米BILLホールディングスは、中小企業(SMB)向けに請求書処理(AP/AR)と経費・支出管理(Spend and Expense)を提供するフィンテック企業です。顧客数は約50万社、決済ネットワークの参加者は900万を超えます。
年間の取扱高は約4000億ドル、創業以来の累計では約2兆ドルの企業間決済を処理してきました。中小企業のバックオフィスに深く入り込んだ、米国有数のB2B決済プラットフォームです。

同社は8月19日、2026年4〜6月期決算を発表しました。コア売上高は約4億ドルで前年比16%増、非GAAP営業利益率は23%に達しました。AIネイティブ企業への転換をめざす大規模な組織再編の完了も報告しています。決算説明では、AIエージェントの導入実績から課金モデルの転換、与信モデルの刷新まで、具体的な数字が数多く語られました。
BILLのAIエージェントを利用する企業は、累計で17万5000社を超えました。中でも税務書類「W-9」の回収エージェントは、利用企業が1四半期で3倍超の4万社に急増しています。累計24万件超の書類を、顧客側の作業ゼロで回収しました。ルネ・ラセルテCEOは「督促、回収、IRS(米内国歳入庁)との照合まで誰も触れずに完結する。そもそも誰もやりたくなかった仕事を消滅させた」と説明します。
2026年2月に投入した請求書コーディングエージェントも、すでに6万社超が利用しています。複数明細の請求書について、勘定科目の入力工程の約90%を削減しました。その結果、AP顧客全体の処理時間はほぼ半減したといいます。

AP顧客とは、BILLの「AP(Accounts Payable=買掛金・支払管理)」機能を使っている顧客のこと。反対に、後ほど軽く登場する「AR」は「Accounts Receivable=売掛金」で、代金を「受け取る側」の業務です。
経費側でも自動化は進んでいます。2026年4月末に一般提供を始めたタッチレス取引エージェントは、3万社の顧客に対して700万超の取引項目を自動入力しました。カード決済を代行する「Pay By Card」エージェントは、この四半期だけで3万件超のカード取引を人の介在なしに完了しています。
ラセルテCEOは今後の方向性を「AIネイティブな体験とは、AIを取り除くと製品が機能しなくなるほど深く組み込まれた状態を指す」と定義しました。約50万社の顧客に対し、財務業務を「初期設定のまま自動化する」エージェント型プラットフォームへの戦略転換を進めると表明しています。中小企業を「自分でやる(Do it yourself)」から「やってもらう(Do it for me)」へ移行させることが、AI戦略の核心だと位置づけました。