SBIホールディングスのM&Aの歴史

SBIホールディングス

日本最大のネット金融機関といえばSBIホールディングスですが、元々はソフトバンクの子会社のソフトバンク・ファイナンスグループの子会社のソフトバンク・インベストメントという形で1999年7月に設立されました。

そして2000年12月に、VCの運用などのベンチャーズ・インキュベーションとして時価総額1358億円で上場しています。

上場後は、株式交換によって会社を買収したり、子会社化した企業をIPOさせたり(IPO先は日本だけでなく韓国や台湾、香港など様々)、SBIの子会社同士で会社を売買したり、合弁企業を作るなど、様々なM&Aを国内外で行なっています。

これらのM&Aがとても興味深かったため、今回は、SBIホールディングスのM&Aの歴史についてまとめてみようと思います。

(SBIホールディングスによるマイノリティ出資やSBIのファンドからの出資については今回は触れません)

日付 会社名 JVの相手 業種
2000年6月 モーニングスター IPO 日本 メディア(金融)
2000年9月 イー・トレード IPO 日本 証券
2000年12月 SBI IPO 日本 証券
2001年8月 ソフトバンク・フロンティア証券 IPO 日本 証券
2001年2月 Cheung Wah 買収 香港 コンサル
2001年4月 デジコード JV ディジット
創造生活
メディアポータルジャパン
ウィナ
日本 インターネットバーコード
2001年5月 JV サイエンティア・ヘルス・グループ 日本 バイオ
2002年6月 あおぞらアセットマネジメント 買収 日本 資産運用
2003年2月 Lai Fai International Holdings IPO 香港 投資
2003年2月 アルスノーバ・キャピタル・リサーチ 買収 日本 投資顧問
2003年6月 イー・トレード 買収 日本 証券
2003年9月 ファイナンス・オール IPO 日本 メディア(金融)
2003年10月 ワールド日栄フロンティア証券 買収 日本 証券
2003年12月 日商岩井証券 買収 日本 証券
2004年1月 ファイナンス・オール 買収 日本 メディア(金融)
2004年4月 アスコット 買収 日本 貸金
2004年4月 スワン・クレジット 買収 日本 貸金
2004年4月 SBIキングウェイ JV Kingway 香港 コンサル
2004年7月 モーニングスター 買収 日本 メディア(金融)
2004年8月 エース証券 買収 日本 証券
2004年10月 ベリトランス IPO 日本 決済
2004年11月 イー・トレード証券 IPO 日本 証券
2005年1月 フィデス証券 買収 日本 証券
2005年1月 エスビーアイ債権回収サービス JV 日本 債権回収
2005年2月 キャナウ JV セプテーニ 日本 広告代理店
2005年2月 ネクシィーズ・トレード JV ネクシィーズ 日本 金融仲介
2005年3月 E TRADE KOREA 買収 韓国 証券
2005年5月 Moringstar IPO 米国 メディア(金融)
2005年5月 Lai Fai International Holdings 買収 香港 投資
2005年8月 エース証券 売却 日本 証券
2005年9月 イー・ゴルフ 買収 日本 メディア(ゴルフ)
2005年10月 住信SBIネット銀行 JV 住友信託銀行 日本 銀行
2005年11月 ネクシィーズ・トレード 売却 日本 金融仲介
2005年11月 ジェイシーエヌランド 買収 日本 ASP
2006年4月 イーホームズ 買収 日本 住宅監査
2006年5月 SBI損害保険 JV あいおい損保 日本 損害保険
2006年5月 SBIフューチャーズ IPO 日本 先物
2006年8月 JV ソフトバンク 日本 メディア(金融)
2006年8月 ゴメス・コンサルティング IPO 日本 ウェブサイト構築
2006年10月 eCURE JV 三和インベストメント
シーフォーテクノロジー
日本 セキュリティ
2006年11月 インターネット総合研究所 買収 日本 SIer
2006年12月 シーエヌエー 買収 日本 広告代理店
2007年2月 SBI Robo JV 日本 サーチエンジン
2007年2月 セムコーポレーション 買収 日本 不動産担保ローン
2007年2月 E TRADE KOREA IPO 韓国 証券
2007年4月 株式新聞社 買収 日本 メディア(金融)
2007年4月 ゴルフ三昧 買収 日本 メディア(ゴルフ)
2007年5月 トレンダーズフィナンシャル 買収 日本 SIer
2007年5月 トレードウィン 買収 日本 SIer
2007年8月 SBIプロスパー JV プロスパー・マーケットプレイス 日本 ソーシャルレンディング
2007年9月 AAフィナンシャル・システム 買収 日本 自動車・決済
2007年9月 リビングコーポレーション 買収 日本 不動産
2007年10月 オートバイテル・ジャパン 買収 日本 自動車
2007年10月 SBI船井ビジネスアライアンス JV 船井本社 日本 コンサル
2008年3月 JV ジェイ・エー・エー 日本 自動車金融
2008年5月 SBIアラプロモ JV コスモ石油 日本 バイオ
2008年7月 JV HotGrinds, 日本 セマンティックウェブ
2008年8月 SBI証券 買収 日本 証券
2008年9月 E TRADE KOREA 売却 韓国 証券
2009年3月 懸賞TV 買収 日本 メディア(懸賞)
2009年5月 「仲介マーケット」「インターネットメディア」「不動産サービス」 売却 日本 メディア(金融)
2009年6月 日本インベスターズ証券 買収 日本 証券
2009年6月 ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン JV ダウ・ジョーンズ 日本 メディア(金融)
2009年6月 JV medac 日本 バイオ
2009年7月 リアルマーケティング・ショップ 買収 日本 金融仲介
2009年8月 SBIフューチャーズ 買収 日本 先物
2009年10月 「携帯電話レンタル事業」 売却 日本 レンタル
2009年11月 SBIゲオマーケティング JV ゲオ 日本 金融仲介
2009年12月 ユナイテッドワールド証券「ロシア取次事業」 買収 日本 証券
2010年2月 サーチナ 買収 日本 メディア(金融)
2010年2月 SBIアクサ生命 買収 日本 生命保険
2010年5月 KTIC GLOBAL INVESTMENT ADVISORY 買収 韓国 ファンド
2010年6月 ジー・ワンクレジットサービス 買収 日本 カード
2010年7月 KTIC Holdings 買収 韓国 ファンド
2011年1月 ゴメス・コンサルティング 買収 日本 ウェブサイト構築支援
2011年1月 SBI-LGシステムズ株式会社 JV LG CNS 日本 SIer
2011年4月 ディールメート 買収 日本 クーポン
2011年6月 OBIBANK 買収 ロシア 銀行
2011年6月 上海新証財経信息咨 JV 中国証券報社 中国 メディア
2011年7月 シーフォービジネスインテグレーション 売却 日本 SIer
2011年11月 SBIモーゲージ IPO 日本 不動産(住宅ローン仲介)
2011年12月 Startup Laboratory JV Klab Ventures 日本 VC
2012年2月 日本震災パートナーズ 買収 日本 少額短期保険
2012年3月 ベリトランス 売却 日本 決済
2012年3月 SBIアラプロモ 一部売却 日本 バイオ
2012年6月 JV 蘇州益安生物科技 日本 バイオ
2012年7月 ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン 売却 日本 メディア(金融)
2012年7月 Strategi Bisnis Infoyasa JV CORFINA MITRAKREASI インドネシア メディア(金融)
2012年9月 SBIジャパンネクスト証券 買収 日本 PTS
2012年12月 SBI AXES IPO 韓国 決済
2012年12月 Quark Pharmaceuticals 買収 イスラエル バイオ
2013年3月 現代スイス貯蓄銀行 買収 韓国 銀行
2013年3月 いきいき世代 買収 日本 少額短期保険
2013年3月 JV Dawani Group Holding バーレーン バイオ
2013年3月 SBIクレジット 売却 日本 カード
2013年7月 ピーシーエー生命保険 買収 日本 生命保険
2014年8月 SBIモーゲージ 売却 日本 不動産(住宅ローン仲介)
2014年12月 SBIライフリビング 売却 日本 不動産
2015年1月 ビジネスサーチテクノロジ 買収 日本 ソフトウェア
2015年2月 SBI Finansa Private Equity Partners JV Finansa タイ 総合金融
2015年4月 ブックフィードキャピタル 買収 日本 投資
2015年4月 SBI Thai Online Securities JV Finansia Syrus Securities タイ 証券会社
2015年10月 ウエルス・パートナー 買収 日本 PB
2015年12月 SBIボンド・インベストメント・マネジメント JV Pacific Investment Management アメリカ 資産運用
2016年1月 medac 買収 ドイツ バイオ
2016年1月 photonamic 買収 ドイツ バイオ
2016年2月 プノンペン商業銀行 売却 カンボジア 銀行
2016年5月 JV SYZ Asset Management 日本 資産運用
2016年5月 SBI Ripple Asia JV Ripple Labs アメリカ ブロックチェーン
2016年6月 JV Gold Bullion International 日本 金の取引
2016年9月 JV Carret・CIG 日本 リサーチ
2016年9月 日本少額短期保険 買収 日本 少額短期保険
2016年12月 JV 窪田製薬ホールディングス 日本 バイオ
2016年12月 SBIネオファーマ JV ネオファーマ 日本 バイオ
2017年7月 YAR Bank 買収 ロシア 銀行
2017年8月 SBI Thai Online Securities 買収 タイ 証券


SBIのM&Aにおける3つの歴史

SBIのM&Aの歴史には、大きく3の時代があるようです。


まず、第一期。(創業〜2005年あたり)

第一期では、ネット証券を買収をして日本最大のネット証券となり、子会社を上場させています。

ネット証券では、イー・トレード、ワールド日栄フロンティア証券、日商岩井証券、フィデス証券などを立て続けに買収しています。

また、ファイナンス・オールというメディアを持っており、これもSBIネット証券を日本最大のネット証券にした理由の一つとされています。


この時期にIPOしたのが、メディアのファイナンス・オール、決済のベリトランスやウェブサイト構築のゴメス・コンサルティング、先物取引所のSBIフューチャーズなどです。

ただこれらは、第二期に株式交換によって再度子会社化されます。



次に、第二期。(2005年〜2011年あたり)

第二期は、事業領域の拡大を目指した買収やJV、「SBI」と冠する企業の整理を行なっています。

第一期で、ネット証券における地位を確固たるものとしたSBIは、ネット証券以外の金融領域へ非金融領域への進出も活発化させていきます。


ネット証券以外の金融領域への進出では、2005年10月に銀行領域において住信SBIネット銀行を住友信託銀行と設立したり、2006年5月に損害保険領域においてSBI損害保険をあいおい損保と設立、2007年9月にソーシャルレンディング領域においてSBIプロスパーをプロスパー・マーケットプレイスと設立、債権回収領域においてエスビーアイ債権回収サービスなどを設立しています。


非金融領域への進出では、SIerのインターネット総合研究所やトレイダーズフィナンシャル、不動産のリビングコーポレーション、不動産担保ローンのセムコーポレーション、自動車のオートバイテル・ジャパン、ASPのジェイシーエヌランド、住宅監査のイーホームズ(2005年に日本を騒がせた耐震偽装問題を公表)などを買収しているほか、ネット広告代理店をセプテーニとJVで設立しています。


中でもメディアに関しては、ファイナンス・オールを始めとして、モーニングスターや懸賞TV、イー・ゴルフなどを積極的に行なっています。

「SBI」と冠する企業の整理では、SBI証券やSBIフューチャーズ、ゴメス・コンサルティング、SBIネットシステムズ、SBIパートナーズなどを「SBI」冠する企業で上場させていた企業を"株式交換"によって立て続けに子会社化させていきます。


そして第三期(2011年〜現在)

第三期では、国内金融事業における選択と集中、海外進出を目指した買収やJV、バイオに関する買収・JVを盛んに行なっています。


国内金融事業における選択と集中では、住宅ローン仲介のSBIモーゲージを上場させたのちPEのカーライルに売却したり、上場していた決済のベリトランスをデジタルガレージに、決済のSBI AXESが韓国でIPO、不動産のSBIライフリビングをアドバンテッジパートナーズに売却していきます。(ファンドの投資先が台湾に上場することもw)

一方で、少額短期保険の日本震災パートナーズ・いきいき世代・日本少額短期保険などを立て続けに買収していきます。


海外進出を目指したものでは、銀行と証券を中心に、韓国・インドネシア・カンボジア・アメリカ・ロシア・タイに現地企業とJVを作ったり、買収をしたり、マイノリティ出資をしています。


バイオに関するものでは、出資をしたバイオ企業とJVを作ったり、海外のバイオ企業を買収しています。

例えば、Quark Pharmaceuticalsやmedac、photonamicなどです。

また、SBIのバイオに関するVCがいくつかあり、そこから様々なバイオ関連企業が上場しています。

今後のSBI

最後に、今後のSBIについて、触れてみたいと思います。

SBIでは、日本郵政の親子上場を受けて、親子上場が容認されたとして、5社のIPOを検討をしているそうです。


ただ、第二期でも見たように、一度上場した企業を株式交換によって子会社化したという歴史を複数持っているほか、日本以外に上場させているという歴史もあります。

果たして今後、SBIがどのようにやっていくのか、(FinTechファンドも含めて)楽しみです。