PowerFleetが発表した2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)通期決算は、売上が前年比22%増と伸び、本業の採算も大きく改善しました。あらゆるデータをAIが生み出せると言われる時代に、市場がいま評価しているのは「AIには作れないデータ」を持つ会社です。企業のトラックや倉庫にカメラとセンサーを取り付け、現場の安全をAIで見張る——聞き慣れない名前の、この会社でした。
2年前、PowerFleetは同業を買い集めて規模を作り、その規模を技術の差別化に投資すると掲げました。買収を重ねて大きくなった会社が、現場の混乱で本業の勢いを失う例は少なくありません。ところがこの会社は、いまもっとも勢いのある領域を二つに絞り、そこへ資源を寄せています。倉庫の中の安全と、トラックの運転を見張るAIの映像です。
広げた規模とデータは、これまで届かなかった相手への扉を開きつつあります。世界有数の大企業が次々と顧客になり、一国の政府までもが大型の案件を委ねるようになりました。ほんの数年前には、見向きもされなかったであろう相手です。無名だった会社の立ち位置が、静かに変わり始めています。
では、その「AIには作れないデータ」とは、いったい何なのでしょうか。自前でAIを動かせるはずの世界的企業までもが、なぜ無名のこの会社に頼るのでしょうか。その答えは、ソフトウェアの外側——倉庫やトラックという物理の現場で起きている変化に結びついています。