海外旅行は楽しいものだが、目的地次第ではフライトに10時間以上かかることも多く、移動だけで疲れてしまう。
実際、東京からサンフランシスコまで飛行機で移動すれば10時間かかる。でも、6時間で移動できるとしたらどうだろう?新幹線で東京から福岡に向かうほどの時間でアメリカに到着できてしまう。
こんな嘘のような本当の体験を実現するために、音より速い飛行機の「オーバーチュア」を開発しているスタートアップがBoom Supersonic(ブーム・スーパーソニック)だ。
計画では、オーバーチュアはマッハ1.7(音速の1.7倍、時速2082キロ)で飛行するという。これは、現時点で最速の商用機体の約2倍の速度だ。
すでに何度も実証実験を繰り返しており、絵に描いた餅ではなくなってきている。2029年の実用化を視野に、「XB-1」という3分の1スケールの実証機で何度もテストを実施中だ。
さらに、環境への配慮も欠かさない。バイオマス燃料を利用する設計により、超音速飛行を実現しつつ環境を悪化させない計画だ。
商用化できれば世界を大きく変えるこのスタートアップに、大手航空会社も熱視線を送る。日本航空(JAL)は2017年に出資し、20機の優先発注権を得ている。ユナイテッド航空は2021年に最大50機を購入する契約を締結した。ちなみに、オーバーチュア1機の値段はおよそ2億ドルだ。
今からおよそ120年前、1903年12月17日にライト兄弟が人類初の動力飛行に成功してから数十年は技術の進歩が目覚ましかったが、ここ数十年はほぼ何も変わっていないとBoomの創業者は語る。
今回の記事ではBoomの創業エピソードや、大型受注に至った経緯などを明らかにしていこう。