今日も米国企業のトランスクリプトまとめようかなと思ってネットフリックスのIRサイトを見ていたら、こんなページが。
Netflix's View: Internet TV is replacing linear TV
タイトルからしてこれはもう超かっこいいですし、URLにも「long-term-view」と書いててとてもいい感じです。
なので、今回はこれをまとめてみようと思います。一部はしょっていますが、それでもかなり長くなったので、サマリーを先においておきます。
・今後数十年でインターネットテレビは従来のテレビを置き換える
・主な理由は、より自由でパーソナライズされた体験を提供するから
・インターネットテレビには既存のテレビと違って「枠」を争う必要がない
・それにより、一作品の耐用期間もとても長く、表現の幅も広げられる
・Netflixの競合は、夜や休日に行われるありとあらゆる余暇である
・「格安の月額課金」を「無制限」で提供するというのがNetflixのポリシー
・Netflixは映画とテレビ番組に特化したエンタメ・プラットフォームであり、なんでも屋さんではない
・「格安」「無制限」は海賊版との戦いにも耐えうるモデルだ
・中国以外では全地域で利用できるようになった(中国も数年後にライセンス予定)
・Netflixの利益率は経営のトップダウンで決められる
・コンテンツの価格が上がった場合、余計なコストを払うよりもコンテンツを減らすことを選ぶ
・事業が成熟するにつれて、今後は利益率も改善する予定
それでは以下、詳細です。
注)リニア型テレビ:既存のテレビ
<簡約>
人々はテレビのコンテンツを好んでいるが、従来のリニア型テレビの体験は好きではない。
番組は固定の時間に放送されるし、スクリーンを持ち運ぶこともできず、リモコンはややこしい。
現在、インターネットテレビがリニア型テレビを置き換えている。それはオンデマンドで、パーソナライズされており、そんなスクリーンでも利用できる。
このくらいのインパクトのある変化は珍しい。
ラジオは、1950年代から1960年代にかけてリニア型テレビがとって変わるまで、50年近く独占的な家庭のエンターテイメント・メディアであった。
家庭でのリニア型ビデオはラジオよりとてつもなく先進的で、この60年以上、消費者の欲望を満たす大企業が君臨してきた。
インターネットテレビの新時代は10年前に始まったものだが、世界中のインターネットの柔軟性やユビキタス性を考えれば、とても大きく永続するものになりそうだ。
私たちは、インターネット・テレビ時代をリードする企業の一つであり続けたいと思っている。
世界トップのリニア型テレビのネットワークは、今や彼らの番組を、携帯やスマートテレビ上で走るアプリケーションを通じて提供している。
これらのアプリケーション(CBS All Access、BBC iPlayer、HBO Nowなど)により、まとめて観たり後から観たりすることができる。
注目せずにいられないようなインターネットテレビ・アプリケーションを提供する既存のリニア型ネットワークは、より多くの視聴を生み、より価値のあるものになるだろう。
最高級のアプリケーションを開発することができないネットワークは、視聴や収益を失っていくだろう。
インターネットテレビが急速に拡大している理由:
・エコシステムの成長。インターネットはより高速で信頼性が高まっており、スマートテレビやスマートフォンもまた普及している
・自由と柔軟性。消費者はコンテンツをどんなスクリーンでもオンデマンドで視聴でき、体験は個々人の好みにパーソナライズされている
・素早い革新。インターネット・テレビのアプリケーションは頻繁に改善を行い、UHDや4Kの動画コンテンツは主にストリーミングで配信される。
最終的には、リニア型テレビを観る視聴数や価値が下がるにしたがい、それが今や用いているケーブル、ファイバー、無線などが再配置され、インターネット通信の拡大に繋がる。
衛星テレビの購読者はより少なく田舎じみてきて、数十年の間で、固定電話になるだろう。遺物である。
2017年、私たちは会員たちのために、損益ベースで60億ドル以上をコンテンツに費やそうとしている。
マーケティングには10億ドル以上を費やそうとしているのに加え、ネットフリックスに参加する人たちがとてもワクワクするようにするのだ。
人々の好みはとても幅広い。それは単一市場でもそうだ。インターネットにより、私たちは幅広く、ユーザーインターフェースは素早く学習し、個々のユーザーの好みに応じて推薦を行うことができる。
アクション大作や韓国のメロドラマ、アニメ、SF、サンダンス映画、ゾンビショー、子供向けアニメなどを愛する会員たちは、ネットフリックスのホーム画面が興味がある面白いタイトルでいっぱいなのを目にするだろう。
私たちのライセンスは概ね時間ベースだ。なので、私たちはあるタイトルに関して複数年の排他的SVOD(subscription video-on-demand)ライセンスを支払うかもしれない。
それぞれの市場において、私たちはコンテンツを複数のサプライヤーからライセンスし、コンテンツ産業の断裂状態をよく表している。
私たちの典型的な入札では、SVODの排他的な権利を求めるが、いくつものケーブルなどの放送ネットワーク、オンライン動画の競合たちと争うことになる。
原則として、コンテンツの所有者はいつでも別の入札者を求め、一つの入札者が強くなりすぎるのを好まない。
2013年以来、私たちの規模は、経済的にネットフリックスのオリジナル・コンテンツを作ることができたし、規模と自信がさらに大きくなるにつれて、私たちが提供するものも成長した。
私たちは、リニア型の競合に比べて、シリーズや映画を公開するときになると大きなアドバンテージを持っていると信じている。
リニア型のネットワークは、視聴者をある夜のある時間に引きつける必要がある。私たちはもっと柔軟になれる。
なぜなら、ネットフリックス上にあるそれぞれのショーは、リニア型テレビのように限られたゴールデン・タイム枠をめぐって争ったりしていないからだ。彼らが視聴者を見つけるために長い時間をかけないといけないショーでも、私たちはじっくり育てていくことができる。
これにより、私たちはパイロット・エピソード(試験的な一話目)だけで終わりということをせず、一つのシーズンに慎重にコミットすることができる。
それに加えて、私たちはよりクリエイティブな物語(ストーリーに応じ、エピソードごとに長さが違ったり、先週の復習もいらないし、何が”シーズン”であるかの固定概念もない)のためのプラットフォームを提供できる。
このことにより、私たちはクリエイティブな才能を引きつけやすいと信じている。
正しいコンテンツを正しい会員に向けてプロモーションをパーソナライズすることで、私たちのオリジナルなコンテンツを促進する巨大な機会を手にしており、特に長さに制限がない。「ハウスオブカーズ」のシーズン1の初日からずいぶん後になって、数多くの会員たちがまだシリーズを観始めている。
私たちのオリジナル・シリーズの進捗は素晴らしく、プロモーションの額もどんどん増えている。どんなリニア型ネットワークであっても、そのコンテンツには誇りを持つだろう。私たちの成功は、チームの素晴らしくクリエイティブな実行と、巨大なオンデマンド・プラットフォームの力のおかげなのだ。
ネットフリックスはグローバルなインターネットテレビ・ネットワークであり、映画やテレビシリーズをコマーシャルなしで、インターネットに繋がるあらゆるスクリーンで無制限に、手に届く、義務のない月額料金で提供している。
ネットフリックスは集中力のある情熱的なブランドであり、なんでもやろうというブランドではない。例えば、スターバックスであり、セブン・イレブンではない。サウスウェスト航空であり、ユナイテッド航空ではない。HBOであり、Dishではない。
私たちは、閲覧回数で課金したり、無料の広告で支えられたコンテンツを提供することはない。それらのビジネスモデルは、他の企業にとっては良い方法だ。私たちはコマーシャルなしの固定料金で無制限の視聴を提供するのだ。
私たちは、ニュースやユーザー生成コンテンツ、スポーツ、ポルノ、音楽ビデオ、ゲーム、リアリティなど全てのジャンルの動画を配信する一般的な「動画」会社ではない。
私たちは映画とテレビシリーズのエンターテイメント・ネットワークである。
私たちは、ほとんどのMVPD(multichannel video programming distributor)が顧客との関係で持っている複雑さとフラストレーションへの救いである。
私たちはものすごく実直であろうと努力する。
私たちの争わないオンライン・キャンセルよりも良い例は存在しない。会員たちは解約したいときに解約できるし、また使いたくなったら戻ってこれる。
私たちは、オンデマンドの自由であり、まとめて視聴することが好きだ。いつでもどんなスクリーンでもという柔軟性だ。世界中から最も嬉しいタイトルをそれぞれの人たちのために見つけ出すパーソナライズされた体験だ。
この体験を会員たちに届けるため、2017年にはテクノロジーと開発に10億ドル以上を費やした。
私たちは、会員たちがリラックスしたり刺激を得るのに使う時間のシェアを、閲覧課金コンテンツやDVDの視聴、他のインターネット・ネットワーク、ビデオゲーム、ウェブの閲覧、雑誌を読んだり、海賊版の動画、その他多くのものと取り合っている。
今後、何年もの間、これらのエンターテイメントの形は改善するだろう。
あなたが先月、ネットフリックスを観なかった夜や週末の行動のことを思い返せば、私たちの競合がどれだけ幅広く、激しいものかがわかるだろう。
私たちは、メンバーたちの「真実の瞬間」をもっと勝ち取ることに奮闘している。その意思決定のポイントは、例えば、午後7時15分に会員がリラックスしたいとき、友人や家族と体験を共有したいとき、あるいは退屈しているときだ。会員はネットフリックスや他の選択肢のどれでも選ぶことができる。
エンターテイメント市場はとても幅広いので、いくつもの企業が成功できる。例えば、ABCとNBCは歴史的に視聴者や注目、コンテンツなどを取り合ってきたが、どちらも何十年もの間、共存して成功している。同じように、インターネットテレビの世界では、HBOは過去何年かよりも早く成長しているし、私たちのビジネスも拡大している。
多くの人たちがHBOとネットフリックスの両方に課金しており、それはどちらも排他的なコンテンツを持っているからだ。インターネットテレビへの転換は、より素晴らしく消費者を満足させるので、多くのインターネットテレビシリーズの成長を意味する。
海賊版は、多くの国際市場において相当な強豪である。それは無料であり、とても多くの選択肢を提供する。海賊版が簡単で、信頼でき、社会的に受容されるものとなるなら、それは私たちにとって最大の競合となるだろう。
音楽業界の収益は、世界的に、大規模な音楽の海賊版のおかげで15年間減少を続けている。
ネットフリックスのような素晴らしい安価なサービスが、動画産業が音楽産業の縮退に続いてしまうことを防ぐことを望む。
私たちは、これまでの成長やインターネットテレビの継続的な成長から、米国で6000万から9000万の会員を集められると考えている。
私たちが米国でどんな利益構造にするかのほとんどはトップダウンで決められる。
将来のどんな期間でも、私たちは収益を見積もり、何に使いたいかを決め、その期間においてどのくらいの利益率が欲しいかを決定する。
コンテンツに対する入札の競争圧力がある場合には、お金を使いすぎるよりも、少し少ないコンテンツしか持たないことを選ぶだろう。
同じことはマーケティング予算についても言える。結果は、それらの投資決定がもたらした会員数の成長として現れる。
海外での利益率戦略は、利益が出る限りにおいてできるだけ速く多くの国に拡大することだ。最初に参入した国際市場(カナダ、南アメリカ、英国、アイルランド、スカンジナビア諸国、オランダなど)は速い成長を見せており、すでに黒字化している。
これらの市場は引き続き成長し、2016年に開始した残りの地域への拡大の力となる利益をもたらすだろう。
2017年は7%の営業利益を目標としており、成長と収益性のバランスが取れるに連れて、着実に利益率を上げていく予定だ。
コンテンツへの投資が大きく増えており、所有するオリジナル作品への成長もあるので、支出は最初のうちはコンテンツへの減価償却よりも大きくなり、フリーキャッシュフローを制限してしまうだろう。
私たちは負債によってこれらの事前の現金の必要性には十分な資金がある。動画業界の基準と歴史に従い、コンテンツを正当な限り早く償却する。
Netflixは中国以外のどこでも利用できる(今後数年内に中国でもコンテンツをライセンスする予定だ)。
私たちの国際的な成長は、サービスの改善につれて何年もの間、広がっていくだろう。
2016年に参入した130を超える新しい市場では、国際クレジットカードとスマートフォンを持つ、外向きで豊かな消費者を主要なターゲットとしてスタートしている。
これまでに参入した全ての市場でそうだったように、私たちのアプローチはよく聞き、学習し、迅速に改善し、コンテンツや言語、より良いNetflix体験を追加し、長い間、会員たちを喜ばせることだ。
私たちは、これらの新しい市場において、Netflixの認知はまちまちだし、文化的な違いもあるし、コンテンツの好みも多様だということを知っている。
一部の国では、ブロードバンドや決済インフラに関しても課題がある。しかし、私たちはインターネットのユビキタス性の成長や、急速な技術の発展、素晴らしく質の高い物語は国境を超えるはずだとも信じている。
だからこそ、私たちはどんどんコンテンツを世界でライセンスしており、それによってNetflixの会員たちは世界のどこにいても同じ映画やテレビシリーズを楽しむことができ、古臭いビジネスモデルや時代遅れの制限とは無縁でいられる。
それに加えて、私たちは英語以外の言語のオリジナルコンテンツをどんどん増やしている。メキシコ、フランス、イタリア、日本、ブラジルなどの地域だ。
私たちの世界的な配布により、Netflixは世界中の多くの文化にとって魅力あるストーリーを持ってくるのに優位な位置にいる。
Netflixが世界に広がるにつれ、消費者や政府の期待が上がることはわかっている。私たちはその期待に沿えると思うし、古いルールはリニア型テレビには適用されても、インターネットテレビには当てはまらないことを政策立案者たちと確かめる。
私たちは1997年に郵送でのDVDレンタル会社としてスタートし、最初の5年間はキャッシュフローをプラスにする持続的なモデルを作るのに苦労した。
その次の5年間のほとんどは、米国のBlockbusterとの戦いに費やした。
2007年には米国でストリーミングを始め、2010年に海外に進出した。
身の締まるような「Qwikster」DVDという間違いは2011年にあった。
最初のオリジナル・シリーズは2013年に公開した。
2016年に世界中に展開したが、それはNetflixを創業して20年近く経ってからのことだ。
次の数十年をかけて、インターネットテレビはリニア型を置き換え、私たちは驚くようなエンターテイメント体験を提供してリードし続けていることを望む。
<完>