【産業用ロボット銘柄】製造業の未来を担う国内企業の成長ポテンシャル
少子高齢化を背景とした労働力不足が深刻化する中、製造業の現場では産業用ロボットによる自動化が不可欠な要素となっています。
かつては自動車産業などが主な導入先でしたが、現在ではその裾野が食品や医薬品、物流など多岐にわたる分野へと拡大しています。
近年、ロボットに求められる役割も大きく変化しました。
単に人の作業を代替するだけでなく、AIやIoT技術との融合により、自ら判断し他の機器と連携する「スマートロボット」への進化が加速。
また、安全柵なしで人と協働できるロボットの普及は、導入のハードルを下げ、新たな需要を創出しています。
本記事では、FA(ファクトリーオートメーション)関連の国内企業4社を取り上げ、その技術力や市場でのポジショニング、そして今後の展望を分析します。
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1972年設立のファナックは、工場の自動化を事業の根幹とする企業です。
FA、ロボット、ロボマシンの3事業を柱とし、いずれも自社で開発から製造、販売、保守まで一貫して手掛ける「one FANUC」体制を強みとしています。
同社の競争優位性は、基本技術であるCNC(コンピュータ数値制御)システムを中心としたFA、ロボット、ロボマシンの各事業を展開しており、これらの技術を応用した総合力も源泉の一つと考えられます。
FA、ロボット、ロボマシンを組み合わせたトータルソリューションを提供できるため、顧客の製造現場全体の自動化・効率化に貢献できます。
また、製造現場のIoTプラットフォーム「FIELD system」の提供を通じて、設備の稼働状況の可視化や故障予知を実現するなど、デジタル技術の活用にも積極的です。
加えて、人と協働するロボット「CRXシリーズ」をはじめ、多様なニーズに応える製品開発も進めています。
今後の展望として、「生涯保守」を掲げ、顧客が製品を使い続ける限りメンテナンスを行う方針は、顧客との長期的な関係構築と、安定した事業基盤に寄与すると考えられます。
ただし、事業の性質上、世界経済、特に中国の設備投資動向や、主要顧客である自動車・工作機械業界の景気変動がリスク要因として挙げられます。
>>ファナックについてもっと詳しく:スマート工場×米国回帰=? ”トランプ関税”に伴うリショアリングはファナックの追い風となるか?
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1915年創業の株式会社安川電機は、モーションコントロール、産業用ロボット、システムエンジニアリングを主要セグメントとして事業を展開しています。
特にモーションコントロールセグメントのACサーボモータやインバータ、そして「MOTOMAN」ブランドで知られる産業用ロボットは、世界初・世界一を目指した技術開発が進められています。
同社の独自性は、「i³-Mechatronics」というソリューションコンセプトにあります。
これは、個々の製品を統合し、知能化させることで、革新的な生産システムを実現するという考え方です。
このコンセプトに基づき、単なる製品供給に留まらず、データ活用による生産性向上という付加価値を提供している点が競争優位性となっています。
近年、自律型ロボット「MOTOMAN NEXT」やシステム全体の制御を担う新型コントローラ「YRM1000/iC9000シリーズ」を市場投入するなど、技術革新を推進しています。
MOTOMAN NEXTはAIベンダーの技術導入を促進するオープンプラットフォームとしても開発されています。
また、「YDX」を掲げ、デジタル基盤の強化にも注力しています。
こうした先進的な取り組みは、今後さらなる市場シェアの拡大を目指す上での基盤となると考えられます。
しかし、半導体や自動車といった特定市場の設備投資動向に業績が左右されやすい点は、事業上のリスク要因と言えるでしょう。
>>安川電機についてもっと詳しく:メカトロニクスで製造業を変える!安川電機の成長戦略とは?
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2003年に設立されたナブテスコは、独創的なモーションコントロール技術を事業の中核に据えています。
特に、産業用ロボットの性能を支える精密減速機は、同社の主力製品の一つです。
このほか、油圧機器や自動ドアなど、その技術は多岐にわたる分野で活用されています。
同社は、ロボットの関節部分に用いられる精密減速機の分野で、世界的に高いシェアを誇ります。
この基幹部品はロボットの動作精度を決定づけるため、その高い技術力が同社の揺るぎない競争優位性につながっていると言えるでしょう。
さらに、長期ビジョン「未来の“欲しい”に挑戦し続けるイノベーションリーダー」のもと、コア技術や顧客との関係性などを革新する取り組みを進めています。
近年では、AIやIoT技術を駆使したソリューション開発を強化しており 、船舶の最適航路を提案する企業の買収など、デジタル分野への展開も積極的です。
このような先進技術の融合は、社会課題の解決に貢献する新たな価値創造へとつながるものと期待されます。
一方で、その事業は主要顧客であるロボット業界の設備投資動向に左右される側面も持ち合わせています。
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1928年に設立された不二越は、機械工具、ロボット、ベアリング、油圧機器、特殊鋼といった幅広い製品群を持つ総合機械メーカーです。
材料から製品までを一貫して生産できる体制が、同社の大きな特徴であり、競争力の源泉となっています。
同社の強みは、この多角的な事業ポートフォリオを活かした総合提案力にあります。
例えば、ロボットを核に全部門の技術を連携・結集することで競争力のある商品を提供するなど、各事業間のシナジーを創出しやすい事業構造を持っています。
現在、同社はグローバルでの生産体制の最適化や生産ラインの自動化といった構造改革を推進しており、収益性の改善に取り組んでいます。
また、EV化をはじめとする自動車産業の変革や、世界的な自動化ニーズの高まりは、同社の多様な製品群にとって大きな事業機会となり得ます。
こうした事業環境の変化を的確に捉え、その総合力をいかに発揮できるかが、今後の成長の鍵となると考えられます。
一方で、主要な販売先である自動車業界や建設機械業界の景気動向、あるいは中国や欧州の経済情勢が事業に影響を及ぼすリスクも内包しています。