これからはクレジットよりもデビットカード?Mastercardの事業数値からみるデビットカードの普及具合

今回は代表的なクレジットカードブランドの一つ、Mastercardを取り上げます。

前回、Visaについて取り上げたのでこちらも並んでお読みいただくと楽しいと思います。

営業利益率66%というとんでもない利益率を誇るVisaの事業KPIを追う!

始まりは1966年、ウェルズ・ファーゴやバンク・オブ・カリフォルニア(当時)などの複数の銀行によって「Interbank Card Association(ICA)」が組成されました。

1969年には「Master Charge」の名前や、円を二つくみあわせた商標を獲得。

1979年に名称が正式に「Mastercard」に変わり、1980年には中国で初めて発行されたクレジットカード・プログラムとなります。

1990年代には「Europay International」との協業により世界初のグローバルなオンライン・デビットカード「Maestro®」を開始。

1997年には「プライスレス(Priceless)」をキャッチコピーとする有名な広告キャンペーンを開始。

2002年にはEuropay Internationalと合併し、一旦非上場会社になり、2006年に再びニューヨーク証券取引所に上場。

その後もVisaやAMEXと争う3大クレジットカードブランドの一角として成長を続けています。

売上高は2000年の14億ドルから2016年には107億ドルに。営業利益率は2009年ごろから急激に上昇し、安定して50%台の極めて高い水準をキープしています。


決済総額の内訳

Mastercardによるカード決済総額(GDV)の推移を見てみます。同社のクレジットカードとデビットカード、それぞれがどのくらいの金額使われているかを2001年までさかのぼってみました。


MastercardのGDVは2001年には1兆ドルほどでしたが、近年は5兆ドル近くにまで増加しています。

驚くのは、クレジットカードよりもデビットカードやプリペイドの方がより大きく成長していることです。

2016年にはクレジットカードが2兆5350億ドル決済されたのに対し、デビット・プリペイドは2兆2930億ドルに上っています。


このままいくと、デビットカードによる決済高がクレジットカードを超える日も近いのかもしれません。

カードの発行枚数の推移

続いて、カードの発行枚数です。こちらも2001年まで途切れなくさかのぼれれば良かったのですが、途中で発行枚数のデータが年次報告書(Form 10-K)にない年が続いたため、二つに分けてみてみます。

まずは2001年から2004年までです。

当時はクレジットカードがほとんどだったことがわかります。2004年の時点でクレジットカードが5.8億枚、デビットカードが9970万枚。

「Off-Line Debit Programs」と書いてあるように、当時はオフラインによるデビットカードの方が多かったようです。

続いて、2013年から2016年です。

デビットカード(Debit and Prepaid)の割合が大きくなっていることが一目見てわかります。

増加スピードも早く、2015年に7億8300万枚に達してクレジットカードよりも枚数が多くなっています。

2016年にはクレジットカードが7億8200万枚に対して、デビットカードは8億8800万枚に到達しています。

コスト構造の変化

続いて、Mastercardのコスト構造の変化をみてみます。2009年以降、営業利益率が大きく改善していますが、どのような変化があったのでしょうか?

営業費用の対売上比率の変化です。

まず大きいのは、売上原価(Cost of revenue)が存在しません。これは、MastercardがVisaと同じく究極のライセンスビジネスだからこそ成立する独特なビジネス構造です。

最も大きな費用は一般管理費(General and administrative)ですが、2000年ごろは売上に対して50%程度を占めていたのが、近年は34%前後にまで小さくなっています。

次に大きい広告宣伝費(Advertising and marketing)も30%以上あったのが、10%を下回るレベルにまで、売上に対するコストが低下しています。


時折発生している「Litigation settlements」は訴訟に関する費用で、Visaとともにこの2社は独占禁止法に関する訴訟が頻繁に発生しており、それに関する費用のようです。


資産の内訳

続いて、Mastercardの財務状況をみていきます。まずはバランスシートの左側(資産)をみます。

Mastercardの総資産は2016年末には186億ドルに達しています。そのうち現金同等物は67億ドルと、アメリカ企業にしてはかなりキャッシュリッチな部類と言えます。

有形固定資産(Property, plant and equipment)はわずか7億ドルと小さく、買収によるのれん(Goodwill)は17億ドルほどです。

比率でもみてみます。

総資産のうち、現金同等物の割合は36%とかなり高くなっています。流動資産だけで総資産の70%前後を占めており、アメリカ企業にはかなり珍しいタイプですね。株主から怒られないのでしょうか。

資産の調達源泉

続いて、Mastercardの資産の調達源泉がどうなっているかをバランスシートの負債と資本の部からみてみます。

最も大きいのは利益剰余金(Retained earnings)で、2016年末には194億ドルにも達しています。総資産が187億ドルですから、総資産よりも利益剰余金の方が大きくなっています。

どうしてこんなことになるかというと、Mastercardがかなり積極的な自社株買いを行ってきたからです。2016年末には自己株式(Treasury stock)を170億ドルも保有するまでに至っています。

そのほか、資本剰余金(Additional paid-in capital)が42億ドル、長期借入金(Long-term debt)が52億ドルに達しています。


キャッシュフロー

最後に、Mastercardのキャッシュフローの状況をみてみます。

フリーキャッシュフローは2009年以降、急速に増加し、2016年には40億ドルを超えています。

Mastercardの時価総額は1584.25億ドルなので、フリーキャッシュフロー倍率はおよそ39.6倍ということになります。