ローランド 事業内容・ビジネスモデル

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時価総額 1395億7300万 円
銘柄コード 7944(市場第一部(内国株))

ローランドは静岡県浜松市北区に本社を置く企業。1972年4月に「ローランド」を設立。1999年9月に東京証券取引所及び大阪証券取引所市場第一部銘柄に指定。2014年10月に東京証券取引所市場第一部上場廃止。2020年12月に東京証券取引所市場第一部に再上場。主な事業として、電子楽器事業(電子ピアノ、電子ドラム、シンセサイザー、ギター関連機器等の販売)を展開。


事業内容とビジネスモデル

沿革・会社概要

ローランド株式会社は静岡県浜松市に本社を置く楽器メーカー。1972年、エース電子工業出身の梯郁太郎氏によって大阪市で創業された。同年8月にローランドブランド第1号商品となるリズムマシン発表、11月にギターアンプ、エフェクター発売、翌1973年にはシンセサイザー、電子ピアノを発表する。

1976年にオーストラリアで販売会社を設立し、グローバル展開を開始。1978年に米国、1981年にイギリス、ドイツ、デンマーク、カナダ、1982年にはベルギーで販売会社を設立した。

1984年に大阪市で音楽教室(現 ローランド・ミュージック・スクール)を開設して教育事業に参入。1985年、セット式電子ドラムを発表した。1986年、静岡県引佐郡(現浜松市)に細江工場(現本社工場)が完成する。

1989年12月、大阪証券取引所市場第二部へ株式上場を果たした。1998年に東証二部へ上場、1999年に東証一部および大証一部に指定替えとなった。2000年には子会社のローランドディー.ジー.株式会社が東証二部へ株式上場。

2001年に中国で生産会社を設立して海外生産に着手。同年9月、ビクター・テクニクス・ミュージック株式会社とローランド音楽教室を統合し、ローランドミュージックスタジオ株式会社(現ローランド・ミュージック・スクール)を設立した。

2014年7月、Taiyo Pacific Partners支援のもとでマネジメント・バイ・アウト(MBO)を実施し、同年10月に上場廃止となった。

2015年1月、アメリカに音楽/メディア製作用ソフトウェアの開発・販売会社(RVS)を設立。2016年5月にはアメリカのヘッドホン開発製造会社「V-MODA」を子会社化するなど事業の多角化を図る。

2017年4月、マレーシアにグローバルでの商流管理会社を設立。

2020年12月、東証一部へ再び株式上場を果たした。

事業内容

ローランドグループは、ローランド、子会社29社および関連会社1社で構成されており、電子楽器の開発、製造、販売を主たる事業とする、グローバルに幅広い製品群を提供している。

1972年の設立以来、エレクトロニクスの技術進歩にあわせ絶え間なく研究開発を行い、世界に先駆けた多くの技術や製品を生み出し、楽器市場へ新たな価値を提案することで、電子楽器の分野で世界的なブランドを確立してきた。

現在では、電子ピアノ、電子ドラム、シンセサイザー、ギター関連機器等、様々な製品ラインを総合的にバランスよく展開しており、また「音」と「映像」の融合にもいち早く取り組み、映像関連機器の開発から販売までを事業として確立している。

海外展開については、創業当初の1970年代後半から販売会社の設立を積極的に行い、世界中のあらゆる地域において製品展開しており、ローランドグループの収益の85%は(2019年12月期現在)日本国外から得ている。

特に、近年では、成長著しい新興国市場に対して、現地の音楽文化や需要に即した製品投入を行っていくことで、販売拡大に注力している。製造については、海外生産を基本として、製品特性に応じて自社工場と外部委託から最適な拠点を選択することで、柔軟な体制を築いている。

電子ピアノ

世界初の、「鍵盤タッチの強弱」を表現できる電子ピアノを生み出したメーカーとして、木と樹脂のメリットを活かした独自のハイブリッド鍵盤や「スーパーナチュラル・ピアノ・モデリング音源」と呼ばれるローランド独自のサウンド技術など、ピアノの命である「タッチ」と「音」にこだわった製品を販売している。

外観デザインにおいても本格的なグランドピアノタイプから家具調デザイン、コンパクトなスタイリッシュデザインまで様々なデザインを提案しているほか、Bluetoothによるスマートフォンやタブレットとの連携機能の搭載など、電子ピアノならではの、楽しみながら上達する機能も提案している。

電子ドラム

プロのライブステージでも使用可能な、アコースティックドラムのような外観の高性能モデルから、コンパクトで自宅練習にも最適なエントリーモデルまで、「V-Drums」シリーズとして充実のラインナップを揃えている。

メッシュヘッド、サウンドクオリティ、センシング技術、発音スピードなど、総合的な技術力により、「V-Drums」は、電子ドラムの代名詞として、市場での高いシェアを維持し続けている。

シンセサイザー

初心者でも扱いやすく、軽量で持ち運びが容易なエントリーモデルから、プロの音楽制作やライブにも対応可能なモデルまで、様々なユーザー層に対応した製品をラインナップしている。

近年では新たな取り組みとして、ローランドの長年の音源技術を結集し新規開発した共通音源(ZEN-Core)を搭載した製品の販売を開始した。

ダンス&DJ関連機器

1980年代にローランドが発表したリズムマシンは、ヒップ・ホップやエレクトロニック・ミュージックといった様々なダンスミュージック、カルチャーを生み出すきっかけとなったと考えている。

そのDNAを引き継ぎ、最新のデジタル技術で進化したリズムパフォーマー、DJソフトウェアメーカーSerato Limitedと協業開発したDJコントローラーや、楽曲制作、パフォーマンスに必要な全ての機能を備えたグルーブボックスなど、幅広く展開している。

ビデオ

プレゼンテーションやコンサート、イベント等で増加する映像演出ニーズを背景に、演出には欠かせない「映像ミキサー」や「AVミキサー」を中心に展開している。異なる規格のビデオ信号をミックスできるマルチフォーマット技術や、長年培ってきた音響技術を活かした、音と映像を1台で扱える製品がローランドの特長として認識されている。

近年では、アマチュアによる動画投稿の機会が増えており、このようなニーズに対応する、購入しやすいライブ配信向け製品も展開している。

エフェクター

長年培われてきたアナログ回路及びデジタル信号処理の高い技術力がローランドの強みであり、特に単機能型エフェクターの「コンパクト・シリーズ」はこれまでに累計100機種を超えるモデルを発売し、エフェクターの定番として高いブランド力を築き上げてきた。

また、人の声にハーモニーや高品位な残響効果などを加えるボーカル用エフェクターや、録音したフレーズを繰り返し再生し重ねていく「ルーパー」と呼ばれる製品等も加え、製品展開を拡張しています。

楽器用アンプ

ギターアンプを中心に、キーボード用や電子ドラム用まで幅広く製品展開している。ギターアンプでは、自宅で使用できる小型アンプから、ステージでも使用可能な大型アンプまで幅広いラインナップを展開している。

近年では、独自のワイヤレス技術により、完全ワイヤレスギターアンプや、ワイヤレス・ヘッドホン型のギターアンプシステムなど、革新的な製品を生み出している。

電子楽器市場とローランドグループの位置付け

Trades誌によると、楽器市場規模では、北米が最大の市場となっている。また、各地域の年平均市場成長率を見ると、日本は低迷している一方、中国をはじめとする海外市場においては伸びが見られ、楽器市場の成長は海外が牽引している。ローランドグループは、創業当初より海外市場にフォーカスしており、高い海外販売比率を支えるグローバル・ネットワークを構築してきた。

また、ローランドグループは電子楽器市場に100%フォーカスしているが、電子楽器市場とアコースティック楽器市場の比較においては、最大の楽器市場である米国では、主力製品であるピアノ市場、ドラム市場について、電子楽器の成長率はアコースティック楽器の成長率を上回っている。

ローランドグループは電子楽器市場で重要かつ安定的な成長市場である米国において、電子ドラム1位(58%)、電子ピアノ2位(16%)、ギターエフェクター1位(19%)、ギターアンプ2位(12%)と、主力製品で高い市場シェアを有している。

経営理念

ローランド・グループの経営理念は、以下の3つのスローガンに集約されている。これらは、ローランド・グループが何のために存在し、どのような企業であろうとしているのかを表した、創業時から変わらない考え方として続いている。

-創造の喜びを世界にひろめよう
-BIGGESTよりBESTになろう
-共感を呼ぶ企業にしよう

「創造の喜びを世界にひろめよう」

いつでも、誰でも、どこにいても、自分にあった音や映像の楽しみ方に一人でも多くの人がめぐり合える。そんなワクワクする世界の実現を、私たちは目指します。新たな作品を創りだす喜び、仲間たちと楽器を演奏する時の充実感、そして、それを多くの人と分かち合うひととき―無限に拡がる喜びの可能性を、追求し続けます。

「BIGGESTよりBESTになろう」

お客様一人ひとりにとって、常にBESTで特別な企業であること。私たちはそのためにたゆまず努力し、最善を尽くします。日々成長し続け、お客様の想いにこたえる。そしてまた、新たな夢や期待を寄せていただく。そんな信頼関係を大切にしていきます。

「共感を呼ぶ企業にしよう」

私たちは、支えていただいているお客様、取引先様、そして株主様など多くの方々に愛され、応援される企業を目指します。新しい価値を創り出す中においてもこうした方々の信頼を決して裏切らず、事業活動をよりよく理解していただく。そうして皆様からの共感を力にかえ、すべてのステークホルダーにとっての事業価値を持続的に向上させていきます。

中長期的な経営戦略と対処すべき課題

ローランドグループの属する世界楽器市場は、新興国においては市場の拡大が期待されるものの、主要市場である先進国においては、少子高齢化、趣味の多様化など、その成熟度を増している。

ローランドグループの継続的な成長には、顧客をより深く理解した価値ある製品・サービスの提供、欠品や過剰在庫が最小化されたSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築、製品・サービスの真の価値を伝える顧客創造活動、そしてそれらを担う人材の育成が重要な課題であると認識している。

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

ローランドでは、株主価値や企業価値の向上を計る指標として、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)を重要な経営指標と位置付けている。

マネジメント・バイ・アウト(MBO)に至った経緯とその目的

ローランドは、米国のワシントン州を拠点とし友好的かつ提案型の株主となるべく日本の上場株式への投資を行う投資ファンドであるTaiyo Pacific Partners, L.P.の支援の下、MBOを目的として設立された株式会社常若ホールディングスによって2014年7月に完全子会社化され、2014年10月に東京証券取引所市場第一部の上場を廃止した。

その後、2015年1月には株式会社常若ホールディングスを消滅会社とし、ローランドを存続会社とする吸収合併を行い、現在に至っている。

ローランドブランドの確立

ローランドは1972年4月、大阪府大阪市住吉区に設立され、電子楽器の製造・販売事業を開始した。エレクトロニクスの技術革新に対応した研究開発、国内外の生産拠点拡充及び販売網の確立に努め、その経営規模を拡大してきた。1989年12月には大阪証券取引所(現株式会社大阪取引所)市場第二部に上場を果たし、1999年9月には東京証券取引所(現株式会社東京証券取引所)市場第一部銘柄の指定を受けた。電子ピアノ、電子ドラム、シンセサイザー、ギター関連楽器などを国内外で製造・販売し、電子楽器分野では世界的に有名なブランドを確立してきた。

また、1981年5月に電子楽器で蓄積したデジタル技術をコンピュータ周辺機器の分野で活かすことを目的として、アムデック株式会社(1983年にローランドディー.ジー.株式会社と名称を変更)を設立し、CADの出力用のペンプロッタをはじめ、数々の製品を生み出し、ローランド社とともに、グループとして業容及び業績を拡大してきた。

電子楽器事業の低迷

しかしながら、2008年のリーマンショック以降、景気の低迷、急速かつ長期の円高などによって、ローランドグループの事業の経営環境が大きく変化し、業績も大きな影響を受けた。特にローランドグループのコア事業である電子楽器事業においては、長引くデフレや円高による安価な海外生産品の増加を背景に製品の低価格化による価格競争が進み、ローランドグループが得意としていた高品質・高価格製品の販売が低迷した。

また、ローランドグループが開発し一定のシェアを持つ製品についても、デザイン・機能がユーザーの嗜好の変化について行けず、製品戦略についても、需要の見込める市場に対して必ずしも製品投入ができておらず、次第にシェアを落とすこととなった。

結果的に、当社グループのコア事業である電子楽器事業の業績低迷が長期化し、2010年3月期から2013年3月期までの4期間連続の赤字となる見込みであったことを受け、現代表取締役社長である三木純一のもと、2013年4月より、「Low-CostOperation-収益力の改善・基盤づくり」「Glocalization-地域対応の強化」「Innovation-製品力の強化」を重要課題とし、構造改革に乗り出したものの、コスト削減以外の中長期的な成長の根幹となる領域について十分な施策が実行できている状況にはなかった。

ローランドグループの収益回復及び中長期的な企業価値の拡大に向けては、「経営資源の選択と集中」、「不採算事業の速やかな整理」、「外部経営資源の活用」、「グローバルレベルでの組織体制・ガバナンス体制・流通販売経路等の整理」、「革新的な製品の市場への継続投入」、「更なる戦略的投資及び機動的な経営判断が可能となる経営体制の構築」等、多くの施策を同時かつ短期的に実行に移す必要があった。

親子上場の解消

また、ローランドが認識していた中長期的な課題として、上場子会社であり、コンピュータ周辺機器事業を営むローランドディー.ジー.株式会社との親子上場の問題があった。ローランドディー.ジー.株式会社は連結売上高ベースで当社グループの半分程度の影響を持つまでに拡大しており、利益ベースでは過半を占めていた。時価総額においても当社の過半数以上となっていたことから、親子上場の解消に向けては継続的に協議を進めていた。

ローランドディー.ジーは設立当初こそローランドの事業に関連する事業を営んでいたものの、近年では事業内容が異なることから、営業上のシナジーもほとんどどない状況であり、また、ローランドディー.ジーは独自の企業価値向上を重視した経営戦略を構築・実行したいという独立性維持への強い意向を持っていたため、統合に向けては前向きではなかった。

従来株主であったTaiyo Pacific Partnersの支援によるMBO

親子上場の解消は中長期的にローランドが抱える課題ではあったが、リーマンショックを経て、電子楽器事業の低迷が長期化する中、選択と集中という構造改革の一環としてローランドディー.ジー.株式会社の事業の売却を実行すべきだった。親子上場の解消に向け、同社と分離の方向で考えた結果、当時、中核的といえる規模にまで成長したローランドディー.ジー.の事業の売却が必要となるものの、売却に際しては財政状態・経営成績に相当のインパクトを受けることは避けられない状況だった。

上場したままこれら2つの課題を同時に解決しようとした場合、業績そのものへのインパクトに加え、短期的には株価を大幅に押し下げることが想定され、当時の一般株主に対して多大なる悪影響を与えることが想定された。

このような中、上場を維持しつつ当社グループの構造改革を実行することは困難であるとの判断に至り、2008年より長期にわたりローランドの株主でありエンゲージメントファンドであるTaiyo Pacific Partners, L.P.と協働し、抜本的な構造改革と企業価値の向上を目的としたMBOにより、株式非公開化を実行することを決断するに至った。

MBO後の経営改革

【経営改革を実現するためのガバナンスの強化】

経営力の強化:
適時適切な経営判断を行うために、意識改革のみならず、グループ全社の会計期間を12月期へ統一の上、経営ダッシュボード、ROIC(投下資本利益率)・資本コスト等の経営指標を新たに導入し、またキャッシュ・マネジメント・システムの導入等を通じた運転資本や生産効率性等の様々な経営の見える化にも取り組んだ。

ローランドグループの売上構成の過半数は海外が占めるため、海外子会社の管理は重要事項であり、非公開化以降、海外子会社のガバナンス体制を強化した。従来、海外販売子会社は現地パートナーとの合弁によりジョイント・ベンチャーとして設立されるケースが多く、海外子会社の運営に際しては現地経営者の意向が強く働く傾向にあり、無駄・非効率が存在した。

非公開化後は、販売強化や戦略の浸透だけではなく、ガバナンス強化の観点から、必要に応じてジョイント・ベンチャーの解消を図ることで子会社の資本関係の整理を行なった。また、報酬体系の抜本的な見直しを行いローランドグループとして収益最大化を図るインセンティブを持たせるような仕組みを作った。

経営体制の強化:
MBO前の取締役会構成を刷新し、社外役員(本書提出日現在で社外取締役4名、うち独立社外取締役2名、社外監査役3名、うち独立社外監査役3名)を招聘するとともに、取締役会の体制をスリム化することで、迅速な意思決定とガバナンス体制の強化を図った。また取締役会構成の多国籍化を通じた多様化を実現した。

中長期的な成長を見据えた経営:
構造改革にとどまらず、中長期的な成長を実現するための中期経営計画の策定、最適な資本構成の実現に向けた取り組み、中期経営計画実現に向けた成長投資を実行した。

【構造改革】

開発プロセスの見直し:
ビジネスユニット制を導入し、製品開発に係る権限を各ビジネスユニットに委譲したほか、開発初期段階における顧客へのインタビュー導入等により、機動的かつ柔軟に製品を開発できる体制を構築した。今後も顧客ニーズの理解に加え、開発社員自身もワクワクするような製品の開発、発売に果敢にチャレンジすることで、革新的な製品を生み出し続けることを目指している。

選択と集中:
2014年5月14日の取締役会において、MBOへの賛同の意見を表明するとともに、保有するローランドディー.ジー.株式会社の株式の一部の売却についても決議し、同社の自己株公開買付に応募することで、同社の事業の売却を実行に移した。

また、2015年8月の売出しにより、持分法適用関連会社からも外れることとなり、ローランドディー.ジー.株式会社の事業の売却を完了した。これ以後、当社グループは電子楽器専業の会社として事業の集中を実現した。

不採算事業の整理/保有資産の効率化:
音楽教室事業の再構築、オルガン事業の売却を実行した。また、国内の遊休資産の売却、海外子会社の不動産売却、並びに上場時より保有していた上場企業の有価証券の売却等による保有資産の効率化を実行した。

国内人事制度の刷新:
人員数の最適化を図ったほか、2016年12月期以降、これまで硬直的であった人事制度を見直し、より公平・公正な人事評価、キャリアパスの柔軟化、賞与制度の見直し等を含む新人事制度を導入した。

生産拠点の集約:
国内外の製造拠点の集約を行い、国内は1拠点に集約した。また、海外での生産体制は、従来複数の国で製造を行っていたことで発生していた輸送コストの高騰や生産から販売までのリードタイムの長期化等の問題に対処すべく、2015年7月にマレーシアの自社工場が稼働し、順次各工場や委託先から生産移管を進めることで、原価低減を図ることが可能になった。

サプライチェーンマネジメント(SCM)への取り組み:
多品種の製品を製造・販売することから、在庫管理の徹底と在庫削減が大きな課題だったが、MBO後は各拠点での在庫管理を厳格化すること並びにマレーシア・欧州のハブ倉庫を活用することで、在庫圧縮並びに資金効率の向上を図った。

また、2017年4月にはマレーシアにロジスティクス最適化のための地域統括会社を設立し、2018年より本格稼働している。

・海外販売体制の見直し 欧州では2014年2月に英国に設立した統括会社において、欧州市場全体における販売企画、マーケティング等を担うことで、各販売子会社でのコスト削減並びに迅速な営業戦略の展開と売上拡大を可能にしました。成長著しい中国においては、販売加速のため、現地の100%子会社へ商流を集中し、経営体制を見直し、販売・マーケティング活動を強化し、奏功しています。米国や一部の業績が低迷していた販売子会社についてトップの交代を実行し、外部人材の招聘により販売力の向上を図りました。

【成長投資】

新たなゲームチェンジャー製品の投入、主力分野の新製品の投入によるブランド力の回復:
ローランドグループの付加価値やブランド力の源泉は、創業以来培ってきた高い専門性に裏付けられたハードウェア技術、ソフトウェア技術に加え、それらを最適に合わせ込む長年のノウハウ、過去の開発に裏付けられた暗黙知ともいえるアートウェアにある。これら3つの要素を高いレベルで保有していることが電子楽器の「楽器」としての完成度を高めるうえで非常に重要だと考えている。

ローランドグループは、エレクトロニクスの技術進歩にあわせ、絶え間なく研究開発を行い、世界に先駆けた多くの技術を生み出し、楽器市場へ新たな価値を提案してきた。結果として新たな製品カテゴリーを創出してきたほか、既存市場の発展に貢献する製品を数多く生み出してきた。

ローランドグループでは、これら製品を「ゲームチェンジャー」と呼んでおり、MBO後には、電子カホン(打楽器の一種)や電子管楽器といった革新的な製品の投入を行なった。

また、ローランドグループの主力製品である電子ピアノ、電子ドラム、シンセサイザー等については、顧客ニーズに対応した新製品をタイムリーに投入していくことに加え、エントリー価格帯への製品投入も進めることで、顧客層の拡大を図った。

新興国の売上拡大:
2014年6月にシンガポールオフィスを設置し、2016年5月には当該オフィスをマレーシアに移転、新興国市場の目線で市場地域特有の伝統楽器や音色嗜好等を組み込んだ製品の投入を行う等、新興国へのアプローチを強化した。

また、2018年7月に安定的な成長市場であるメキシコに販売子会社を設立している。

グローバル・ブランディングの強化:
従前、グローバルでの統一したマーケティング体制、ブランド戦略が取れず、マーケティングに係るコスト管理とブランドマネジメントが課題となっていたが、非公開化後、グローバルなブランド戦略を担当する部門を設置し、ブランドマネジメントを強化し、マーケティング方針の統一、各国のウェブサイトを統一することにより「One Roland」の意識醸成を図った。

その後、全世界でマーケティング企画立案・実行・効果測定を統括するマーケティングユニットを設立し、効率よくマーケティングを行う体制に移行し、特にこれまで導入が遅れていたデジタルマーケティングの活用をグローバルで推進している。

業務提携や企業買収を通じたDJ分野ビジネスへの進出:
2016年5月にDJ分野のソフトウェアでトップシェアを誇るニュージーランドのSerato Limitedと業務提携し、ローランドグループ初となるDJコントローラーを開発し、DJ市場へ参入した。

加えて、2016年5月にDJ分野で定評のあるヘッドホンメーカーであるV-MODA,LLCを買収し、V-MODAブランドにて、DJ向けヘッドホンやプロデューサー向けヘッドホンなどを展開している。

共通音源プラットフォーム、新世代音源の開発:
独自音源LSIであるBMC(Behavior Modeling Core)チップを開発し、これまでのローランドグループの音源技術を集約した、様々な楽器を生み出すことのできる共通プラットフォームを構築した。この共通プラットフォームにより、生産コストの削減、高品質、高機能製品の早期開発や、競争力のある価格が可能となった。

また、新世代音源「ZEN-Core」を開発し、音源メモリの拡大による楽器の表現力、解像度を上げたコントロールによる滑らかな演奏表現、また異なる製品間で同じサウンドを再現することができる音色互換を実現した。

「Zen-Core」についてはソフトウェア化にも取り組み成功している。これらによりハードウェア間のみならず、ハードウェアとソフトウェア間での音色互換も実現し、今までにない利便性を顧客に提供することが可能になった。「BMC」や「ZEN-Core」を活用し、引き続き多くのゲームチェンジャー製品を生み出すことを目指す。

Roland Cloudの展開により、ハードウェアメーカーからソリューションプロバイダーへ:
ローランドは今後の成長戦略として、音楽を楽しむために必要な、魅力的な楽器、コンテンツ、サービス、アプリなどのトータルソリューションを、スマホを通じて広く提供することを将来ビジョンとしている。

2015年には米国のソフトウェアサービス、メディアソリューションのプロバイダーであるVirtual Sonics Inc.と合弁会社を設立し、2017年にはクラウドを利用したソフトウェア音源のサブスクリプション(月額/年額の定額会費制)サービスである「Roland Cloud」を開始した。また2019年には米国のOpen Labs,LLCの音楽制作ソフトウェアを買収し、その技術をベースにマルチプラットフォームで使用できる音楽制作ソフトウェア「Zenbeats」を開発・リリースした。

今後「Roland Cloud」において、アクティブな楽器演奏者のみならず、過去に楽器演奏を楽しんでいた方、またこれから楽器演奏、音楽制作を楽しんでみたい方にも裾野を広げられるよう、手軽なソフトウェアの提供や、「Roland Cloud」上におけるコミュニティ、マーケットプレイス、バーチャルコンサート、楽器レッスン、ユーザーコンテンツのシェアといった様々なサービス提供を通じて、会員数の増加を目指す。

会員数が増加することで「Roland Cloud」には様々なユーザーコンテンツの蓄積が可能となる。これらコンテンツと互換性のあるローランド社製ハードウェアの魅力は更に高まり、ローランドのハードウェアを購入する層が増えることを見込んでいる。ローランドのハードウェアユーザーが増えることで、さらに会員数やコンテンツの増加につながる。このような好循環を生み出し、顧客のLTV(Lifetime Value)を最大化することで、収益の拡大を目指す。

再上場の目的

ローランドはMBO後、業績低迷からの脱却を目指した構造改革を実行するとともに、今後の成長に向けた投資の双方を実施することにより、開発・生産・マーケティング・販売・ガバナンスに至るまであらゆる体制を刷新し、中長期的に競争力を維持・拡大させるための事業基盤を確立することができた。また、ローランドグループの強みである革新的な製品・サービスを生み出す企画力、技術力、チャレンジ精神を十分に発揮できる体制を再構築・強化できたものと考えている。

今後、更なる企業価値の向上を図るためには、革新的な製品の開発に携われる人材や新規事業領域の発展に向け、これまでになかった発想をローランドグループに吹き込むことができる優秀かつ多様な人材を確保すること、また、第三者との連携やM&Aも含む、新規事業領域への積極的な投資や新しい事業領域への進出を追求できるだけの信用力の強化と資金調達手段の多様化が重要になる。

再上場により、これらを実現し、音楽シーンに革新を起こし続けるグローバル・ブランドとして、更なる経営基盤の拡充と企業価値の向上を目指す。


有価証券届出書(新規公開時)(提出日:2020年11月11日)