IT業界の構造改革で売上1兆円を目指す!ソフトウェアテストに特化した「SHIFT」2018/8上半期決算

今回は、ソフトウェアテストの受託サービスを手がける上場企業、「SHIFT」の最新決算についてまとめたいと思います。


SHIFTの前年までの業績推移を見てみます。

年間の売上高は81.7億円、経常利益は4.4億円という水準。売上成長率は48%以上という高い水準を続けてきています。

今回発表された上期の決算短信を見ていましょう。

売上高は58億円と、前年同期比で70%以上の成長率。

営業利益に至っては、5億4100万円を稼ぎ出し、前年通期(3億9100万円)よりもすでに大きくなっています。


一体何があったのでしょうか?

SHIFTの決算資料をチェックしていきたいと思います。



SHIFTの事業内容をおさらい

まずは、SHIFTの事業内容について会社ホームページに記載された情報から復習してみます。


SHIFTは、第三者検証、品質保証のプロ集団。

日本のIT市場(いわゆる受託開発)は14.8兆円もの規模があると言われています。

ソフトウェア開発工程の中で、非常に重要なものの一つが「テスト」という工程であり、開発工程の中の33.3%ほどをテスト工程が占めると言われています。

つまり、単純計算でおよそ5兆円もの「ソフトウェアテスト」の市場が国内だけで潜在的に存在する、というのがSHIFTのポジショニング。

しかし、現時点で実際にアウトソースされているソフトウェアテストは全体の1%(1480億円)に過ぎません。

現状としては、ソフトウェア開発者自身がテスト工程まで行う、というのが現実。

しかし、僕もプログラマーなので分かりますが、コードを書く作業と比べればテスト自体は新しい機能を生み出すわけではなく、どうしても面倒な作業という点は否定できません。(だからなるべくテストを自動化するわけですが)

自社でソフトウェアテストを整備することが難しい場合、ソフトウェアテストを外注することによって品質を高めたい、というニーズがあるのは(特にSIerの場合)頷ける話です。


収益の状況

SHIFTの事業内容について思い出したところで、現在の売上状況を整理してみましょう。

SHIFTのソフトウェアテスト事業は、ターゲットによって大きく「エンタープライズ市場」「エンターテインメント市場」の二つに分かれています。

エンタープライズ市場では、金融、流通、製造、通信など、社会のインフラとしての側面を持つ業務システムや情報システムにおいて、ソフトウェアの品質保証に関するサービスを提供。

エンターテインメント市場では、モバイルゲーム、ソーシャルゲーム、コンシューマゲームといった娯楽分野でのソフトウェアを品質保証します。

それぞれの売上推移を見てみましょう。

もともと、エンタープライズ領域における第三者テストサービスがメインであり、エンターテインメント領域の四半期売上は3億円から4億円ほどに過ぎません。

そして、エンタープライズ領域の四半期売上は28億円と、前年同期の17.4億円と比べると10億円以上、割合にして60%もの売上成長となっています。

合計すると、四半期の売上は30億円を超えており、単月での売上も10億円を超えていることになります。

エンタープライズ領域の状況としては、顧客経営層との連携が進み、関係が強化されたことと、人材獲得が進んだことによる機会損失の抑制が大きな要因とのこと。


ソフトウェアテストは、(自動テストを除いて)基本的には労働集約的な工程です。

Windows 7で検証して、こういう機能を検証したら、次はWindows Vistaで同じ機能をテストする、といった単純作業を地道にやっていくことになります。

つまり、SHIFTにとっては、ソフトウェアの品質を担保できる「テストエンジニア」をどれだけ多く獲得できるか、というのが最大のポイントとなります。

同社が抱えるエンジニア数は増え続け、上のように全体で1,850人に。そのうち905名が正社員という状態です。

なおかつ、SHIFTでは、自社のテストエンジニア採用に厳格な基準を設けています。

「テスト業務に必要な能力を備えているか」を測定する独自のCAT検定を用意し、その中で6%が合格するというもの。

非常に厳格な基準を設定しながら、2000人近いテスト人員を確保した、というのがSHIFTにおける最大の経営努力の一つと言えそうです。

また、既存顧客との関係強化も大きな要員として挙げられています。

上のグラフのように、売上規模が1億円を超える顧客の割合が大きく増加し、顧客単価は月額で24%も上昇したとのこと。


今後の見通し

今後の計画も上方修正が発表されています。

売上高は4%の上方修正で、130億円の売上。営業利益については22.2%の上方修正で、11億円の利益を計画しています。

SHIFTにとっても下半期(3月〜8月)は、顧客企業の多くにとって年度決算に当たる時期です。

そのせいもあって、基本的には売上も下期偏重の傾向が若干あるようです。

長期的な構想

ここからは、より長期的な成長戦略について。

SHIFTにとっても長期的な志は、「無駄をなくしたスマートな社会の実現」。

丹下社長は、「エンジニアを増やしてアプリを作ることに、今の世の中は邁進していて、そこも重要なのですが、実は世の中に届いていない1万2,900アプリを、どう効率良く届けるかというのも、非常に重要な課題」としています。(参考

その理由として、そもそもソフトウェアの使い勝手が悪いとか、マーケティングのやり方が悪いなど、様々な「無駄」が存在することが阻害要因になっているのではないかとのこと。

丹下社長は、SHIFTでの事業を通じて「できるだけ効率の良いソフトウェア開発」を実現し、限られた開発リソースを社会全体がもっと有効活用できるようにというビジョンを描いているようです。

現状でのIT業界(というか受託開発型のSIer業界)というのは、左のように顧客企業が大手SIer(NTTデータなど)に発注し、そこから数多くの下請け企業に開発工程をアウトソースする、という構造になっています。

下請け企業にはさらにその下請けがいて、しかもさらにその下請け...という、「多重下請構造」になっているのも大きな特徴です。

丹下社長によると、こうした多重下請構造が生じてしまう要因は「案件情報へのアクセス」「エンジニアの供給力」「品質」「予算調達能力」の4つを挙げています。

しかし一方で、4つの強みが大手SIerに集中してしまっていることに現状の問題があり、これを分解してパートナーの中で補うという構造改革ができるのではないか、という構想を描いています。


直近のアクションプラン

こうした長期的な目標はあるものの、まずは直近のアクションプランとして、以下の3つを掲げています。

一つは、アカウントの強化。顧客との関係強化ですね。

現状では、SHIFTの営業マンは6人しかいないらしく、まずはこれをもっと広げ、全てのセグメントに営業網を配備することを目指します。

そして、案件をデータベース化することで、現在の大手SIerが取っている仕事を自ら取っていき、実力のある二次受け・三次受けの開発ベンダーと組んでいくとのこと。

二つ目は、サービスの強化。

ソフトウェア開発における顧客ニーズが多様化する中で、SHIFT自身もサービスを多様化させることで、事業機会を確実に掴んでいく構え。

三つ目は、組織(基盤)の強化です。


これまで行ってきた人材採用・教育をさらに推進。40代から50代という経験豊富なメンバーも増やし、多様な人材を活用していくそうです。

日本には、IT業界に92万人の人材がおり、そのうち年に1.8万人ほどが転職するとのこと。

彼らをあらゆる手法を使って囲い込み、データベース化することを目論んでいます。


そして、中期的には既存のSIerに代替するような形で売上5000億円を目指すそうです。

現時点ではソフトウェアテストの受託、というまさに労働集約的なサービスとなっている側面が強いですが、今後はそれを「品質保証」という枠組みに広げます。

その中で、顧客や人材のネットワークを拡大していき、トップの開発ベンダーになっていく計画を立てています。

長期的には、ソフトウェア開発において世界的な分業化が進むという考えのもと、「品質保証」という領域で世界的な企業になるという目標を立てています。


正直、SHIFTがここまで野心的な企業ということは今回の決算資料を読むまでは知りませんでした。


財務状態

最後に、SHIFTの財政状態についてチェックします。

総資産は58億円ほど。そのうち現預金は19億円あり、買収による「のれん」も6.9億円ほどあります。

資産の出所である負債と純資産も見てみます。

借入金が合計で18億円ほどあります。

資本金と資本剰余金の合計は11億円ほど、利益剰余金は12億円ほど。

借入、株式、自社事業の利益という三つの資金調達源をバランスよく使ってきたことが伺えます。

上半期のキャッシュフローも見てみます。

今上半期の営業キャッシュフロー(右側)は3億3963万円と、前年と比べると6倍以上に増えています。

固定資産への投資額は1.1億円程度なので、フリーキャッシュフロー として2億円強を自由に使えることになります。

借入金の返済には1億6200万円をあてています。

SHIFTの株価は2017年の後半から急激に拡大し、時価総額661億円に達しています。

今期のフリーキャッシュフロー が4億円に達するとすると、その165倍もの水準。市場からの期待がものすごく上がっていることが分かります。


売上1兆円企業になるという長期的な野望に向けて、SHIFTが今後どんな発展を遂げていくのか。

今後も引き続きチェックしていきたいと思います。