「北の達人」から「なんぼや」まで!今週のインターネット企業5社の決算まとめ

今回は、以下の5社についての最新決算をまとめていきたいと思います。

・北の達人コーポレーション:健康食品「カイテキオリゴ」や化粧品をオンライン販売

・デザインワン・ジャパン:店鋪向けSaaS・情報サイト「エキテン」を展開

・エルテス:ソーシャルリスク(炎上)の対策ソリューションを提供

・ほぼ日:「ほぼ日手帳」を販売

・SOU:買取チェーン「なんぼや」を展開



北の達人コーポレーション:シナリオマーケティングの導入により売上・利益ともに倍増

まずは、北海道のネット通販企業であり、近ごろ注目度をあげている北の達人コーポレーションです。

売上高は53億円で、前年からほとんど2倍に増収。営業利益は14億円で、前年から2.6倍に増加しています。

この成長率はすごいですね。

北の達人コーポレーションについては先日もまとめましたが、「ニッチ市場」「定期購入」に特化してユニークな商品を投入するというスタイルです。

代表はリクルート出身!「ニッチ市場」「定期購入」に特化して急成長中「北の達人コーポレーション」

残念ながら、現時点ではまだ決算説明資料は出ていないため、決算短信を元に数字や説明をチェックしていきます。


広告の展開手法に関しては、シナリオマーケティングの導入が大きな成果をあげているとのこと。

シナリオマーケティングとは、「細かい分析により、商品のコンセプトや訴求を設定し、そのコンセプトに基づいて原稿から商品同封物までをシナリオに沿った統一性のあるものにすること」とのことで、これまで以上にブレのない広告を展開することが可能となったとのこと。

また、「美しく健康的な爪へと導く爪専用ジェル『クリアネイルショット』」では、イメージキャラクターにタレントの坂上忍さんを起用。

ユニークな商品を多数開発してきたことに加え、マーケティングの精度が上がってきたことが急成長につながったとしています。

バランスシートも見ておきます。

総資産35億円のうち、現預金が25億円。呆れるほどキャッシュリッチになっています。

借入金も2億円ほどありますが、それ以上に利益剰余金が20億円近く積み上がっています。

営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローは10億円を超えるまでに増加。

時価総額は1345億円まで上がっていますが、これは流石に高い気がします。フリーキャッシュフロー 135年分。


デザインワン・ジャパン:リラクゼーション領域を中心に伸長

続いて、店舗の口コミ・ランキングサイト「エキテン」を展開するデザインワン・ジャパンです。

上期の売上は12億円、営業利益3.5億円と、前年から24%ほどの増収増益。

エキテンのビジネスについてはこちら(6期連続増収増益!有料化率14%の「エキテン」を運営するデザインワン・ジャパン)に詳しく書かれています。

国内最大級の「オールジャンル店舗データベース」を標榜しており、487万もの店舗を掲載。

ヘアサロンや習い事、予備校、歯医者、レストラン、ショッピングに至るまで、150業種以上を網羅しているのが特色です。

「エキテン」側が自ら登録する一般掲載店舗は469万店あり、そのうち3.4%にあたる16万店舗ほどが、無料掲載店舗として(店舗側から)登録。

無料掲載店舗のうち、14%にあたる2.2万店舗が有料店舗となっており、この有料化率の高さがエキテンの強みと言えます。

売上の多くは、有料店舗による「エキテン掲載料収入(月額掲載料、ページ制作、オプション利用料)」で、四半期あたり5億7300万円を売り上げています。

残り4400万円は広告など。

国内で現時点では数少ないSaaS企業と言えます。

中でも、整体・マッサージなどのリラクゼーションジャンルのニーズは高く、有料掲載ジャンルのうちの57%を占めています。

また、その他にも口コミニーズの高い「歯医者」「ヘアサロン・ネイル」「学習塾・予備校」という3つの分野を重視しており、中でも教育系とリサイクル分野が伸びたとのこと。

バランスシートを見ると、資産30億円のうち、現預金が16億円を占めています。

借入金はなく、利益剰余金が13億円積み上がっています。

これを原資に、今後はM&Aにも注力していくと言っています。

上期の営業キャッシュフローは2億円弱(右側)で、フリーキャッシュフロー は1.44億円ほど。

デザインワン・ジャパンの時価総額は199億円あります。フリーキャッシュフローを1年換算したもの(2.88億円)の69倍なので、比較的高い評価を市場から受けていると言えます。

エルテス:営業キャッシュフローはマイナス

続いて、エルテス。独自の炎上データベースを活用した検知システムにより、ソーシャルリスクを検知することができるソリューションを提供。

なお、今期から連結決算となっているため、短信では前期との変化率は書いてありません。

売上は16億円で、前年から16%ほどの増加。経常利益は大きく減少しています。

エルテスは、決算説明会資料を出さない会社のようで、これも短信をチェックするしかありません。

バランスシートを見ると、総資産は18億円あり、そのうち12億円が現預金となっています。

借入金は1500万円ほど。

営業キャッシュフローは4150万円のマイナスです。まだ、事業でキャッシュを稼ぎ出すには至っていないようです。


ほぼ日:上期の営業キャッシュフロー8億円弱

続いて、著名なコピーライターでもある糸井重里氏が創業した「ほぼ日」。ほぼ日手帳などのオリジナルグッズを販売しています。

今回は上期の決算。

売上高は23%増ですが、営業利益は4.6%の増加にとどまっています。

ほぼ日も、まだ決算説明資料は出しておらず、短信を見てみます。

今期のニュースとしては、以下の3つがあります。

・主力商品の『ほぼ日手帳』は、例年通り9月1日より2018年版を当社ウェブ通販並びにロフト等の店頭で販売開始

・新判型『ほぼ日手帳weeksMEGA』を11月に、『ほぼ日5年手帳』を12月に投入し、それぞれ売上に寄与

・米国のAmazon.com及び中国のWeChat上にそれぞれオフィシャルショップを開設するなど、海外ユーザーの拡大に努めた

売上原価率は42%と、小売にしてはかなり低い水準です。

しかし、前年同期は38%だったことから考えると、やはり利益率は下がっているようです。

総資産は43.5億円ほどで、そのうち現預金が25.8億円。かなりキャッシュリッチですね。

借入などはなく、利益剰余金が26.5億円積み上がっているのが、まるっと残っているようです。

上期の営業キャッシュフロー(右側)は、7.9億円。フリーキャッシュフロー は7.6億円ほどで、思ったよりもキャッシュ総出力が高いですね。

ほぼ日の時価総額は現在、148億円。キャッシュ26億円を引くと、EV(企業価値)は122億円。年間フリーキャッシュフロー を15億円と考えると、8.1倍ほどの評価額です。割とお買い得。

ほぼ日の良さや成長性を測るのは、資本市場には難しいでしょうから、その分ディスカウントされているのかもしれません。


SOU :売上35%成長ペース

最後に、買取ショップ「なんぼや」を展開するSOUです。

こちらも上期の決算。

詳しい事業内容については、以前まとめたノートをご参考ください。

元ガンバ大阪の嵜本晋輔氏が創業、10年で売上226億円!買取ショップ「なんぼや」などを展開するのリユース系新規上場企業「SOU」

またしても、決算説明資料がないので、決算短信を読み解きます。

しかも、SOUは今期から連結化しているので、前期との比較もありません。

前年通期の売上は227億円なので、ペース的には成長率35.6%と言えます。

2017年10月、持ち物の査定や現在価値の管理ができるスマートフォンアプリ「miney(マイニー)」をリリースし、12月にはマネーフォワードの家計簿アプリとの連携をスタート。

「資産の一形態」として、持ち物を含めることができるということのようです。

プレスリリースより)

売上の増加要因としては、以下の二つが挙げられています。

・「なんぼや」を4店鋪、古美術八光堂を1店鋪開いたことによる仕入れの強化

・「STAR BUYERS AUCTION」の香港大会を平成29年9月、11月、平成30年2月の計3回開催し、海外売上を拡大


バランスシートを見ると、資産119億円に対して現預金が35.4億円、商品在庫が39.6億円。

かなりキャッシュリッチと言えます。

それに対し、長期借入金は16.4億円、社債も4億円ほどあります。

利益剰余金は35億円以上。

SOUの時価総額は、現時点で354億円。

上期の営業キャッシュフローは8753万円と、1億円に満たない水準です。

資金繰りにはタイミングもありますが、それほどキャッシュ創出力のある事業ではないのかもしれません。