米製薬大手のファイザーは米国時間25日、低所得国45カ国で、米国やEUで販売する特許期間中の医薬品やワクチンを利益なしで販売すると発表した。同社は「低所得国とその他の国々との間に存在する健康格差を大きく改善する」としている。
Detail(具体的な内容)
ファイザーはまず、ルワンダ、ガーナ、マラウイ、セネガル、ウガンダで医薬品の提供を始める。加えて、病気の診断支援や医療従事者の教育、サプライチェーンの管理にも協力する。最初の5カ国で得られた知見を、残り40カ国での展開に活用していく。同社は約12億人の健康格差の解消につながると見ている。
提供するのは感染症、がん、希少疾病、炎症疾患向けの23種の医薬品だ。「これらの医薬品を容易に入手できれば、毎年100万人近くの命を脅かす疾患や感染症の治療に貢献できる」(同社)と期待する。今後ファイザーが新薬とワクチンを発売する場合には、それらも利益なしで提供していく方針だ。
また、米Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏らが創設した慈善基金「Bill & Melinda Gates財団」から資金提供を受け、低所得国における死産と新生児死亡の主な要因となっている「B群レンサ球菌」のワクチン候補の開発にも取り組んでいく。
Value(なぜ重要?)
WHOのレポートより抜粋
WHOによると、2019年の低所得国における死因トップ10のうち、6つをマラリアや結核、エイズなどの感染症が占めている。感染症による死者数は減少傾向にあるものの、高中所得国の死因トップ10のうち、感染症が1つしかないことを踏まえると、まだまだ効果のある治療薬・ワクチンが行き届いていないと言える。
ファイザーは世界の製薬企業や機関に今回の取り組みへの参加を呼びかけており、賛同する動きが広がれば、世界の健康格差の是正に大きく前進する可能性がある。
Comment (関係者のコメント)
「医薬品の提供は第一歩に過ぎない。診断、教育、インフラ、保管などの改善もできてはじめて、医療の不公平が解決され医薬品やワクチンを届けられたと言える」 (米ファイザー、アルバート・ブーラ会長兼CEO)