Wileyが発表した2026年4月期(2025年5月〜2026年4月)通期決算は、手元に残る現金が前年比55%増え、利益率も過去最高を更新しました。生成AIの台頭は、情報やコンテンツを扱う企業にとって脅威だと語られてきました。しかし、研究者の論文を専門誌にまとめてきた創業1807年の老舗Wileyは、AIをむしろ最大の追い風だと言い切ります。脅威か、好機か——同じ問いに、正反対の答えを示しました。
マシュー・キスナーCEOは、この1年を「飛躍の年だった」と総括しました。本業である学術出版が底堅く伸びる一方、AIを使った事業が新たな収益の柱として立ち上がってきたためです。同社はこの2つを、互いを押し上げ合う「2つの成長エンジン」と捉えています。出版がAIを育て、AIが出版を速める——その歯車が、かみ合い始めたといいます。
象徴的なのが、AIをめぐる事業の伸びです。AI関連の収益は1年で4,000万ドルから4,900万ドルへ拡大し、2年前の倍以上に膨らみました。背景にあるのは、信頼できる専門データを欲しがる企業からの強い引き合いです。規模こそまだ小さいものの、伸びの速さに勢いがうかがえます。
では、200年かけて積み上げた論文の山は、どうやってAI時代の収益へと姿を変えるのでしょうか。自前で巨大なAIを作ろうとしないこの会社は、競争の主役ではなく、どこに居場所を見つけたのか。脅威とされたはずの技術を、200年企業はどう味方につけたのでしょうか。