日本最大の広告代理店である「電通」。
その海外本社である「電通イージス・ネットワーク」は例年、世界の広告費成長率予測を公開しています。
電通イージス・ネットワークが「世界の広告費成長率予測」を発表(2018/1/16)
その中で、2018年の世界の広告費は5,895億ドル(およそ60兆円)にのぼり、そのうち38.3%が「デジタル広告」になると予想されています。
それに対して、テレビ広告のシェアは35.5%。
これはすなわち、人類史上はじめてインターネット広告がテレビの広告市場を上回ることになる、ということです。
2018年、世界は「デジタル広告がテレビを超える」という歴史的局面を迎えているわけですが、日本国内はどういう状況なのでしょうか?
今回のエントリでは、電通が毎年公開している調査レポート「日本の広告費」に掲載されたデータをビジュアライズすることで、現在の状況を整理してみたいと思います。
まずは、1985年以降の日本の総広告費の推移をグラフにしてみます。
1985年当時は3.5兆円ほどだったのが、バブル期の1991年には5.7兆円にまで増え、その後しばらく伸び悩んだ後、2007年に7兆円に達しています。
金融危機の影響もあって2011年までに5.7兆円まで落ち込みましたが、近年は再び増加傾向で、直近ではおよそ6.4兆円が広告に使われています。
この総広告費は、日本全体の名目GDPとおおむね連動しており、名目GDPのだいたい1%から1.3%程度を広告費が占めています。
続いて、2005年以降のマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)の広告費の推移を見てみます。
マスコミ全体の広告費は、2005年当時は3.7兆円と、日本全体の広告費のうちの54.8%を占めていましたが、そこから2011年までに2.7兆円と、1兆円以上も減少しています。
一つずつ見てみましょう。
新聞
新聞広告費は、2005年の1兆377億円から、2017年には5147億円と、およそ半分にまで低下しています。
雑誌
同じく雑誌広告費も減少を続けており、2005年には4842億円あったのが、2017年には2023億円と、半分以下にまで減少。
ラジオ
ラジオも減少しています。
2005年には1778億円あったのが、2013年には1247億円まで減少。しかし、その後は2017年に1290億円と、底固い印象です。
テレビメディア
マスコミの「キング」的存在であるテレビ。
減少はしているものの、他の3媒体と比べると強さを感じます。
2005年には2兆円強だったのが、2017年には1兆9478億円。
続いて、インターネット広告の状況です。
10年以上、順調に市場が拡大していることがわかります。
2005年のインターネット広告費の合計は3777億円だったのが、2017年には1兆5094億円と、およそ4倍に拡大。
そのうち媒体費は1兆2206億円、制作費は2888億円となっています。
最後に、交通広告やフリーペーパー、電話帳などの「プロモーションメディア広告費」の推移です。
こちらも2兆7886億円(2007年)から2兆875億円(2017年)と、減少が続いています。
しかし、それでもインターネット広告費(2017年には1.5兆円)よりもかなり大きいですね。
少し面倒ですが、こちらも一つずつ見てみましょう。
屋外
屋外広告は、2007年に4000億円を超えたのち減少、近年は3200億円前後で推移しています。
交通
交通広告も似たような推移で、2500億円前後あったのが2000億円前後に落ち込み、その後回復しないという感じ。
折込広告
いわゆる折込チラシはプロモーションメディア広告の中ではかつて最も大きく、2005年には6649億円もの市場があったのが、2017年には2002億円まで減少。
ここはインターネットに奪われた感があります。
DM
プロモーションメディア広告の中で折込チラシに続いて大きいのがダイレクトメールです。
2007年には4537億円に達しましたが、その後は少し減少。それでもまだ4170億円あります。
フリーペーパー・フリーマガジン
駅とかに置いてあるフリーペーパー。
2007年には3684億円とかなり大きくなりましたが、その後は減少を続けて2017年には2136億円に。
POP
プロモーションメディア広告の中で唯一、2005年と比べて増加したのがPOPです。
これは広告というよりも、小売店舗で販促用に作られるやつです。
(Google検索より)
電話帳広告
プロモーションメディア広告の中で最も美しく減少しているのが電話帳広告。
2005年には1192億円あったのが、2017年には294億円と、4分の1ほどに。
展示・映像ほか
2007年の3584億円から2011年には2406億円と大きく落ち込んだ後、2017年には3389億円と再び増加しています。
最後にもう一度、「テレビ」「インターネット」「プロモーションメディア」それぞれの広告費推移を見てみましょう。
テレビとプロモーションメディアがほとんど横ばいになっている中、インターネット広告費は安定した成長を続けています。
その一方で、インターネット広告の成長率は上のように景気に大きく左右されることも事実(景気悪くても伸びてるのがすごいけど)。
今後、年間10%の成長率を維持することができれば、2020年には2兆円を超えることになります。
実際にはそれより早くなる可能性はありますが、遅くとも2021年には、日本のインターネット広告がテレビを超えることになるのではないでしょうか。
次回は、インターネット広告の中でもどのジャンルが伸びているのか、改めて整理してみたいと思います。