三井物産とKDDIは9日、人流データを分析する新会社GEOTRA(ジオトラ、東京都千代田区)を共同で設立したと発表した。AIを使って空間の人の流れを可視化・予測するサービスを提供し、デジタルやAI技術で市民生活の効率性を高める「スマートシティ」の開発を支援するという。
どんな企業?
三井物産51%、KDDI49%の出資で設立した。
両社は2021年3月、人の移動をデジタル空間上で再現する「次世代型都市シミュレーター」を開発。KDDIの通信契約者の位置情報や国勢調査のビッグデータをAIが分析し、一人ひとりの動きを予測しながら、都市全体の人の流れを表示する。 ジオトラはこの技術を提供していく。
狙いは?
政府は官民連携でのスマートシティ構築を推進し、データの活用によって行政サービスの効率化や災害対策の向上など、社会課題の解決を図っている。両社は新しい街づくりには「移動者の規模、属性など都市状況の可視化と将来予測が極めて重要」とし、共同開発したサービスが企業や自治体の意思決定の高度化につながる とみている。
ジオトラはすでに三菱地所と連携し、東京・丸の内で移動の利便性を高める事業の検討に入っている。また渋谷区も区内の移動ニーズやエリア特性の把握にジオトラのサービスを活用する計画だ。
なぜ重要?
従来は人の移動を把握するため、街頭のアンケート調査や交通量の確認が実施されてきた。AIとビッグデータの活用で、より精緻な人流データが短時間で分析できるようになった。 企業や自治体がより実態に即した形で、スマートシティ関連など新サービスの構築に役立てやすくなる。
「デロイト トーマツ ミック経済研究所」(東京都千代田区)の2021年度の調査によると、位置情報を利用するサービスなどの国内市場規模は2020年度に377億円。2024年度には約2倍の759億円まで拡大する見通しだ。
市場動向
人流解析ではソフトバンク傘下のAgoop(アグープ、東京都渋谷区)が地方自治体と連携し、交通の活性化や観光振興にデータを活用している。スタートアップのクロスロケーションズ(東京都渋谷区)も、自社の解析データからバス会社の最適な運行ルートを割り出す取り組みを実施した。
三井物産は2023年度までの中期経営計画でデジタル分野の新事業創出に注力する意向を示しており、エンターテインメントやエネルギー領域でもKDDIとの連携を深めていく。