同士の競争となることから、生半可な投資ではすまされそうにありません。

目先の利益よりも中長期での拡大を優先するという姿勢が伺えます。


『LINE Pay』は『QuickPay』と提携した一方、『PayPay』はソフトバンク、Yahooの基盤を活用するという戦略で、激しいガチンコバトルが始まりました。

キャッシュレス化の進展が望まれる日本社会でモバイル決済を押さえることができれば、かなり強いことは間違いありません。

激アツのモバイル決済がどうなっていくのか今後も注目していきたいと思います。