売上51%成長!戦略PRをコアに売上を伸ばす「ベクトル」2018/2期決算のまとめ

今回は、「戦略PR」をコア事業として展開する「ベクトル」についてまとめてみたいと思います。


代表の西江肇司氏は岡山県出身で、1968年生まれ。

学生時代から起業家として活動し、1993年、弱冠25歳にして(株)ベクトルを設立します。


当初はセールスプロモーション中心に事業を展開し、1998年にはPR事業を開始。

2000年にはPR事業を中心とした体制に移行し、2005年には子会社として「PR TIMES」などを設立しています。

上場したのは2012年3月と、比較的最近です。

上場以来の業績推移を見てみます。

2018/2期の売上は200億9000万円(前年+51.2%)、経常利益29億5000万円(前年+37.2%)。

前年の売上が133億円なので、1年で丸々68億円も売上が増えたことになります。


今回のエントリでは、成長を続ける「ベクトル」の事業がどのように構成されているのか、2018/2期の最新データを中心に、決算数値をまとめていきたいと思います。


ベクトルの事業内容

ベクトルグループは、本社のほかに子会社24社、関連会社5社を有しており、全体で30社からなるグループ体となっています。(2017/3月末時点)

メインの事業は、クライアント企業の広報活動を支援する「PR事業」。

PR事業

広告宣伝分野における「戦略PR」を特徴としており、顧客からの依頼に応じて、コンテンツを各メディアに配信。

あるいは、番組や記事などに露出させることで、効率的かつ戦略的に広報・マーケティング活動を支援しています。

近年は、インターネットを活用したサービスにも注力しており、スマホに特化したプロモーション動画などの企画・制作や、アドテクノロジーを活用した配信サービスも展開。

上場企業にはIR分野のサービスも展開し、市場とのコミュニケーション活動を支援。

2018/2期のプロジェクト数は1,653件にのぼり、前年から22%以上増加しています。

ニュースリリース配信事業

二つ目の事業は、子会社「PR TIMES」を中心に展開するニュースリリース配信事業です。

利用企業数は2.1万社を超え、そのうち1139社が上場企業。上場企業全体の30%以上がPR TIMESを利用しているそうです。

さらに詳細は先日まとめたノートをご参考ください。

上場企業の30%が利用!プレスリリース配信を軸に新規サービスによるクロスセルを狙う「PR TIMES」 

ビデオリリース配信事業

子会社の(株)NewsTVにて、顧客の「企業」「商品」「サービス」に関するニュースを動画コンテンツ化し、インターネットで動画配信。

ビデオリリース配信事業は、従来は「PR事業」の一部として含まれていました。

NewsTVでの年間配信実績は624本と、前年の346本と比べると1.8倍に増大しています。 

既存顧客からのリピート発注が重なったことで高成長につながったとのこと。これは良いサイクルですね。

ダイレクトマーケティング事業

2014年4月設立の(株)ビタブリッドジャパンを2016年12月に連結範囲に含めたことで、新たに報告セグメントに加わっています。

健康美容関連商品として「ビタブリッドC」などを販売。

アメリカでも「バーニーズ・ニューヨーク」で売られているそう。髪にも効くそうで、タレントとして有名な東国原氏が宣伝担当 執行役員に任命されています。


各事業の売上高を見てみましょう。

メインのPR事業が145億円(前年+34.1%)と、売上高の大半を稼いでいます。

その他、ニュースリリース配信は15.5億円(前年+25.3%)、ビデオリリース配信は8億円(前年+94.7%)、ダイレクトマーケティングは28.5億円(前年+217.5%)と軒並み成長。


ダイレクトマーケティング事業は、2016年末に連結化されているので、2017/2期は3ヶ月分の売上ということになります。

また、ベクトルは上場以来、電通への売上依存率が高い状態が続いていました。

グループ売上の成長とともに電通への依存割合は低下し、2017/2期からは10%を割っています。


セグメント毎の利益率も見てみます。

メインのPR事業は14%前後と安定した利益率。

ニュースリリース配信は12%から24%に利益率倍増。ビデオリリース配信事業は30%と高い利益率を実現しています。

ダイレクトマーケティング事業の利益率は7.5%ほど。


ベクトルが提唱する「FAST COMPANY」とは

ベクトルが展開する4事業の状況がざっくり分かったところで、今後の戦略について確認してみます。

まずは全体の見通しですが、2019/2期の目標は、売上240億円(+19.4%)、営業利益38億円(25%)という目標を立てています。

営業利益目標の内訳は、ニュースリリース配信で4.5億円、ビデオリリースで3.1億円、ダイレクトマーケティングで2.7億円とのこと。

残り27.7億円がPR事業ということになります。


大枠の戦略についても確認しておきましょう。

ベクトルでは、「広告業界のFAST COMPANY」という構想を打ち立てています。

ポジショニングとしては「ローコスト」「ミドルクオリティ」とのこと。

企業が商品を広めたいと思ったとき、テレビや新聞、雑誌などのマスメディアに広告を出稿するというのが従来の方法です。

しかし、ベクトルによる「戦略PR」では、ビデオリリース、自社ホームページ、ニュースリリース、イベント、ソーシャルメディアなど、「コンテンツ」による自己発信を追加することで、より戦略的に商品を広めることを可能としています。

その中では、戦略を立ててコンテンツ(テキスト、動画、画像)を生成し、ソーシャルメディアなどで配信するという「コンテンツワイヤー」という概念を提唱。

マスメディアによる広告宣伝と比べて、10分の1以上安い価格でモノを広められる世界を実現しています。


メディアの獲得戦略

従来のマスメディアだけではないあらゆる媒体を駆使して戦略的なPRを繰り広げるのがベクトルのPR事業です。

その中でベクトルでは、広告市場において重要な位置を占める「メディアそれ自体」を獲得していく方針も掲げています。

実際にベクトルグループでは、以下のように多様なインターネット・メディアを(主に)買収によって獲得しています。

すでに育ったメディアを買い取るだけではなく、投資によるベンチャー支援も展開しています。

不動産開発の「グローバル・リンク・マネジメント」や外食やブライダル事業を仕掛ける「一家ダイニングプロジェクト」など、メディアとは関係ない会社も多くあります。

ビットコインの取引所として有名な「ビットフライヤー」にも投資しているようです。

参考:「100社のベンチャー支援」を目指し、めちゃめちゃベンチャー投資しているベクトルの直近の投資企業まとめ


以上のような取り組みにより、ベクトルは「営業利益100億円」を当面の目標としているようです。

現在でもすでに30億円ですから、十分に実現可能な目標に思えます。


財政状況

最後に、ベクトルの財政状況をチェックしておきます。

資産の内訳

業績拡大とともにバランスシートも大きくなってきています。

総資産は186億円あり、そのうち現預金は43億円です。

買収による「のれん」も30億円、投資有価証券は50億円を計上。この二つは、ここ数年で急激に増大しており、ベクトルが他社への投資・買収を本格化していることをよく表しています。

負債と純資産

続いて、バランスシートの反対側(資産の源泉)です。

最も大きいのは利益剰余金で50億円ですが、資本金と資本剰余金の合計も48億円とかなり大きくなっています。

その他、短期借入金が28.6億円。

自社事業による利益(利益剰余金)と株式発行(資本金と資本剰余金)による資金調達を中心にしつつ、借入金も必要に応じて使っているという印象。


キャッシュフロー

最後に、現金の流れを見てみましょう。

事業によって稼ぎ出す現金(営業キャッシュフロー)は年々増大し、28億円に達しています。

一方で、投資キャッシュフローは46億円とそれ以上に大きいため、財務活動によって20億円を調達し、足りない現金を補っています。

ベクトルが一体何に46億円も投資しているのか、キャッシュフローの内訳を見てみます。

見ると、「有価証券の取得」に22億8440万円、「事業譲受」に5億8574万円、「子会社の株式取得」に17億5768万円を費やしています。


営業キャッシュフローから設備投資による支出を引いた「フリーキャッシュフロー(FCF)」は20億円にまで増加しています。

ベクトルの株価は2014年の途中から上昇を続け、時価総額は890億円に達しています。

借入金の合計が29億円、現預金が43億円なので、ネットキャッシュは14億円。つまり、ベクトルの市場価格(いわゆる企業価値:EV)は実質的に876億円と考えることができます。

2018/2期のフリーキャッシュフローが20億円なので、稼ぎ出す現金に対して43.8年分の評価額がついていることになります。