ロボット手術のリーディングカンパニー!先端技術企業でありながら消耗品ビジネスで業績を伸ばす「インテュイティブ・サージカル」

インテュイティブ・サージカル(NASDAQ:ISRG)はロボット支援低侵襲外科手術技術の世界的リーダー企業。 



低侵襲とは手術などで必要最低限の傷で済んだり、治療における患者の身体の負担(侵襲)を軽減すること。


つまりロボット支援手術によって高解像度で正確に把握しながら手ブレをおさえるなど高精度の手術ができるため傷が浅くすんで患者の術後の回復が早まり、入院日数を短縮する(病院経営コストを軽減する)という患者・病院・ISRG三方良しの関係を構築している。


インテュイティブ・サージカルのロボット手術支援製品「da Vinci」を使った高精度の動きを分かりやすくPRする以下の「ぶどうの手術」の動画をみてもらえば手ブレとは無縁なのが分かるはずだ。


先進国における高齢化が進む(つまりガン患者数が増加する)一方で、高度な医師不足が深刻になる中で、外科医が高齢になっても現役で活躍しやすいロボット支援技術は普及していきそうだ。

売上高も順調に伸びている。2017年には世界中で da Vinci を使った手術が87万7000件と前年比16%に増加。2018年は11~15%の増加を見込んでいる。


それではインテュイティブ・サージカルのビジネスモデルの要点と、リスクに関してふれていく。


インテュイティブ・サージカルのレーザーブレードビジネスモデル


インテュイティブ・サージカルのロボット手術支援ロボット da Vinci(ダヴィンチ) の最新モデルの本体価格は2~3億円と高額(本体全体の平均販売価格154万ドル)だ。それゆえ安価なロボット手術支援ロボットの開発を進める他社もダヴィンチのシェアを奪おうと動いている。


これだけ高額な手術支援ロボットを安定して売っていくのは容易なことではなく、売上サイクルもボラティリティがありそうだ。


しかし、インテュイティブ・サージカルの売上の中身を見てみると、da Vinci 本体の売上よりも da Vinci を使った手術に使う消耗品やサービスなどが71%を占める。

仮に本体が全く売れない年でも、7割と売上構成比率の高い消耗品・サービス収入が業績を安定させ、売上の予測可能性の高さから長期的ビジョンに基づく次なるR&Dにキャッシュを回していくことが可能だ。


このような da Vinci のロボットアームに装着可能な数十種類の鉗子(手術器具)が1本あたり十数万もするがこれも消耗品として安定的に売上に貢献する。


また高額な本体の年間メンテナンス費用などの売上比率が高く、本体が稼働している限り生み出される収入源となる。 そのため、競合が増えたところで本体価格を引き下げ、こういった消耗品で稼ぐ比率を高める戦略的オプション、つまりレーザーブレード・ビジネスモデル(本体を安く売り、消耗品や保守サービスによって継続的に利益を上げる商法)に移行することも可能だろう。(本体価格が競争上の問題となるなら)


このように本体以外の業績推移はとても安定している。



米国が主要市場だが米国外も伸びている。


泌尿器科(前立腺がん等)、消化器科(胃がん等)、婦人科(子宮がん等)、呼吸器外科・胸部外科(肺がん等)と適用範囲をひろげている。


インテュイティブ・サージカルにとってのリスクとは?迫り来る競合企業たち


他社に先駆けて完成させた手術支援ロボットで市場を開拓してきた先行者として認知されてきたインテュイティブ・サージカルだが、その高額な本体価格に対して「もっと安価に」手術支援ロボットを提供すると他社も参入しはじめている。


検体検査装置大手のシスメックスと川崎重工業が組んだ医療用ロボットの合弁会社「メディカロイド」が2013年に設立されダヴィンチの対抗馬を開発中。


自動車部品メーカーのデンソーが自動車部品で培ってきた技術を応用した手術支援ロボット「iArmS」(アイアームス)


ドイツのロボットメーカーのKUKA(クーカ)の医療用協働ロボット「LBR Med」


ベンチャーのリバーフィールドの空気圧制御による手術支援ロボット「EMARO」


など、多くの対抗馬が出現しているが、薬事承認等を得るまでに時間がかかり、その間にダヴィンチは有効性を示しながら保険適用の範囲をじわじわとひろげて先行している。


すでに da Vinci は前立腺がん、一部の腎臓がんでも保険が使えるようになり、胃がんなどでも臨床試験を進めている。


高額で導入しにくいと躊躇する病院もあるが、本体に関しても最高スペックのフラグシップモデルと安価なモデルとラインナップを充実させている。



つまり、競合他社が「価格を引き下げた」da Vinci対抗馬を出してきたとしてもすでに戦う準備ができている。


すでに実績のあるものを採用したがるのが世の常。特に特筆すべき競合リスクは見当たらないように思われたが、筆者がインテュイティブ・サージカルに投資している上で、最も不気味なリスクはAlphabet(Googleの親会社)の医療子会社Verilyの存在だ。


Verily(ヴェリリー・ライフ・サイエンシズ)はちょうど本日「網膜をスキャンするだけで心疾患を70%の正確性で予測(従来の手法は72%)できる技術」を発表している。30万人近くの患者のデータを用いた機械学習の成果だという。


そんなVerilyとジョンソン・エンド・ジョンソンの医療機器子会社エチコンとの合弁会社であるVerb Surgical(ヴァーブ・サージカル)が da Vinci よりもかなり安価で小型な、クラウドベースで機械学習によるサポートを提供する手術ロボットを開発中だ。


明らかに da Vinci をディスラプトするコンセプトで開発されており、外科手術を広範囲には変えているとはいえない da Vinci よりも広範囲な外科手術をカバーできるような製品を開発しているという。


da Vinci は腕のよい外科医の繊細な動きを補助するが、Verbはさらに認知能力まで補助することで da Vinci を上回ろうとしている。たとえば機械学習によって人体構造を学んだ人工ニューラルネットワークが腫瘍の境界などを画面でリアルタイムに提示してくれるようなものを開発しているという。


ただ機械学習というものはGoogleがリーディングカンパニーではあるもののGoogleの専売特許ではなく、多くの企業が取り入れている。すでに膨大な手術実績のある da Vinci が手術データを活用するポジションとしては優位性のあるポジションにいるはずで、機械学習にとって重要なのはデータをどれだけ持っているかで、止まった標的になることはないのではないか。


すでに完全無人でロボットのみで遠隔手術を行う実験もしているなど、インテュイティブ・サージカルは現状維持で終わるつもりはない。


インテュイティブ・サージカルの業績の補足データ

安定したフリーキャッシュフロー。自社株買いも行うが、競合他社が追随する前に先行投資を行っている。

売上におけるR&Dの比率を増加させている。競合他社の動きも注視すべきで利益率をあげるフェーズではなく競争に備えた先行投資がまだまだ必要だろう。



消耗品+サービス収入が安定しているとはいえ2014年のように本体が売れないと株価も弱気になる。が、本体のパイプラインも安定し再び株価も上昇トレンドを再開。

 


株価に過熱感があるが、圧倒的に先行した先行者利益の恩恵をうけている企業。


da Vinci は、もともとは1980年代後半に米国陸軍がDARPA(Defense Advanced Research Projects Agency: アメリカ国防高等研究計画局)に開発を依頼していたプロトタイプを1995年に引き継いでIntuitive Surgicalが設立され、1999年に完成させた。


ロボット支援手術は普及する余地があり、あとは競争環境がどれだけ激化するか次第か。


<記事のスタンスに影響する情報開示: 筆者は 2018/2/20 時点でIntuitive Surgical(NASDAQ:ISRG)をとりあえずわずか6株保有しており、強気でも弱気でもないが次回決算まで売却の予定はない。本記事はビジネスモデルや業績の定点観測を目的としたものであり、読者に投資を推奨するものではない。>


*アメリカ部通信*

とても…独占企業が好きだ。ピーターティールが「競争するな。独占しろ」とスタートアップに助言するように、投資家としてもできるだけ独占あるいは複占、せめて寡占企業(あるいはそうなりそうなもの)をチョイスしたい。


そういえば、市場全体としても興味深いデータがある。


米国企業のアニュアルレポートに頻出していた「競争」という単語が年々減少。


あくまで単語の話だが。 実際、競合他社の買収や合併などで米国上場企業も20年前から半分近くまで減っているし淘汰・市場寡占が進んでいる。ITバブルの頃とくらべて米国企業の利益率は高まっている。


Source: https://www.economist.com/news/finance-and-economics/21731441-new-measure-growing-problem-what-annual-reports-say-or-do-not-about