「星乃珈琲」が業績拡大の鍵?2007年に経営統合した「ドトール・日レスホールディングス」

洋麺屋五右衛門などを運営する「日本レストランシステム(株)」と「(株)ドトールコーヒー」の株式移転により、2007年10月1日付で経営統合し、「(株)ドトール・日レスホールディングス」が設立されました。

この統合により、「ドトールコーヒー」「エクセルシオール」「洋麺屋五右衛門」のほか、「星乃珈琲店」「MORZART」など、40を超える飲食ブランドを展開するグループとなりました。

今回の記事では、「ドトール」「日レス」両社の歴史や特徴をまとめた上で、財務状況と今後の事業戦略についてまとめています。


日本のコーヒーチェーンの先駆け「ドトール」

ドトールコーヒーは、東京オリンピック直前の1962年にコーヒー豆の焙煎・卸業として設立されました。

その後、1972年に「カフェコロラド」、1980年「ドトールコーヒーショップ」を出店し、カフェ業態を開始。

1993年には株式を店頭公開し、業績拡大を加速します。

1996年には「カフェ マウカメドウズ」、1998年には「ル カフェ ドトール」、1999年には「エクセルシオール カフェ」を出店するなど業態も拡大していきます。

2004年には、ドトールコーヒーショップ国内1,000店舗を達成。


そして、2007年に日本レストランシステムと合併。

意外と知られていないドトール(doutor)の意味は、ポルトガル語で「医者」「博士」というもの。英語でいう「doctor」とほぼ同じ意味なのです。

創業者の鳥羽博道氏がブラジルのコーヒー農園で働いていたころ、下宿していた場所が「ドトールピントフェライス通り85番地」であったことから、その後日本に帰りドトールを設立した際にそのころの気持ちを忘れないために名づけたそうです。

企業理念は「一杯のおいしいコーヒーを通じて、お客様にやすらぎと活力を提供する」です。

喫茶店コーヒー300円の時代に破格の新業態を導入

ドトールは当時、ユニークな会社でした。


戦後、喫茶店のコーヒーは嗜好品であり、「ドトールコーヒーショップ」を出店した1980年当時の一般的なコーヒーの値段は300円程度でした。

ドトールは、ここに「セルフサービス」という業態と、150円という価格を持ち込んだのです。

この価格付けの背景には、毎日お客様の負担にならないコーヒー1杯分の価格はいくらだろう、という考え方から設定されました。

この「お客様の立場に立った発想」は、創業者鳥羽氏の、そしてドトールの基本精神として徹底的にしみわたっています。

この発想はコーヒーカップにも生かされました。

今では珍しくありませんが、当時では画期的だった陶器のカップを採用。

フルサービスの喫茶店のカップが300円前後の時代に、1個2,000円もするボーンチャイナを使用するという徹底ぶりでした。

一方で、低価格でも事業として成立するように標準化、効率化を徹底。

「カウンターで注文⇒商品を受け取って⇒自分で席を探して珈琲を楽しむ(もしくは持ち帰る)」という流れはどこの店舗でも統一されています。

開店当初から西ドイツ製のコーヒーマシンを使用し、 フルサービス形式の喫茶店にも劣らない質のコーヒーをアルバイト店員が提供できるように仕組化しました。

多ブランド展開が特徴の「日本レストランシステム株式会社」

一方の「日本レストランシステム」は、1973年にショウサンレストラン企画(株)として設立されました。

翌年の1974年からはインドカレー店「ボルツ」、和食スパゲッティ専門店「洋麺屋五右衛門」の出店を開始しています。

1981年には「ウィーン菓子モーツアルト」を自由が丘に出店。

2003年には東証二部へ上場し、2007年には東証一部に指定。その後、ドトールコーヒーと経営統合を果たしあたのは前述の通りです。


「日本レストランシステム」を支える大きな柱は『多ブランド展開』と『一貫システム』の二つ。

食ブームなどの変化を柔軟にとらえ、幅広い選択肢の提供を行うことが重要だと考えているようで、現在では約40のブランドを展開しています。

代表的なのは以下の4つ。

①洋麺屋五右衛門

お箸で食べるパスタ専門店で、五右衛門釜でスパゲッティを茹で上げます。

使用するスパゲッティ、オリーブオイル、チーズなどはイタリア直輸入と素材にこだわり、独自の創作パスタを提供。

②星乃珈琲店

一杯ずつ丁寧に淹れたハンドドリップコーヒーにこだわる喫茶店で、落ち着いた雰囲気の店内でくつろぎの時間を提供。

ふわふわのスフレパンケーキが人気。

③MORZART

モーツアルトが流れる店内で、手作りのケーキとくつろぎの時間を楽しめます。

インド直輸入の最高級ダージリンティーも提供。

④卵と私

たっぷりの卵でふんわり仕上げたオムライスの専門店で、鮮やかな黄色の卵からバターの香りが楽しめます。

ソースのバリエーションが豊富で、グラタンタイプやシチュータイプなど様々なオムライスを提供。

日本レストランシステムが強みとする「一貫システム」

数多くのブランドを展開しながら、効率の良いビジネスを展開するのは簡単なことではありません。

日本レストランシステムでは、食材の仕入れから加工、配送、店舗のデザイン、メンテナンスに至るまで一貫して自社グループで行い、効率的なシステム化を図っています。


このシステムによって、消費者の外食に対するニーズがどのように変化しても、消費者に満足してもらえる「味」と「サービス」を提供できる体制が確立しています。


なぜ統合したのか?統合の目的は、相互補完効果と規模の拡大

2007年10月、日本レストランシステムとドトールコーヒーは経営を統合しました。

その目的はざっくり言うと、両者の強みを組み合わせ、多様化する期待に応えるサービスの展開を図ること。

具体的には「業態開発力」と「店舗開発力」、「直営」と「フランチャイズ」、そして両社の「ブランド力」などを相互に補完し、「飲」と「食」の融合を果たすことが狙いです。

そして新しい外食文化を発信し、エクセレント・リーディングカンパニーとしての地位確立を目指しています。


ただ、それでも企業規模は売上高1,200億円程度で、国内外食のトップ10位からは外れています。

日本市場の人口が減少する中で、海外展開加速とともに規模の拡大は企業経営にとって重要な要素となっています。

実際に、上位企業はM&Aによる事業拡大を加速させています。

業績は安定的に推移、営業利益率は改善傾向

売上高、営業利益ともに安定的に成長しています。

売上高の拡大に伴い、営業利益率も改善傾向です。

収益性の改善には、以下に述べる平均客単価の高い店舗の増加による利益ミックスの改善があるようです

ブランド別店舗の売上構成のバランスはよい、最近は星乃珈琲店の増加が著しい!

次に店舗の構成を見てみましょう。

主要ブランドの売上構成はバランスが良いものとなっています。

街でよく見かけるドトールですが、売上ではそれほどでもないのが意外です。

やはり、レストランであ洋麺屋五右衛門などとの単価の差が大きいのではないでしょうか?

次に店舗数はどのように変化しているのでしょうか?

まずは全体の店舗数の推移を見てみましょう。

店舗数は安定的に拡大していますね。

14/2期に1,861店だったのが、17/8期末には1,963店に102店増加してます。

平均すると1か月に2店舗出店のペースです。 

次にブランド別の増加ペースを見てみましょう。


驚くことに、主に増えているブランドは「星乃珈琲店」と「ドトール」です。

「星乃珈琲店」は、14/2期末の87店が17/8期末には191店と104店増加しています。

「ドトールコーヒー」は、14/2期末の1,095店が1,126店に31店増加しています。

ただ、店舗の増加率では「星乃珈琲店」が2.2倍に増加したのに対して、「ドトールコーヒー」は2.8%増加したにすぎません。

変化としては、「星野珈琲店」の増加が目立ちますね。

平均客単価の高い店舗の増加が利益率の改善を牽引している可能性

それでは、「星乃珈琲店」の増加は業績面へどのような影響をもたらしているのでしょうか?

ドトール・日レスホールディングスは持株会社ですので、傘下の「株式会社ドトールコーヒー」と「日本レストランシステム株式会社」それぞれの業績を見ることができます。

大きく店舗数を増やしている「星乃珈琲店」は日本レストランシステムに側の事業です。

利益率の観点からは、星乃珈琲店や洋麺屋五右衛門を有する「日本レストランシステム」はドトールコーヒーやエクセルシオールを有する「ドトールコーヒー」に比べかなり高い状況なのです!


ドトールコーヒーの営業利益率が5%程度なのに対して、日本レストランシステムは10%を超える営業利益率です。

主力の「洋麺屋五右衛門」「星乃珈琲店」の単価が高いことが要因だということが推察できます。

今後も、「星乃珈琲店」の積極出店が続くことが予想されます。

ドトールコーヒーの店舗数は1,126店(17/8期末)に対して、「星乃珈琲店」はたった191店(17/8期末)しかありませんので出店の余地は大きいといえましょう。

平均客単価は、「ドトールコーヒー」が400円程度なのに対して、「星乃珈琲店」は800円以上で顧客層も重ならない点もあり、ドトールコーヒーがすでに出店している商圏にも出店することができるメリットもあります。


財務体質は健全で今後の出店拡大を進める余力は十分

資産サイド

業績の安定成長に合わせて資産も増加傾向で推移しています。

現金同等物は月商3.7か月分で十分と言えましょう。

ドトールコーヒーなどは日銭が入ってくる業態であることを考えるとむしろ十分すぎる状況でしょう。

負債、純資産サイド

自己資本比率は80%程度と高水準で大変強固な財務体質です。

むしろ、有利子負債を増やして財務レバレッジを高めることでROE(6.2%、17/2期)を高めることも視野にすべきでしょう。

キャッシュフロー

営業CFの範囲で投資を行っており、フリーCFはプラスが安定的に続いています。

現金同等物が高水準な背景にはこの安定したフリーCFがあるのでしょうね。


株価は2013年から上昇トレンドが続いている!

16/2期に減益決算となった局面を除いては安定的に増益決算が続いていたこともあり株価は安定的に上昇傾向にあります。

30/2期予想のPERは19倍、PBRも1.1倍と株価水準は妥当レベルにあるのではないでしょうか?

ただ、平均客単価が「ドトールコーヒー」の2倍の「星乃珈琲店」の出店余地は大きくいことから、今後も「星乃珈琲店」の出店が業績拡大を牽引するでしょう。

これからも、街でも「星乃珈琲店」を見かけることが増えそうです。

今後も、ドトール・日レスホールディングスに注目していきたいと思います。