中国アリババグループは、EC「淘宝(タオバオ)」「Tmall」を中核に、クラウド、物流、海外ECなどを展開する巨大テック企業です。近年はAI基盤モデル「Qwen(通義千問)」や独自半導体を手がける「T-Head(平頭哥)」を含む、チップからモデル、アプリケーションまでの「フルスタックAI戦略」を掲げています。今期からは事業セグメントを再編し、「Eコマース」「AIクラウド・コンピュートサービス」「AIラボ・アプリケーション」などの区分で開示を始めました。
2026年8月20日に発表した2026年4〜6月期決算は、売上高が前年比9%増の2690億元でした。クラウドの外部向け売上は前年比45%増と、22四半期ぶりの高い伸びを記録しています。一方で調整後EBITDAは前年比30%減の273億元、純利益は同75%減の104億元と、AIへの先行投資が利益を大きく圧迫しました。決算説明会では、エディ・ウーCEOとトビー・シューCFOが投資の狙いと回収の道筋を詳細に語っています。
説明会では、あるアナリストがクラウド事業の長期的な成長ドライバーを尋ねました。これに対し経営陣は「この数年、AIのスーパーアプリは何かと多くの人に聞かれてきた」と切り出しています。そして「本当のスーパーアプリケーションは、クラウド上のAIコンピュートだ」と答えました。学習も推論もAIソフトウェアもエージェントも、すべてがGPU、CPU、ストレージ、データベースを含むフルスタックのAIクラウドの上で動くためです。
経営陣はAIクラウドを「巨大都市」に例えました。ワークロードが「住民」であり、絶えず進化するフルスタックのクラウドサービスが「都市インフラ」だという構図です。インフラが充実するほど新しい住民を引き寄せ、既存の住民の定着度も高まると説明しています。ここに強力なネットワーク効果と規模の効果が働くという主張です。

実際、数字はこの見立てを裏付けつつあります。AI関連製品の売上は12四半期連続で前年比3桁成長を続け、当期は124億元でした。年間換算の売上(ARR)は495億元(約73億ドル)に達し、外部向けクラウド売上に占める比率は35%まで上昇しています。経営陣は次の四半期にこの年間換算売上が100億ドルに近づくとの自社予測も示しました。
需要はどの階層からでも収益に変わる構造だと同社は強調します。AIエージェントの急増がトークンとGPU需要を直接押し上げ、同時にCPU、ストレージ、データベース、ネットワークといった従来型クラウド製品の需要も大きく増やしているためです。ウーCEOは「顧客需要がどの階層で伸びても、当社の商機に直結する」と述べました。市場のフィードバックと契約パイプラインからみて、計算力の需要は供給を上回り続けるとの見方です。