2022年は逆風の年だった。長く続いた上り相場が終わり、S&P500指数は通年で約20%の下落。ハイパーグロースともてはやされた銘柄も、多くが急落して終わった。
年が明け、頭に浮かぶのは「今年はどんな一年になるか?」という問いではなかろうか。そこで今回は、大手機関による分析を三つご紹介しよう。
JPモルガン「短期的には軟調」
やや悲観的な見通しを立てるのがJPモルガンだ。グローバルリサーチヘッドのマルコ・コラノヴィックは次のように語る。
「株式市場にとって良いニュースと悪いニュースがある。良いニュースは、年内に中央銀行は方針の見直しを迫られ、年末までに資産価格が復調に向かうであろうこと。悪いニュースは、景気悪化や失業率上昇、市場の混乱、資産価格の下落、インフレ率の低下がその前提として必要であることだ」
2023年、世界経済の成長率は1.6%に落ち込むと予想。引き続きの金融引き締めと、冬場における中国でのCOVID拡大、欧州の天然ガス問題などが経済の重石とみる。
世界全体が景気後退にあえぐ差し迫った状況にはないが、米国は2024年までに景気後退に直面しそうだという。今年前半、S&P500は2022年の安値を試す展開になるというのも、彼らの予想だ。
その後は中央銀行の方針転換がきっかけとなり、年の後半にかけて資産価格の復調を見込む。2023年末のS&P500は4,200ドルを予測する。
ゴールドマン「70年代の高インフレとは違う」
ゴールドマンサックスによる2023年の予想経済成長率(世界)は1.8%。米国経済の力強さと欧州の景気後退、中国の”凸凹な”経済再開を主な要因に挙げた。
2023年の後半、コア個人消費支出インフレ率は米国で5%から3%に低下し、米国経済は景気後退を「辛うじて避ける」と予測。年内の金利引き下げは見込まず、最大で5〜5.25%まで拡大する見通しを立てる。
足元の高インフレは、1970年代のそれとは異なると主張。理由の一つ目が、逼迫する労働市場だ。パンデミックからの経済再開で求人数が急増したが、過剰雇用にはつながっていない。
二つ目の要因は、サプライチェーンと住宅価格の正常化だ。ともに1970年代には見られなかったと指摘する。そして最後に、長期的なインフレ率にはさしたる影響がないと分析。足元のインフレ背景にはコモディティ価格の急騰があり、永続的なものではないという。
ブラックロック「インフレとともに生きる」
世界最大の投資運用会社として知られるブラックロックは「中央銀行は故意に不況を引き起こそうとしている」と表現。不況が来ることが予め分かっている稀な状況にあると指摘した。
新たな経済では、「モノ」が制約条件になるというのが彼らの見立てだ。コロナ禍で消費者需要がサービスから物販に移り、品不足や物流逼迫につながった。一方では高齢化により、働き手が不足しやすくなっている。だからこそ、インフレは不可避なものであるという。
中央銀行は、産業界の「生産」構造を変えられない。影響を及ぼせるのは「需要」側の構造だけだ。つまり、インフレを抑えるには需要を冷え込ませるしかない。
それでも、目標とするインフレ率2%は実現できないと同機関は予想する。その先に予見するのは、景気後退とインフレが共にくる未来だ。難しい環境では、運用戦略にもさらなる”粒度”が求められる。
株式については、日本以外の先進国でアンダーウェイト、その他でニュートラルな立場を表明。インフレ連動債などへのオーバーウェイトを戦略的に選び、高利回り環境を最大限活かす方針だ。
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