身売り寸前から変貌 HBM(広帯域メモリ)をリードするSKハイニックスとは何者か

SK hynix Inc.

AIブームの追い風を受ける企業の一社に「SKハイニックス」があります。同社が手がけるのは、データを記憶するメモリ半導体。生成AIの計算に欠かせない「HBM(広帯域メモリ)」で世界シェア首位に立つ韓国企業です。エヌビディアは次世代AI半導体に使うHBMの約3分の2を同社に割り当てたと伝えられています。

ルーツは1983年に創業した現代グループの「現代電子」。1999年にLG半導体を統合し、2001年に現代グループから独立して「ハイニックス半導体」に社名を改めました。経営は苦しく、2002年には米マイクロンへの身売り寸前まで追い込まれました。しかし交渉は破談となり、その後約10年にわたって債権団の管理下に置かれました。

転機は2012年、SKグループによる約30億ドルでの買収です。社名を現在のSKハイニックスに改めた後も、長くサムスン電子の後を追う「メモリの2番手」と見られてきました。ハイニックスの貢献もあり、SKグループは2022年以降、サムスンに次ぐ第二の財閥として韓国経済での存在感を増しています。

SKハイニックスは、いまや世界有数の「稼ぐ会社」に変わりつつあります。2026年4〜6月期の営業利益は約6.8兆円。5月には時価総額が初めて1兆ドルに達し、7月には米国でのADR上場で約265億ドルを調達しました。一方、過去最高益を発表した当日に株価は約1割下落するなど、市場の見方は揺れています。

「身売り寸前」だったSKハイニックス

1990年代末のアジア通貨危機の後、韓国では政府主導で財閥の事業を整理する「ビッグディール」が進められました。その象徴として1999年に現代電子がLG半導体を吸収。ところが、統合からわずか1年ほどで資金繰りに行き詰まり、2001年には10兆ウォン規模の負債を抱えて債権団の手に渡ります。

2002年4月には、メモリ事業を米マイクロンに売却する条件付きの覚書まで結ばれました。しかしハイニックスの取締役会は、売却後の再建計画は非現実的で、自力でも生き残れると判断し、全会一致で売却を退けます。

転機は2012年に訪れました。SKグループの崔泰源会長が、グループ内の反対を押し切り、大赤字を出していたハイニックスを3.4兆ウォンで買収。当時のSKには半導体に詳しい人材が少なく、競争の激しさから多くの企業が倒れてきた業界でもあります。買収に反対する声は根強くありました。

それでも崔会長は、メモリが半導体産業でより大きな役割を担うと信じ、不況期にも投資を止めない方針を貫きます。その後も東芝メモリ(現キオクシア)への出資や、インテルのNAND事業の90億ドルでの買収など、大型投資を重ねていきました。

生成AIブームが「HBM」需要に着火

会社の運命を変えたのが「HBM」です。同社は2000年代半ばからDRAMを縦に積み重ねる技術を研究し、2013年に世界で初めてHBMの開発に成功しました。ただ、製造コストが高いことから、市場は10年近くHBMに見向きもしませんでした。

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