韓国のキャッシュレス決済比率89.1%!一体どのように決済比率を上げたのか

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今回は、韓国のキャッシュレス化が進んでいる理由についてまとめてみたいと思います。

Unsplashより、札束風の紙をぶちまける女性の写真

先日、インテリジェントウェイブという企業の記事を書きました。

インテリジェントウェイブは日本国内のカード会社向けのシステム開発会社ということで、キャッシュレス市場について少し調べました。

その際に知ったことなのですが、韓国のキャッシュレス決済比率が89.1%と、非常に高いことにとても驚きました。

キャシュレスビジョン 経済産業省)

韓国が89.1%とダントツで高いのに対して日本は18.4%と、70%もの開きがあることがわかります。

半分を超えているのは5位のオーストラリアまで。よく話題にのぼる通り、中国も60%と高いですね。


というわけで今回は、韓国のキャッシュレス化がなぜここまで進んでいるのかについて調べてみたいと思います。

調べてみると、そこには社会的・歴史的な背景がありました。


決済の歴史:物々交換からクレジットカード誕生まで

まずは決済の歴史をざっくりとおさらいしてみましょう。

① 物々交換の頃(〜紀元前7世紀)

人類の決済(というか、取引)は、物々交換から始まったとされています。

紀元前7世紀(2700年前くらい)以前は物々交換が主流でしたが、取引のたびに狩ってきたイノシシなどを持ってくるのは大変です。

そこで、各共同体において利用価値の高い麦、塩、貝殻などが物品貨幣として採用されるようになります。

② 鋳造貨幣の時代(紀元前7世紀〜)

物品貨幣の誕生は、人類の取引形態を大きく進化させます。

「価値」を保存することができるようになったため、専門技術を持つ人が出現し、「職業選択」という概念が生まれました。

そして人類は、さらに価値を安定させるため、銀や銅などの金属を貨幣素材に使うようになります。

③ 中央銀行の誕生(17世紀〜)

ところが、これらの貨幣はちょっと頑張れば偽造することができ、偽札などの問題は尽きません。

そこで出てきたのが「中央銀行」という存在です。


中央銀行は、貨幣の発行を管理し、価値を保証する役割を果たします。

現在でも基本的な仕組みは同じであり、社会に血液を送り込む「心臓」のような機能を果たしているとのこと(三井住友カードのサイトより)。

④ カード決済の誕生(20世紀〜)

そして、1950年代のアメリカで生まれたのが「クレジットカード」による決済です。



きっかけは、レストランで食事を済ませた実業家が、支払いの時に財布を忘れたことに気づいたこと。

「支払い能力があるのに、支払いができない」というもどかしさに奮い立ち、これを相談した弁護士の友人とともに出資して誕生したのが「ダイナーズクラブ」です。

現金がなくても食事ができるクラブとして設立され、世界初のクレジットカード会社となりました。

クレジットカードは、カード会社が物品への支払いを保証し、その「信用」をもとに取引できるようにしました。

クレジットカードの誕生により、人類ははじめて価値を保存する「貨幣」という存在から半ば逃れる手段を手に入れたと言えます。

そして、その後もテクノロジーの進展が進み、現在では「ICカード(Suicaとか)」や「QRコード決済」などの新たな決済手段が生まれています。


上記の流れを見ればわかるように、「貨幣(=現金)」というものは、人類が価値を保存する手段として(ある意味)仕方なく発明したものです。

うまく信用を担保することができれば、貨幣がなくても取引は成立するはずですし、そのような流れの中で注目されているトピックが「キャッシュレス化」です。


そして、現在の世界でキャッシュレス化が最も進んでいるのが韓国というわけです。

それでは、本題である韓国のキャシュレス化についてチェックしていきましょう。


「アジア通貨危機」をきっかけに財政が危機的状況に

まず社会的背景から見ていきます。

1997年、タイを中心として始まった「アジア通貨危機」が起こりました。

アジア各国の通貨価格が急激に下落し、これにともなって韓国も大きな経済的打撃を受けます。


「韓宝鉄鋼(現:現代製鉄)」や「三美グループ」、「起亜自動車」などの大手グループが相次いで倒産し、S&Pやムーディーズなど格付け機関も韓国の国家信用格付を下方修正します。

その後は株価も暴落し、11月には韓国政府がIMF(国際通貨基金)に救済措置を要請する事態となります。


IMFは支援の中で金融や雇用に「市場原理」の導入を強く求め、財閥の解体や政権交代など大きな社会的変革が起こりました。


政府主導によるクレジットカード推進策

こうした背景もあり、韓国は景気を良くしようと必死でした。

そのために打ち出した施策の一つが、クレジットカードの推進であり、これによって消費の活性化を促そうとしたのです。

政策内容は大きく3つ。

① クレジットカードで1,000円以上の買い物をすると、レシートが宝くじに

毎月1回で年間12回、1等1000万円の賞金が当たる抽選が実施される制度です。

日本円で約1000円以上の会計をカード決済すると宝くじ券を貰えるそうで、宝くじを当てるために1000円程度の決済を繰り返す人も多いそうです。

② 年間利用額の20%の所得控除が受けられる

クレジットカード使用金額が年間給与所得の10%を超える場合、超過額の10%が課税所得から控除されるという特典です。

例えば、年収500万円の人の「所得」が260万円くらいだったとします。

その10%の26万を超えた年間のクレジットカード使用金額分が対象となり、クレジットカードの利用金額が年間100万円なら、7.4万円(超過額74万円の10%)の税金が戻ってくることになります。

③ 年商240万円以上の店舗に「クレジットカード」の取扱を義務化

一般的に、クレジットカード導入の最大障壁となるのは一般の店舗です。

クレジットカードを使うと、カード会社(VISAなど)に手数料を支払わなくてはならず、一般店舗の収益を圧迫してしまいます。

しかし韓国は、これを法制度化することでクレジットカードの普及を推し進めたというわけです。


これは韓国のクレジットカード枚数の推移です。

キャッシュレスビジョン 経済産業省)

この政策の結果、1999年から2002年にかけてカード発行枚数は2.7倍へ、利用金額は6.9倍へと増えました。

また、当時の韓国では脱税が横行していたらしく、データ化することによる脱税の予防・防止の狙いもあったようです。

「コインレス」に向けた新たな取り組み

2017年4月、韓国では「コインレス」に向けたパイロットプログラムが始まりました。

お釣りをキャッシュレス化する試みです。

決済に伴うお釣りをプリぺイドカード(以下プリカ)にチャージするか、接客が尋ねます。

そこで承認されればプリカにお釣りがチャージされるという仕組みです。

モデル事業が4月に始まり、1日平均のチャージ件数は開始初期(5月)に比べ、7月は54.2%増加。チャージ金額も60.3%増えているとのこと。

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2027年にキャッシュレス比率40%を目指す

このように、韓国のキャッシュレス化が進展した理由は、次の二つが大きなターニングポイントだったと言えます。

① 「アジア通貨危機」をきっかけに、財政が危機的状況に追い込まれたこと

② 危機的状況を打開するため、政府がトップダウンでクレジットカードの普及を推進したこと


このように、ある意味「ピンチがチャンス」となって今の韓国における90%近いキャッシュレス率が実現されているわけです。

日本はまだまだ現金の割合が非常に高くなっているものの、日本政府にもキャッシュレス化を推進するビジョンもないわけではないようです。

キャッシュレス・ビジョン

キャッシュレス化の推進には、「実店舗などの省力化」「不透明な現金の見える化」「それによる税収向上」など、政府にとっても大きなメリットがあります。

経産省は、2017年3月に「クレジットカードデータ利用に係る API 連携に関する検討会」を立ち上げるなど、具体的な取り組みも開始しています。

その中で、2027年までにキャッシュレス比率を4割程度にまで増やすことを目標にしています。


「決済」というジャンルは、ただでさえ変化の激しく興味深い領域です。今後もさらに広く情報を集めていきたいと思います。