CEOエヴァン・スピーゲルが語るスナップチャットの成長戦略とは

特集

以前も取り上げましたが、動画メッセージングアプリ「Snapchat」を運営するSnap社の株価が順調に下がり続けています。

「ちょっと底打ったかな」という感じではありますが、依然として大赤字なので次の決算でまた投資家を失望させる可能性は高いと思います。

投資家にとって重要なのはSnap社が「そもそも黒字化できるのか」「できるとすればいつ黒字化するのか」という点です。

そのシナリオが明確であれば、自信を持って資金を投じることもできるかもしれません。

ということで、今回はもうちょっと具体的に「Snap社が黒字化するシナリオ」について考えてみたいと思います。

Snapの事業の状況

まずは現状を整理するために、8月10日に発表されたQ2 2017 Earnings Reportを見てみます。

DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)の推移


DAUは世界全体で1.73億人に達しています。これはFacebook(DAU13.25億人)の7分の1弱の規模。

北米では7500万人、欧州では5700万人、それ以外では4200万人が1日に一回以上Snapchatを利用しているようです。

DAUの成長率(前年同期比)は世界全体で21%、北米が23%、欧州が24%、「その他地域」が17%ほどとなっています。

次に、地域ごとの四半期収益です。

直近四半期では1億8400万ドルの収益を上げており、そのうち北米が1億4800万ドルとかなりの割合(81%)を占めています。

YoYでは+152%の伸びとなっており、地域別では北米が+127%、欧州が+267%と大きな伸びを示しています。


YoYでは大きく伸びていますが、QoQではほとんど伸びていません。それは、ユーザー一人当たりの売上高(ARPU)が伸びていないからです。

ARPU(DAUあたりの四半期収益)は、世界全体で1.05ドル、北米で1.97ドルと伸び悩んでいます。

他の地域では増加傾向ですが、どちらも1ドルに大きく満たないレベル。

ここで、ビジネスモデルとしてはかなり近いFacebookのARPUもみてみましょう。

FacebookのARPUは世界全体で4.73ドル、米国&カナダに至っては19.38ドルという水準。Snapの4.5倍ほどの収益性です。

逆に言うと、この差を縮めることができればSnap社もFacebookのような優良企業に変身することができます。

もし仮に、SnapchatのARPUがFacebookと同じ水準(4.73ドル)になれば、それだけで四半期売上高は8億ドルを超えます。

そうなれば、2017年Q2の売上原価は1.47億ドル、営業費用は2.29億ドルとなり、営業利益率は54%に及ぶ計算になります。

だから、Snap社の経営上の最重要課題は「ユーザー一人当たり売上の向上」なのは間違いないと思います。

この点に関して経営陣がどう考えているのかを「SNAP INC. Q2 CONFERENCE CALL TRANSCRIPT」から推測してみましょう。

収益化に関して

マネタイズに関してCEOのエヴァン・スピーゲルが述べています。

<簡約>

内製の自動化されたインフラを構築しているかなり早い段階ではあるが、マネタイズもいい感じに進んでいる。

我々の広告プラットフォームの採用数は増加していて、Snapの広告のうち半分以上が内製のプラットフォームおよびAPIを通じて配信されている。

我々の自動配信能力が改善するにつれ、より多くの広告主がキャンペーンを展開しており、より多様な広告が配信される結果となった。

これにより、我々はオークション形式で関係する広告を促進し、広告主たちにより良い結果とコミュニティへのより良い体験を提供しようとしている。

もう一つ付け加えると、このオークションによって広告主たちはキャンペーンを我々の在庫の中から特定の目的に合うように最適化して、ROIをさらに改善できる。

<簡約ここまで>

Snap社が自社開発した広告プラットフォームはまだ走り出してから日が浅い段階だとしています。そうだったのか。

革新による新製品の展開

トランスクリプトでは、さらにSnapが取り組んでいる新製品に関する話が続きます。

<簡約>

我々の事業を育てるベストな方法は、「レンズ」や「クリエイティブツール」、「カスタム・ストーリーズ」「マップ」などのように、我々のコミュニティが「スナップ」を作るのを促進する製品を作ることだとわかった。

我々がこれらをうまくやることができれば、我々のコミュニティがより多くのスナップを作り、見るような最高のサイクルを生み出すことができる。

<簡約>

今四半期、新しいレンズやクリエイティブ・ツールにより創造性を促進することに引き続き投資した。

現在まで、主にセルフィーを拡張する内側カメラのエフェクトに注力してきたが、今四半期にはスマートフォンの外側のカメラに特化した製品を発表した。

我々はこれを「ワールド・レンズ」と呼び、世界を認識し、インタラクティブな物体や体験をその上に描き出す基盤技術を作るために奮闘した。まだ早い段階ではあるが、ユーザーがワールド・レンズを使ってやり取りするのを見るのはとても楽しい。「dancing hotdog」はおそらく世界で最初の拡張現実スーパースターであり、コミュニティで作られたスナップの中で15億回以上見られることとなった。

<簡約ここまで>

*注:dancing hotdog

その後もトランスクリプトではSnapが投入した新製品などについての説明が続きます。

あくまでも魅力的な機能や製品を投入することでユーザーのエンゲージメントを高めることを最も重視しているようです。

こんな言及もありました。

上場後のロックアップ期間が終わるとみんな株を売るんじゃないか、と言われていましたが、創業者のエヴァン・スピーゲルとボビー・マーフィーは今年は株を一切売らないそうです。

ビジネス面での注力ポイント

その後、チーフ・ストラテジー・オフィサーであるImran Khanが話を続けます。マネタイズなどビジネス面の担当はエヴァン・スピーゲルよりも彼にあるようです。

そのImranが興味深いことを言っています。

<簡約>

エヴァンが言ったように、我々のコミュニティは信じられないようなエンゲージメントを見せており、広告事業においてとてもワクワクすることだ。例えば、ストーリー・スナップの閲覧数はかつてないほど高い。

これが重要なのは、より多くの在庫を生み出すからであり、広告主たちはフルスクリーンの動画スナップ広告のような強制的なフォーマットを求めている。

日常的に3分以上「レンズ」で遊ぶ平均的な1日あたりのアクティブユーザーは、広告主にとってスポンサード・レンズで多くのエンゲージメントを得るユニークな機会を作り出している。これらの強い成長とエンゲージメント傾向により、我々は将来、広告ビジネスを巨大化させ続けることができるだろう。

<簡約>

前四半期に触れた3つのキーエリアに引き続き注力している。

1:我々の広告をブランドとDR広告主の双方への提供を促進する

2:広告主にとって効率的なツールを開発する

3:我々の広告効果の高さを証明する

<ここまで>

Time WarnerやWarner Brothers、The Economist などがSnapの広告を採用しているようです。

Time Warner系列でCNN、 Bleacher Report、Warner Brothersは映画「Wonder Woman」の公開に合わせてSnapの広告を採用。

続いてCFOのDrew Volleroのお話。

<簡約>

今四半期、我々は3つの財務目標に向けて大きく前進したが、それは収益力のある成長過程と戦略的投資の優先づけを一緒に設計するためだ。

ちょっとリマインドすると、財務戦略において注力しているのはこれだ。

1:売上とARPUの成長を促進し、粗利率を拡大する

2:資本集約度を抑え、強いEBITDAからフリーキャッシュフローに転換する

3:内部リソースとM&Aに投資し、革新と収益化のための急速な規模を構築

<ここまで>

ちょっと和訳がやばすぎて、二つ目とかよくわかりませんが、スライドを見ていて「お、ちゃんとフリーキャッシュフローを重視しているな。マイナスだけど」と思いました。


続いて、Q&Aセッションで収益化に関するエヴァン・スピーゲルの発言。


スナップの広告のうち60%はオークションを通じて購入され、前四半期と比べて2倍以上に成長しているそうです。

そして、オークション形式こそが長期的にスナップの事業を伸ばすためにベストな形式だとのこと。

短期的には広告単価はむしろ下がるが、広告主をもっと招き入れているようです。


DAUとARPUに関するエヴァン・スピーゲルの考え

最後に、エヴァン・スピーゲルがスナップ社と今後の展望について語っている場面があったのでまとめておきます。

質問者:

エヴァン、Androidのイノベーションについて、来年のQ2まで「意味のあるインパクト」は見られないだろうと言っていたが、意味のあるインパクトとはどういうことか?

投資家にとって「その他の地域」のDAUについてある種の屈折(成長曲線の上振れ)が見たいはずだし、昨年にかけてそれはAndroidの問題によってハンデを負わされたのではないか。それこそがエヴァンが意味する「意味のあるインパクト」だったのか、違えばちょっと説明してくれ。

エヴァン・スピーゲル:

我々にとって「意味のあるインパクト」とは絶対的に「エンゲージメント」である。Androidユーザーたちにもっとエンゲージして欲しいが、その多くはカメラ機能にかかっている。

多様な携帯電話で異なるカメラのハード、異なるカメラAPIをまたがって実装するのは本当に大変なので、それが改善するのを待ち望んでいる。我々のサービスは(画像や動画を)作り出すことに注力しているからそれは本当に重要なことだ。

「その他の地域」のDAUについて言及されたから、せっかくの機会にちょっと話したいことがある。なぜなら、市場はDAUを収益機会に等しい指標として注視し続けるだろうが、だからこそ我々は地域ごとのARPUに注目してくれといつも言い続けている

ちょっとした例として、モバイル広告ビジネス業界において、同じ量のお金を稼ぐためには、アメリカやカナダで100万人のデイリーアクティブユーザーを獲得するたびに「その他の地域」のユーザーを1000万人以上獲得しなければならない。

当然だが、ユーザー数が10倍になると、同じ量のお金を稼ぐのに10倍のホスティング・コストが必要になり、事業のキャッシュフローに影響を与えてしまう。

だから、(その他の地域でのDAU拡大は)我々の事業フェーズでは単に魅力的ではないのだ。

もし次の5年から10年をちょっと見通してみると、多くの(海外)マーケットは現時点では我々の事業の構造として困難を伴うものだが、モバイル広告市場が成長し、モバイルデバイスが改善し、より高速な接続性が安く、できればユビキタスになるにつれて、より魅力的になるだろう。

その時になれば、我々はコア市場の外にも成長努力を注力する必要がある。


Snapchatは、中国を除けば、1日あたりのユーザー数が1.5億人を超える6つ程のプラットフォームの一つであり、他の5つ程のプラットフォームは時価総額の合計が1兆ドルを超える二つの企業によって所有されている

どうしてこんなことを言うかというと、我々はこれまで、常に巨大な企業と競争をしてきて生き残り続けたし、イノベーションに注力することでマーケットにおいて歴史的に我々の事業を成長させることができたことを示すためだ。

だから、我々は現時点で財務的な意味をなさない「その他の地域」については様子見のアプローチをとるが、将来的には意味が出てくるかもしれない。

我々は我々がもつ機会について考え続けるし、それについてもあなたたちに随時知らせるつもりだ。

まとめ

Snap社の経営方針として重要なポイントは次の3つだと思います。

・Snap社が最も重要視しているのは「ユーザーのエンゲージメント」である

製品のイノベーションこそが同社の競争力の源であり、今後もそれを強みとしてユーザーのエンゲージメントを獲得していく

・収益面では欧米地域でのARPUを向上させることを最も重視しており、そのために内製の広告ツールを改善し続けているが、まだ早い段階


上の3つの点に関して、エヴァン・スピーゲルや他の経営陣、Snap社という組織に期待できるかどうかが、投資家から見た判断の分かれ目になると言えそうです。