Amazon.com 2017年3Q決算まとめ 収益は力強く成長も利益は減少、Alexa及びEchoに注力
Amazon.com, Inc.

Amazon.comの2017年3Qの決算が出ていたので、こちらもまとめていきます。序盤は文章をまとめ、後半で決算データの視覚化を行なっています。


キャッシュフロー

まずは、Amazon.comが長期的に最大化を目指しているフリーキャッシュフローについてです。

営業キャッシュフロー(TTM:直近12ヶ月)は150億ドルから171億ドルに14%の増加。フリーキャッシュフロー(TTM)は90億ドルから81億ドルへと減少しています。

売上高は34%成長し437億ドルに

続いて売上高です。


四半期の売上高は437億ドルで、前年同期の327億ドルに比べて34%の成長。

売上高には2017年8月28日に買収したWhole Foods Marketの売上13億ドルが含まれています。

Whole Foods Marketおよび為替の影響を除外すると、前年からの売上成長率は29%となります。

営業利益と純利益

四半期の営業利益は3.47億ドルで、前年同期の5.75億ドルから40%の減少。営業利益にはWhole Foods Marketの営業利益2100万ドルが含まれています。

純利益は2.56億ドル、希薄化後一株あたり利益は0.52ドルと、前年同期比(純利益2.52億ドル、希薄化後一株あたり利益は0.52ドル)とほとんど同じ水準です。


CEOのジェフ・ベゾスからのコメント

ジェフ・ベゾス氏は次のようなコメントが寄せており、Alexaに対する気合いと意気込みを感じる内容です。



・先月、新しいAlexa対応デバイスを5つ公開し、インドでAlexaを導入し、BMWとの協業を発表し、”スキル”の数が25000を超え、AlexaをSonosスピーカーと統合し、Alexaが二つの声を聞き分けられるようにしたりした

・Alexaの頭脳はAWSのクラウド上にあるため、新しく獲得した”スキル”は、新しいデバイスを買った人だけでなく、全てのEcho利用者が利用できる

・数千万台のAlexa連携デバイスが購入され、Echoには10万を超える5つ星レビューが寄せられ、去年の同じ時期よりもアクティブユーザー数は5倍以上に増えた

・何千人もの開発者やハードウェアメーカーが新しいAlexaのスキルやデバイスを開発しており、今後もさらに良くなるだろう

ハイライト

ハイライトとして次の項目が羅列されています。めちゃ長いですが、以下のような施策を打ってきたようです。

・2017年8月28日にWhole Foods Marketを買収した。我々は共に「高品質で、自然で、オーガニックな食品を誰もが買える価格で提供する」というビジョンを追い求める。

・3つのEchoデバイスを発表した。全く新しいEcho(99ドル)、Echo Plus(149.99ドル、簡単にセットアップできるスマートホーム・ハブ付き)、Echo Spot(129.99ドル、ニュースなどをみられる小さなスクリーン付き)の三つ。

・全く新しいFire TVを4KウルトラHD、HDR、Alexa・ボイス・リモートをつけて69.99ドルで公開した。

・Alexaによる広域のFire TVのボイスコントロール機能を公開した。利用者はEchoデバイスをFire TVと連携し、Alexa経由で番組やアプリ、その他の操作を行うことができる。

・Alexaによって、他のどのEchoデバイスの番号にも無料の電話をかけることができる。また、Echo Connectを使えば家庭の電話と接続してハンズフリーの通話を楽しむことができる。

・Alexaのスキル・ストアでは今や25000ものスキルを提供している。eHarmonyアカウントに追いついたり、マーショーン・リンチとともにNFLのトリビアを聞いたり、子供向けコンテンツを楽しんだりできる。

・何万人もの開発者がAlexaボイス・サービスを用いてAlexaを自身の製品に組み込んでいる。その中にはBMWやMINIの乗用車や、「Sonos One」「Harman Kardon’s Allure」などのスマートスピーカー、モトローラのX4スマートフォンが含まれている。

・AmazonとMicrosoftは、間も無くCortanaとAlexaがお互いに話せるようになる、と発表した。Alexaの利用者は仕事のカレンダーにアクセスしたり、ミーティングを予約したり、帰りがけに花を買うように自分にリマインドしたり、仕事のメールを読み上げたりといったCortanaのユニークな機能と連携できる。同じように、Cortanaの利用者はAlexaに命令してスマートホームを制御したり、Amazon.comで買い物したりすることができる。

・Alexa及びEchoがインドと日本に上陸することを発表した。その中で、新しいAlexaの体験をインドと日本の利用者向けに一からデザインした。

・マルチルーム音楽を導入し、複数のEchoデバイスで同じ曲を再生できるようにした。

・アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリアのAmazonミュージック・アプリにはAlexaを搭載し、自然言語によるコントロールとビジュアルなアプリの体験の力を組み合わせている。

・Amazon Music Unlimitedがフランス、イタリア、スペインの利用者に向けて公開された。たったの月間9.99ドルで5000万以上の曲を聴くことができる。

・「Amazon Key」では家の中に配達したり、ゲストやサービスアポイントメントに対してセキュアな家へのアクセスを提供できるプライム会員専用のサービスを開始。Amazon KeyはAmazon Cloud Camと連携する。Cloud Camは1080ピクセルの高画質を搭載した賢いインドア用セキュリティカメラで、ナイト・ビジョンやツーウェイ・オーディオ、ワイドアングル、過去24時間のクリップなども搭載。119.99ドル。

・新しいタブレット機器としてFire HD 10を公開。10.1インチのワイドスクリーン、1080pのフルHDディスプレイ、30%高速なパフォーマンス、より大きなストレージ、長いバッテリー寿命、Alexaハンズフリーのオプションなどもあって149.99ドル。

・北米に二つ目の本社機能のある拠点を探している。そこでは50億ドルを投資し、5万人の雇用を生み出す予定で、北米中から238もの提案を受けている。

・リアル店舗「Amazon Books」をワシントン州ベルビュー、カリフォルニア州サンノゼ、ロサンゼルス、そしてニューヨークに開いた。これで12店舗を展開中。

・風力発電所「Amazon Wind Farm Texas」を開始し、100を超えるタービンから100万メガワット以上を発電する。Amazonは現在、18ものソーラー及び風力発電のプロジェクトを有しており、35のプロジェクトが進行中だ。現在、年間33万世帯を支えるだけのクリーン・エネルギーを生産する能力がある。

・モータースポーツで有名なToyota Racing Development、グローバル人材サービス企業Randstad、早期のガン発見に取り組むGRAIL、Hulu、FICOなどがAWSをパートナーとして選んだ。

2017年4Qの見通し(ガイダンス)

・売上は560億ドルから605億ドルの間になる見通しで、前年同期比で28%から38%の成長を見込んでいる。

・営業利益は3億ドルから16.5億ドルになる見通し(前年同期は13億ドル)

・このガイダンスでは、今後の買収や投資、リストラなどがない場合を想定している

収益の内訳

ここからは事業数値をビジュアライズしていきます。まずは収益です。

第4四半期(Q4)に売上が増大する季節性があるようです。

Q3 2016とQ3 2017を比べると、オンライン直販(Online stores)は203億ドルから264億ドル、サードパーティ収益(Third-party seller services)は51億ドルから79億ドル、定期課金(Subscription services)は14億ドルから24億ドル、AWSは29億ドルから46億ドルへと成長しています。

また、リアル店舗(Physical stores)の収益が13億ドルほど発生しています。

比率でも見てみます。

オンライン直販の比率は67%から60%へと減少し、サードパーティ収益が16.7%から18.1%、AWSが9.5%から10.5%、定期課金が4.7%から5.6%へと増加しています。

セグメント別の収益も見てみます。

四半期売上を見ると、北米事業は189億ドルから254億ドル、海外事業は106億ドルから137億ドル、AWSは32億ドルから46億ドルへと増大しています。

割合でもみてみます。

これまた小さな変化には見えますが、AWSの比率が9.88%から10.48%へと増加しています。

比率が減っているのは国際事業で、32.43%から31.35%へと減っています。それ以上に北米とAWSが成長しているということだと言えます。

コスト構造

コスト構造をチェックします。

2016Q3の方が全体の利益率はよかったのですが、売上原価率(Cost of sales)を見ると65%から63%に改善しています。

コストが増えているのは物流(Fulfillment)と技術&コンテンツ(Technology and content)で、それぞれ13.25%から14.68%、12.64%から13.59%へとコストが増大しています。

資産構成

続いて、資産構成です。これは顕著な変化があります。

まず、有形固定資産(Property and equipment, net)が291億ドルから453億ドルへと大きく増加しています。

のれん(Goodwill)も38億ドルから132億ドルへと増加していますが、これはWhole Foods Marketの買収によるものでしょう。

現金同等物は193億ドルから127億ドルへと減少しています。

資産の調達源泉

資産の調達源泉を表すバランスシートの右側(負債と自己資本)もみてみます。

流動負債が470億ドルと大きいですが、それ以外で目立つのは長期借入金(Long-term debt)で、77億ドルから247億ドルに増大しています。

資本剰余金(Additional paid-in capital)も172億ドルから202億ドル、利益剰余金も49億ドルから68億ドルへと増大しています。