関税還付にドライバー不足、TJX決算から読む米国経済の変化

TJX Companies, Inc.

米TJXは、「T.J. Maxx」「Marshalls」「HomeGoods」などを展開する世界最大のオフプライス小売企業です。ブランド品の余剰在庫を安く仕入れ、定価より大幅に安い価格で販売するビジネスモデルを持ちます。創業から約50年で、現在は10カ国に店舗網を広げています。年間売上高は600億ドルを超え、米小売業界で有数の規模を誇ります。

同社は2026年8月19日、2026年5〜7月期の決算を発表しました。既存店売上高は前年比4%増で、会社計画を上回りました。調整後の希薄化後1株利益は1.22ドルで前年比11%増です。好調な業績を受け、通期(2027年1月期)の利益ガイダンスも引き上げました。

関税が「還付」される時代に

今回の決算で目を引くのは、業績説明の前提そのものです。ジョン・クリンガーCFOは冒頭で「関税還付の影響と、関連する追加報酬費用の計上を除いた調整ベースで説明する」と断りました。関税の還付が業績説明の枠組みを変えるほどの規模になっている、ということです。同社は5〜7月期に還付を受け取り、8〜10月期にも受け取りを見込んでいます。

背景にあるのは、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の巻き戻しです。クリンガーCFOは「関税を織り込んで交渉した商品があったが、商品が到着する前に関税が撤廃された」と説明しました。前年は「関税導入前に発注済みで、交渉の余地がなかった商品」がコストを圧迫していました。今年はその状況が正反対になったといいます。

この追い風は利益率に表れています。5〜7月期の調整後売上総利益率は31.4%で、前年比70ベーシスポイント改善しました。クリンガーCFOはその要因を「主に関税の好転による商品マージンの増加」と述べています。調整後の税引前利益率も11.9%と、前年比50ベーシスポイント上昇しました。

関税は2025年以降、米企業にとってコスト増の代名詞でした。その前提が反転し、還付という形で利益を押し上げ始めています。好調が目立ったHomeGoods部門についても、クリンガーCFOは利益率改善の最大の要因を「関税コストの低下による商品マージンの改善」と説明しました。政策の揺り戻しが、企業業績の変数として新たに浮上しています。

トラック運転手が消えていく

一方で、下期の利益率にはあまり知られていない逆風を織り込みました。8〜10月期の調整後売上総利益率は32.1〜32.2%と、前年比40〜50ベーシスポイントの悪化を見込みます。クリンガーCFOはその主因を「燃料コストの上昇」と述べました。燃料ヘッジの時価評価益が上期に集中した反動もあります。

注目すべきは、運賃上昇の理由に関する説明です。クリンガーCFOは「トラック会社はドライバーの確保難に直面しており、それが価格を押し上げている」と述べました。その要因として「若者がトラック運転の職に就かないこと」を挙げています。構造的な労働力不足が、物流コストに直結している構図です。

さらに踏み込んだ発言もありました。クリンガーCFOは「外国人ドライバーが国を離れていることも要因だ」と指摘しています。移民を巡る政策環境の変化が、企業のコスト構造に波及していることを示す発言です。決算説明の場でこの点に言及するのは珍しいといえます。

物流コストは小売業全体に共通する変数です。TJXほどの規模の企業が運賃上昇を通期ガイダンスに織り込んだ事実は、業界全体への波及を示唆します。関税というコスト要因が消える一方で、労働力不足という新たなインフレ圧力が台頭しています。米国の物価を巡る焦点が、政策から人手へと移りつつあります。

百貨店が去った空白を埋める

TJXは今回、長期の店舗数目標を500店引き上げ、7500店としました。既存の10カ国・既存ブランドだけで、現在から2200店以上の出店余地があるとしています。内訳はT.J. MaxxとMarshallsで300店の上積み(合計3300店)、HomeGoods部門で200店の上積み(2000店)です。来年からは年間の出店ペースも3%から4%に引き上げます。

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