洋上風力発電所から電力を海上輸送する「電気運搬船」を開発するスタートアップのパワーエックス(東京都港区)は23日、海運大手の日本郵船などから41億5000万円を調達する契約を結んだと発表した。資金は2024年に完成させるバッテリー工場の建設費や専門人材の採用に充てる。
Company(どんな企業?)
パワーエックスは、アパレルECのZOZOで取締役兼COOを務めた伊藤正裕氏が2021年に設立した。米Google(グーグル)やEV(電気自動車)メーカーTesla(テスラ)の元幹部らも加わり、30人弱の従業員を抱える。電気運搬船の開発とバッテリーの製造を準備し、再生可能エネルギーの普及や電気をより効率運用する仕組みの構築を目指す。
2025年までにバッテリーを搭載した電気運搬船「Power Ark(パワーアーク)」の初号船を完成させる。洋上風力発電所や陸地で発電した電力を船で長距離輸送する未来図を描く。
これまで洋上で発電された電力は、海底に敷いたケーブルで供給されてきた。電気運搬船が実用化すれば、これまで難しかったエリアにも発電所を設置でき、供給の自由度も増すとしている。
2024年には国内で大型のバッテリー製造工場「Power Base(パワーベース)」を建設する。搭載容量300kWh(キロワットアワー)のEV用急速充電器などを製造する計画。詳細は6月中に公表するという。
バッテリー工場「Power Base」の建設を計画=パワーエックス
Detail(具体的な内容)
第三者割当増資で資金調達する。日本郵船、造船大手の今治造船、三井物産、三菱UFJ銀行、日本航空(JAL)のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や個人投資家らが出資を引き受ける。資金は工場建設や人材採用に充てる。パワーエックスは「経験豊富なベテランエンジニアやバッテリー専門家の採用が順調に進んでいる」とし、事業化に向けて体制強化を進める。
またパワーエックスと日本郵船は23日、資本業務提携を結ぶと発表した。電気運搬船の開発や実験で相互の技術を共有するとしている。
Value(なぜ重要?)
国内では2019年に洋上風力発電のルールなどを定める法律「再エネ海域利用法」が整備され、日本政府も導入を拡大する方針だ。ただ現状では海底ケーブルの敷設に多大な費用や時間がかかるため、より低コストで運用できる仕組みの構築が期待されている。
Comment(関係者のコメント)
「蓄電池を利用したエネルギー・ソリューションの需要は拡大する一方であり、国内で商品を製造し国内に限らず世界へ出荷したい」(パワーエックス・伊藤正裕社長兼CEO)
「パワーエックスの大型蓄電池は再生可能エネの分野で幅広い活用可能性を秘める。共に船舶用蓄電池の開発や電気運搬船の実現を推進する」(日本郵船・小山智之専務執行役員)
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