ディー・エヌ・エー(DeNA)が医療領域のICT(情報通信技術)を開発するアルム(東京都渋谷区)を7月以降、291億円を投じて子会社化する。医師らが医用画像などを情報共有できる同社サービスは世界1100の医療機関が導入している。DeNAはセキュリティなどIT技術や事業企画でアルムの事業展開を支援する。
Value(なぜ重要?)
米調査会社Global Market Insights(グローバルマーケットインサイツ)の調査によると、医療に関連するデジタル技術の世界市場規模は年々拡大し、2027年までに4268億ドルを超える見通しだ。特に高齢化や慢性疾患の増加で患者が増え、医師が遠隔で効率的に診断できるシステムなどの需要が大きい。新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛も拍車をかけた。
Company(どんな企業?)
2001年設立のアルムは、医療関係者がチャットで医用画像や情報をやりとりできる医療業界専用のアプリ「join」を提供する。病院外にいる医師との連絡や病院間の連携のために使われ、2016年には日本で保険診療での利用も認められている。国内では470の医療機関で導入され、世界30カ国にも展開している。米国やドイツ、マレーシアなど9カ国に海外拠点がある。
このほか健康や医療情報を記録するアプリ「MySOS」も提供し、累計の利用者数が100万人を超えている。利用者やその家族が通院や服薬の履歴を登録し、医療機関から検査画像などもアプリで受け取れる。緊急時に医療機関とのスムーズな情報共有を支援できる。
2021年には三井物産が出資し、アルム株の3.2%を保有する。東南アジア進出や人員強化で協力しており、DeNAによる子会社化後も連携を続ける。
Detail(詳しい内容)
DeNAの発表によると、7月に第三者割当増資を引き受け、291億円でアルム株の37.3%を取得する。その後、既存株主からの株主取得などで所有割合を57.5%に引き上げて子会社化する方針だ。DeNAの大井潤取締役がアルムの共同代表取締役に就任する。
DeNAは子会社化について「セキュリティなどのテクノロジーや事業企画・開発力を活かし、(アルムの)成長を加速させる。ヘルスビッグデータ戦略をはじめ相乗効果の創出に積極的に取り組む」としている。
Comment(関係者コメント)
「医療サービスの在り方を大きく見直すDX化の波が医療・介護現場に到来している。DeNAグループの技術・経営基盤を軸に、更なる臨床現場への革新をグローバルにもたらせる」(アルムの坂野哲平社長)