今回は、ヨガウェアなどを取り扱うスポーツ・アパレル企業「ルルレモン」についてまとめてみたいと思います。
(公式サイトより)
ルルレモンの創業者はChip Wilson氏。1956年生まれ、カナダのノース・バンクーバー出身です。
1979年、23歳の時に最初のアパレルチェーン「Westbeach Snowboard Ltd.」を設立。
社名の通り、サーフィン、スケート、スノーボードなどを対象としたスポーツアパレルブランドでした。
1997年にはWestbeach社を売却。1998年に再出発として立ち上げたのが「Lululemon Athletica Inc.」です。
ルルレモンは当初、昼間はデザイン事務所、夜はヨガスタジオとして運営され、2000年11月にようやく小売専門の店舗となります。
ちなみに、「ルルレモン・アスレティカ」という名前は、日本人が「L」を発音できないのを見るのがおかしいという理由で付けられたそうです。
その後には、日本人にとって「とても西洋的だ」と感じさせ、マーケティングにつなげることが狙いだったと述べているようですが、どちらも物議を醸しすぎたのか削除されています。だから「L」が4つも入ってるんですね。
ここ10年ちょっとの売上推移を見てみましょう。
2018/1期の売上は26億4,918万ドル、営業利益は4億5,600万ドルという水準。
利益率はここのところ少し減少していますが、かなりの勢いで成長を続けています。
売上成長率は、2010年前後と比べると下がってはいますが、今でも毎年13%以上の成長を続けています。
アンダーアーマーの売上が50億ドルほどなので、ルルレモンはすでにその半分以上の規模にはなっていることになります。
今回のエントリでは、ルルレモンの事業の特徴がどういったところにあるのか、決算数値から読み解いてみたいと思います。
ルルレモンの事業内容は前述の通り、ヨガを中心としたスポーツウェアブランド「ルルレモン」を作っている会社です。
(公式サイト)
上のようなヨガウェアを小売店・および直販で販売しているほか、ランニング用ウェアやトレーニングウェア、シューズも扱っています。
男性向けにはジョガーパンツなどのゆったり普段着も販売しているようです。
全体として価格は高く、(当然ながら)ユニクロなどのSPAブランドとは全く異なります。
キッズ向けブランド「ivivva」も展開。
ルルレモンは、事業セグメントを販売チャネルごとに三つに分類しています。
① 店舗販売
一つ目の販路は、小売店舗での販売です。
2010/1期の店舗数は124店舗あり、そのうち14店舗がフランチャイズ店でした。
しかし、2012年1月にはフランチャイズ店をすべて買収し、全店舗が直営となっています。
2017年1月には406店舗まで増えましたが、2018年1月には404店舗と減少。
さらにこの内訳を見てみましょう。
アメリカやカナダ、オーストラリアのルルレモン店舗数が多く、それぞれ270店舗、57店舗、28店舗となっています。
また、中国にも進出しており、わずか3年で15店舗まで増加しています。
全体数の減少要因になっているのは、キッズ向けブランド「ivivva」の店舗数が減っていること。
2017年1月までに「ivivva」は55店舗にまで増えましたが、2018年1月には7店舗と、その数を大きく減らしています。
これは、「ivivva」店舗の収益性が悪かったことが原因で、48店舗をリストラすることで収益性改善に寄与したとのこと。
② Direct to Consumer
ルルレモンにとって二つ目に大きな販売経路は、消費者への直販です。いわゆるDtoCですね。
具体的には自社で展開するECサイトを運営しており、色やサイズを指定して全ての商品を購入することができます。
メインサイトでは日本には発送してくれませんが、アルゼンチンやペルーなど、アメリカ大陸を中心とした地域に対応しているようです。
日本向けは、香港のサイトからだと購入できるようです。
③ その他の販路
以上二つがメインの販路であり、90%以上を占めていますが、8.9%はその他のチャネルで販売しており、年々増大しています。
具体的には、アウトレットや倉庫からの直接販売、一時的な店舗、卸売、ショールームなどの売上が含まれます。
中東地域やメキシコではルルレモン・ブランドを利用して小売事業を行うライセンスを提供しています。
それでは、三つの販路別の売上を見てみましょう。
直営店による売上は18億3,706万ドルで、全体の69%ほど。
DtoCによる売上が5億7,759万ドルに達し、全体の22%近くまで増大しています。
割合でも見てみましょう。
DtoC売上は、2009/1期にはわずか163万ドルの売上でしたが、そこから大きく成長したことが分かります。
DtoCの売上成長率は27%と、高い水準を保っています。
小売店舗の店舗あたり売上も計算してみます。
2013/1期には店舗あたりの売上が500万ドルにまで達していますが、その後は420万ドル弱まで低下。2018/1期は、再び454万ドルと拡大しています。
地域ごとの売上比率についてもみてみます。
カナダで始まった会社だけあって、2011/1期まではカナダの売上が最も大きかったものの、2012/1期にはアメリカ合衆国での売上が半分を超え、現在は72%と高い割合を占めています。
また、北米以外の地域も徐々に拡大しており、直近では9.3%の割合。
とはいえ、ほとんどが北米地域の売上であることも分かります。
コスト構造についても簡単に見ておきましょう。
売上原価率は50%前後で推移。むしろ50%を割っている年が多いですね。
販売管理費は売上の34%ほどですが、このうちかなりの部分をデジタル広告に関する費用が占めているようです。具体的な数値は見つけられませんでした。
ここで、ルルレモンの財政状態についてもチェックしておきましょう。
総資産は20億ドルあり、そのうち10億ドル弱が現金同等物です。小売業としてはかなりのキャッシュリッチといえます。
次に大きいのは有形固定資産で、4.7億ドルほど。
これだけの資産はどこからやってきたのか、負債と自己資本の項目も見てみます。
なんと、バランスシート全体(20億ドル)のうち14億5500万ドルが利益剰余金(Retained earnings)です。めちゃ優良ですね。
借入金はなく、「Unredeemed gift card liability」という負債が8267万ドルあります。
これは、ルルレモンが発行したギフトカード(お買い物券)のうち、まだ使用されていない分の金額を記載したもの。
総額で80億円以上のギフトカードを発行しているということで、なかなかすごい話です。
ギフトカードの失効日は設定されていないとのこと。
ホームページをみると、「私たちのギフトカードは現金のようなものだ。手数料はなく、失効日もない。」と書かれています。
ギフトカードは電子メール、あるいは郵送(文字通りギフトカード)で送ることができるとのこと。
なんだかオシャレですね。
キャッシュフローの状況も見てみましょう。
営業キャッシュフローは4億8934万ドル。
年々着実に増加しており、事業が生み出すキャッシュがルルレモンにとって大きな原資となっていることが分かります。
設備投資の金額は毎年1.5億ドルほどで、年間3.3億ドルのフリーキャッシュフローを生み出しています。
これだけの優良財務ですから、株価もうなぎ登りです。
時価総額は166億ドルと、アンダーアーマー(90億ドル)よりもはるかに高い金額。
ルルレモンには10億ドルの現預金があるので、実質的な評価額は156億ドルと考えることができます。
それに対し、3.3億ドルのキャッシュ創出力があるので、利回りは2.1%と計算できます。
決算書の数字を見る限り、ルルレモンへの市場からの期待はとても大きいことが分かりますが、今期の状況はどうなのかをチェックしてみます。
今期(2019/1Q1)の数字がすでに出ています。
第1四半期の売上高は6億4970万ドルと、前年から25%の増収。
営業利益は1億ドルをこえ、前年から二倍以上に伸びています。絶好調ですね。
要因として、DtoC売上が前年から62%伸びたことが大きいようです。既存店舗の売上は8%の増加。
当然、営業キャッシュフローも増えており、第1四半期は3584万ドルを稼いでいます。前年の二倍近くです。
きわめて「カルト的」と評されることも多く、独自のブランド価値を築いたルルレモン。
世界でヨガを行う人の数は年々増え続け、アメリカ合衆国だけで2890万人に達すると言われています。
10年前は1621万人だったとのことなので、10年で1.8倍近くに増加したことになります。
「ヨガ人口の増加」という追い風がルルレモンの成功に大きく寄与していることは間違いなさそう。
世界的に健康志向が高まる中、ルルレモンの成長がどこまで加速していくのか。今後もチェックしていきたいと思います。
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