税務・監査やコンサルティング事業のEY Japan(東京都千代田区)は、国内のスタートアップ企業に対するM&Aの動向をまとめた調査を発表した。2021年のM&A件数は前年比6割増の143件となり、2016年以降で最多となった。
Value(なぜ重要?)
スタートアップのIPO(新規株式公開)は2021年に32%増の123件に増えたが、M&Aの伸び(58%増)が上回った。買収額10億円以上のM&Aが2020年の4件から18件に増えた。
米決済大手のペイパル・ホールディングスが後払い決済のPaidy(ペイディ、東京都港区)をおよそ3000億円で買収するなど、100億円以上の案件も3〜4件あった。EYの青木義則氏は「案件数が増加傾向にあり、大型化している。国内でもスタートアップのEXIT(利益の獲得)手段として、M&Aが定着しつつある」と指摘する。
Detail(詳しい内容)
特に、企業や自治体向けにサービスを提供するB to B事業のスタートアップに対するM&Aが166%増の85件まで増えた。消費者向けサービスのB to Cは、50%増の45件だった。クラウドサービスやネットサービス、AIなどデジタル領域のM&Aが目立った。
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2021年は設立からより日が浅いスタートアップへのM&Aが多かった。2020年は設立後4〜6年が最多(20件)だったのに対し、設立後2〜4年が最も多い33件となった。全体では両年とも、設立後12年未満のM&A案件が8割を占めた。
買収した企業側の目的を見ると、2020年に58%だった「新規事業の創出」が22%まで減少した。一方で、「既存事業の強化」が24%から57%まで上昇している。新興の上場企業や非上場企業で既存事業を伸ばすためのM&Aが増加したという。