今回は、投資用不動産マッチングサイト「楽待」を手がけるファーストロジックについて改めてまとめたいと思います。
代表の坂口直大氏は、システム開発会社でSEとして働いていた頃、「SE35歳定年説」を現実として感じたことから、「大家」業に注目。
しかし、不動産投資に関する情報は富裕層中心に偏っていることから、そのギャップをインターネットで埋めようというアイデアで起業したそうです。
2005年8月に会社を設立すると、2006年3月に収益物件・不動産投資のマッチングサイト「不動産投資の楽待」をリリース。
2011年8月には会員数が1万人を突破し、2012年7月には掲載する収益物件の数がナンバーワンとなります。
2015年2月に東証マザーズに上場し、2016年2月に東証一部に指定。
過去6年の業績推移を見てみましょう。
2017/7期の売上高は17億9460万円、経常利益は8億4021万円に達しています。利益率が非常に高いですね。
今回のエントリでは、ファーストロジックが展開するサービスとそのビジネスモデルについてまとめた上で、決算数値について掘り下げてみたいと思います。
ファーストロジックのメイン事業は、創業事業でもある「楽待」です。まずはそのサービス内容についておさらいしましょう。
不動産ポータルサイトは、利用目的によって「賃貸用」「住宅用」「投資用」の大きく3つに分類されますが、「楽待」は「投資用」に特化しているのが特徴。
「投資用不動産」では、自分では住まない物件を取得し、第三者に賃貸することによって家賃収入を得るのが主要な目的となります。
賃貸などを目的としたメジャーな不動産サイトは、ユーザーが利用するときだけにしか使われませんが、投資用不動産では同じユーザーが何度もリピート利用するという性質があります。
そのため、獲得したユーザーを維持のためのマーケティングコストが低くてすむとのこと。
物件の購入から管理・運営、そして売却までをワンストップで提供しているため、個人の不動産投資家にとっては「楽待」を経由すれば、不動産投資に関する一通りの活動は行えることに。
つまり、「楽待」は不動産投資家と物件情報を持っている不動産会社をマッチングするプラットフォームです。
この中で、ファーストロジックは以下のような方法で収益化しています。
一つは、物件掲載料の支払いです。
不動産会社は、「楽待」に物件情報を載せることによって広告効果を得られますから、その対価として掲載料を受け取るというのが一つ目。掲載数による月額とのこと。
二つ目は、投資家への物件「提案」機能の利用料です。
投資家会員は、あらかじめ自分がどんな物件に投資したいかという情報を登録しておくことができます。
不動産会社は、投資家のニーズにあった物件を提案することができれば成約の確率が高まりますから、それに対する対価。
また、不動産物件を売却するときには、「楽待」を通して不動産会社に査定を依頼することもできます。
不動産会社は、査定をすることによって買取物件についての情報を得ることができ、査定依頼件数に応じた報酬を受け取っています。
その他、サイト上に広告を掲載できるサービスや、リフォーム会社への一括見積もりなども提供。
非常にすぐれたビジネスモデルのように見えますし、実際に創業から高収益で成長を続けてきています。直近の状況はどうなっているでしょうか。
2018年7月期2Qの売上は4億5000万円と、前年よりは増収しているものの、前の2四半期からは減収となっています。
不動産投資ポータルサイトにとってのKPIを「物件掲載数」「会員数」「PV数」の三つにおいていますが、このうちのどれが減少しているのでしょうか。
まず、物件掲載数が63,740件と伸び悩んでいます。というか、2016/7期4Qからずっと横ばいです。
会員数は増加を続けており、10万人を超えています。
その一方、四半期のPV数は2514万と、ピーク時と比べると減少しています。月間838万PVほどということになります。
財政状態についても確認しておきましょう。
インターネット企業らしいキャッシュリッチさで、総資産27億円近くのうち、20億円ほどが現預金となっています。
20億円もの現預金の原資となっているのは、自社事業の利益(利益剰余金)13億円と、株式による調達である資本金と資本剰余金(合計で10億円ほど)です。
借入金はなし。
営業キャッシュフローは5億3383万円を稼いでいます。
設備投資の金額は限定的であり、事業で稼いだキャッシュがそのまま残っているという状況。
しかし、ファーストロジックの株価は、上場以来低迷しています。
時価総額は98億円ほど。現預金20億円を考慮すれば、実質的には78億円の評価額といえます。
それに対して4.85億円のフリーキャッシュフローを生んでいますから、「利回り」は6.2%。
成長していて収益性も非常に高いにも関わらず、ファーストロジックは市場からの期待値があまり高くありません。
背景としては、やはり成長が鈍化している点が大きな要因にありそうです。
2018年7月期上半期の数字をみると、営業利益2億円と、前年から半分以下に減少しています。
営業収益が思うように伸びず、広告などの投資額だけが増えていく現状がかいま見えます。
そもそも人口減が予想される日本社会において、「投資して儲かる不動産物件の数がいつまで増え続けるか」というのはファーストロジックにとって大きな不安要素です。
「不動産投資は儲かる」という前提があってこそ成り立つビジネスですから、そこが崩れてしまうとアクティブな投資家会員数自体が大きく減ってしまうかもしれません。
日本が直面する中長期的な人口減は、人類史上ほとんど初めての現象になります。それに対して楽観視する人が少ない、ということがファーストロジックの株価に現れているような気がします。
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