知る人ぞ知るコメダHDの巨額ののれんの理由と「コメダ珈琲店」独自のビジネスモデル

今回は、喫茶店「コメダ珈琲店」を展開するコメダホールディングスについて調べます。

コメダHD略史

創業は1968年で、創業者の加藤太郎氏が名古屋市で喫茶店「コメダ珈琲店」を開店したことにさかのぼります。

1977年には現在も名物商品の「シロノワール」販売を開始。

1999年には第2の業態として甘味喫茶「おかげ庵」を開店。

2008年には創業家が保有株を売却し、投資ファンドのアドバンテッジ・パートナーズが取得して事業を承継します。

続いて2013年にはMBKパートナーズが(株)コメダを買収。

そして2016年6月、MBKパートナーズが保有する株式を市場に売り出す形で東証一部への上場を果たしました。


個人の喫茶店として始まったコメダ珈琲店でしたが、飲食チェーンとしてとてもユニークなビジネスモデルになっています。

また、途中から経営がファンドに移ったことによる影響が今もバランスシート上には大きく残っています。

今回のエントリでは、コメダHDの特徴的な点を2つ確認した上で、同社の中期経営計画についてもみてみたいと思います。


高いフランチャイズ比率と利益率

コメダHDの特徴的な点として一つ目は、運営店舗のほとんどがフランチャイズ店舗であることです。店舗数の内訳をみてみましょう。

2017年2月末時点での店舗数747店舗のうち、実に727店舗がコメダ珈琲店のフランチャイズ店舗となっています。

ここまでフランチャイズに偏った飲食チェーンというのもかなり珍しいのではないでしょうか。

この独特の組織構造により、営業利益率は30%前後と非常に高くなっています。こちらはコメダHDの損益推移です。

コメダでは「食資材の製造・卸売」と「ロイヤルティ」の二つが収益源となっています。

また、メニューが定番商品主体であり、店舗オペレーションの負荷が低いため、店舗管理・指導に伴うコストも小さく、スリムな本部機能を実現。

主力商品のコーヒーやパンはグループの工場から店舗に直接供給し、流通コストやマージンを抑えていることも高収益力に寄与しています。

巨大なのれんと負債を抱えるコメダのバランスシート

コメダの二つ目の大きな特徴は、2013年にMBKパートナーズがコメダを買収した際に発生した巨額ののれんを抱えていることです。

その額は383億円。総資産が610億円ほどですから、実に資産の63%がのれんとなっています。

また、買収の際に巨額の借入をしたため、借入金もとても大きくなっています。

利益剰余金も112億円とかなり大きいですが、資本剰余金が128億円、借入金が234億円ほどとなっています。

この多くは「コメダ珈琲店」自体を買収した際ののれんの源泉となっています。

コメダの中期経営計画

それでは、コメダの2020年度までの中期経営計画をチェックした上で、その実現性と、実現できた場合の企業価値について考えてみたいと思います。


数値目標は「海外を含めた出店エリアの拡大・新店舗フォーマットの開発を通じて、2020年度末までに1,000店舗体制を構築すること」としています。

また、基本方針として次の3つを掲げています。

・お客様第一:”くつろぐ、いちばんいいところ”の実現

・共存共栄: FCオーナー様と真のパートナーシップの確立

・永久進化:創造力/継続力の追求により圧勝


具体的な成長戦略の内容は次の通りです。

1. 新規出店

・出店余地のある東日本エリア・西日本エリアを中心にFC出店を継続

・未出店エリアである北海道や九州南部への出店を推進

・一定の市場成長・規模が見込まれる海外市場への出店も

2. 既存店の売上拡大

・店舗運営レベルの向上

・顧客ニーズに適応した商品・サービスの提供

・顧客ロイヤルティの向上

3. コメダシステム収益力の強化

出店エリアの拡大とともに、生産・物流体制の最適化を継続的に行う。それにより、安定的で効率的な商品供給と原価コントロール、スリムな管理機能を維持し、収益力を拡大。


言ってしまえば「フランチャイズを1000店舗に拡大し、店舗あたりの売上も維持拡大」という目標で、非常にシンプルです。

それではまず、出店のペースは現実的なのでしょうか。過去5年間の実績は次のようになっています。

年間、およそ50店舗から70店舗ずつ増やしてきています。残り250店舗強を4年で達成する、というのは平均して62店舗ずつ増やせばいいので、かなり現実的なペースになっていることがわかります。 

それでは、実際に1000店舗のフランチャイズ展開ができた場合、どのくらいの収益規模が期待できるのでしょうか。「1店舗あたりの収益は維持」されることを前提として、シンプルに計算してみます。

現在の店舗数が747店舗なので、売上240億円、営業利益69億円から1店舗あたりの指標を出すと、売上は3213万円、営業利益は923万円となります。

念のために書いておくと、これは店舗自体の売上ではなく、コメダが1店舗FC展開することによって本体に入ってくる売上と利益です。

さて、これが1000店舗にまで拡大すると、上記の前提のもとで売上は321億円、営業利益は92億円になるはずです(単純計算)。

さて、そこからコメダHDの企業価値について考えてみます。

PERは現時点でも19倍弱ということで、決して高い水準ではありません。

しかし、借入金が234億円ほどあるので、いわゆるEV(Enterprise Value: 企業価値)は1110億円となり、EV/EBITDA倍率は15.2倍となります。

毎年40億円以上の純利益を安定的にあげられる状態であり、設備投資も限定的なので、今後もお金に困ることはなさそうです。

キャッシュフローの状況もみてみます。

事業から60億円ものキャッシュを生み出し、毎年18億円ほどを借入金の返済にあてています。

事業が生み出すフリーキャッシュフローも計算してみましょう。

有形固定資産の取得による支出は多くても20億円ほどで、他の2年は10億円にも満たない水準です。直営店舗ならありえないほどの低水準と言えます。

コメダの場合、独自の流通システムを作る以外の設備投資はそれほど必要なく、本業が順調である限り、30億円程度のフリーキャッシュフローは安定的に生み出せそうです。


以上のことから考えると、売上がこのまま成長する限り、コメダHDの未来は明るいとみていいのではないかと思います。

今年のペッパーフードサービスや串カツ田中、力の源ホールディングスなどのように、飲食銘柄は火がつくと一気に株価が上昇することも少なくありません。

一方で、飲食業は人気商売でもありますから、消費者の好みがどう傾くかというのも大きな要素です。

今後、コメダへの市場からの評価がどのように変わっていくか楽しみです。