中国のテクノロジー企業「Agora」がNASDAQに上場します。
Agoraは、音声通話や動画配信など、リアルタイムなコミュニケーションを可能にするAPIを提供しています。ティッカーシンボルは、そのまま「API」。
顧客満足度を表す「NPS(ネットプロモータースコア)」は64と、ユーザー満足度の高さにも定評があるようです。
足元の業績をみると、四半期売上が3,556万ドル(前年比+166%)と大幅に加速しています。営業損益も327万ドルのプラスに転換。
2019年の年間売上は前年比+47.6%増の6,442万ドル、2019年は▲608.9万ドルの営業赤字でした。
COVID-19危機下でオンライン・コミュニケーションの需要は拡大しています。その中で、大きな役割を果たしているのがAgoraのサービス。
果たしてどんな会社なのか、上場申請書類をベースに情報を整理していきましょう。
まずは、Agoraという会社のバックグラウンドから確認します。
創業者のトニー・チョウ(Tony Zhao)氏は(自称)30年以上の経験があるソフトウェア・エンジニア。
最初は北京大学を卒業後、1997年に「WebEx」の創業エンジニアとなります。
WebExはビデオ会議のパイオニア的サービスで、今を時めく「Zoom」創業者エリック・ユアン氏も開発に携わっていました。
その後、チョウ氏は2004年にP2P動画技術を開発する「NeoTask」を起業。2008年には中国最大のライブストリーミング企業「YY」(現:JOYY)のCTOを務めます。
WebExとYY、どちらにも共通するのはリアルタイムな動画・音声のやりとりを必要とするシステムだということ。リアルタイム通信を実現する技術的ハードルは高く、安定稼働を続けるには大きな投資が必要です。
その一方で2013年の後半には、多くの人たちがスマートフォンを所有し、動画コミュニケーションのための媒体となりつつありました。
そうした中で、より多くの開発者たちがアプリに動画通信機能を入れたがるのは必然。彼らを手助けするようなプラットフォームをAPI経由で提供しよう。そうして2014年に立ち上げられたのがAgoraという会社です。
Agoraは2015年、早くもシリーズBで2000万ドルを調達し、グローバル展開を開始。インドの「Hike Messenger」等にも採用され、2020年3月末時点でAgoraのプラットフォームには累計18万以上のアプリが登録されています。
創業の経緯からも想像できる通り、Agoraでは、デジタル・コミュニケーションに特化したAPIを提供。いわゆるPaaS(プラットフォームアズアサービス)です。