元祖インバウンド企業!創立100周年を迎えたJTBの歴史と事業数値をまとめる

ジェイティービー

今日は旅行会社として国内最大手のJTB(非上場)について調べてみます。

JTBの歴史

まずは歴史を振り返ってみます。

インバウンド事業としての創業(1912年〜1924年)

JTBの始まりは古く、1912年に鉄道官僚だった木下淑夫が英米人を誘致する「外客誘致論」を展開したのが最初のきっかけです。

これに直属上司だった鉄道院副総裁の平井晴二郎が共鳴、鉄道院の協力を得てジャパン・ツーリスト・ビューローを創立します。

その後は神戸、下関、長崎などに案内所を開設。当時、長崎には上海や香港から避暑に来る外国人が多く、海外各方面に披露状2,000通を出したとのこと。

1913年には機関誌「ツーリスト」を刊行し、1915年には主に外国人観光客を対象として切符の販売を開始。

1924年には旅行雑誌「旅」、1925年には後のJTB時刻表となる「汽車時間表」を創刊します。

戦争によるインバウンド需要の悪化、国内向け旅行事業を展開(1925年〜1945年)

1925年には第一次世界大戦勃発により外国人観光客数が伸び悩み、ビューローは苦境に追い込まれます。

一方、日本人の旅行熱が徐々に高まっていたため、一般邦人用乗車券の販売を開始。できたばかりの日本橋三越本店をはじめ、全国のデパートに案内所を開設します。


1927年には社団法人化し「社団法人ジャパン・ツーリスト・ビューロー」となります。

第二次世界大戦中には社名を「社団法人東亜旅行社」、「財団法人東亜交通公社」などと時代の中で変更することを迫られます。

国内の旅行需要の高まりとともに成長(1945年〜)

戦争が集結すると、日本国外全ての事務所を失い、「財団法人日本交通公社(JAPAN TRAVEL BUREAU)」として再スタートを図ります。

1952年に占領行政から解放されると、特需景気により旅行ブームが起こります。悪質業者も多数現れ、国は「旅行あつ旋業法」を制定。日本交通公社が第1号に登録されました。


1963年には株式会社化。1964年の東京オリンピックでは国内入場券販売総代理店となり、約80万枚の入場券を取り扱います。


1973年には旅行雑誌「るるぶ」を発刊。「見る」「食べる」「遊ぶ」の動詞の末尾を並べた造語で、「乗る」「知る」「学ぶ」などの旅の多彩なイメージも伝えようとしたそうです。

1988年には「若々しく先進的な」企業イメージを広めるため、「日本交通公社」から「JTB」へ呼称変更。テレビや新聞などで大々的なキャンペーンを行いました。


2002年以降の損益の推移をみてみると、次のようになっています。

あまり変化がありませんが、売上は1兆円から1.4兆円、営業利益は多い年で200億円前後という水準になっています。

収益の内訳

続いて、収益の内訳をみてみます。JTBの事業セグメントは大きく次の5つに分類されています(2014年3月期以降)。


1. 国内個人事業:国内の個人に対する旅行事業。店頭販売を含め、多様なチャネルで商品やサービスを提供。

2. 国内法人事業:国内の法人に対する旅行事業。MICE(Meeting, Incentive travel, Convention, Event/Exhibition)やBTM(Business travel management)を含む法人の課題を解決

3. グローバル事業:海外の顧客を対象とする旅行事業および現地旅行事業

4. シナジー事業:商事、出版などの事業

5. プラットフォーム事業:統括基盤的事業


海外売上比率は10%以下となっており、インバウンド需要から始まったJTBも現在ではすっかり国内企業となっています。

旅行事業が合計で1兆円前後と、収益のほとんどを占めています。

近年は、国内個人向けが減少傾向で、国内法人向けとグローバル収益は増加傾向にあります。

出版など含むシナジー創出事業の売上は900億円前後から525億円へと減少しています。

財政状態

続いて、JTBの財政状態をチェックしてみます。まずは資産の内訳です。

総資産は6440億円あり、そのうち1635億円が現預金となっています。短期貸付金が1050億円あるのも特徴的です。

次に、負債・純資産の内訳をみます。

利益剰余金が1718億円にのぼっています。

前受金や旅行積立預り金、商品券や旅行券などが流動負債として数百億円単位で計上されているのも特徴的です。

キャッシュフローの推移です。

あまり安定はしていませんが、多い年は500億円ほどの営業キャッシュフローがあります。

JTBの経営目標「2020年ビジョン」とその進捗

国内最大の旅行会社として君臨しているJTBですが、「アジア市場における圧倒的No.1ポジションを確立し、長期的・安定的な成長を可能とする基盤を完成させる」ことを目指した「2020年ビジョン」というものを2013年度に策定しています。


その中では「取扱額2兆円、営業利益400億円」という目標が設定されていたようなのですが、公式サイトにはその記載が一切ありません。

JTB、2020年に営利400億円を目標-次期経営計画

2017年3月期の営業利益は101億円とのことなので、進捗がいいとは言い難い。

取扱額も1.4兆円ということで、こちらも目標に近づいているとは言えません。

観光庁・旅行白書より)

外国人旅行の取扱高は252億円から859億円へと増加していますが、全体からすると微々たるものでしかありません。

一方、国内旅行の直近の取扱高は9772億円と、前年の1兆円から減少しています。海外旅行も2013年3月期の5073億円をピークに、4139億円へと減少しています。


国内の主要旅行事業者の取扱高の合計値もみてみます。

観光庁・旅行白書より)

2017年3月期は旅行業界全体の需要が落ち込んでいたようです。外国人旅行(インバウンド)の取扱高はまだまだ全体からすると小さいものの、この12年間で292億円から2005億円へと大きく拡大しています。


いかがでしたでしょうか。JTBは旅行業界の古株的な企業であり、変革を起こすことは簡単ではなさそうです。

「今後はインバウンド需要が来る」と言われながらも、その規模は国内向け需要に比べるとはるかに小さく、国内最大手のJTBがそちらに経営資源を集中させるのも難しそう。


旅行業界が今後どうなっていくのか、今後も引き続き調べながら考えていきたいと思います。