利益率向上の理由は?躍進を続けるスタートトゥデイの事業KPIを徹底分解!

今回調べるのは躍進著しいスタートトゥデイです。まずは軽く歴史を振り返ります。


最初は1998年5月に有限会社として設立され、2000年1月にはCD・レコードの輸入販売サイト「STMonline」の運営を開始しました。

2000年4月に株式会社化されると、10月にアパレルECの先駆け「EPROZE」を開始。

2004年12月には17のオンラインセレクトショップを集積した「ZOZOTOWN」を開始。

2007年12月、東証マザーズに上場すると、2011年5月にZOZOTOWNのグローバル版を公開するも、2014年7月にサービス終了。

しかし国内での成長は衰えることを知らず、今年の8月に時価総額が1兆円を突破し、代表の前澤さんもTwitterで喜びを表明しました。


輝かしき損益の推移

とにかくスタートトゥデイには勢いがあります。まずは損益の変化を見てみます。

2007年3月期の売上高は60億円ほどでしたが、2017年3月期には763億円にまで成長しています。ここ2年間の成長は過去と比べてさらに加速しているように見えます。

また、注目したいのは収益性が年々上昇していることです。2007年3月期の営業利益率は13.6%でしたが、10年後の2017年3月には34.4%と、2倍以上改善しています。


売上原価率が45%から9.36%にまで大きく改善

スタートトゥデイの営業利益率が大きく改善した要因はなんでしょうか?

コスト構造の変化を見てみましょう。

かつては売上原価率が40%以上ありましたが年々改善し、ここ3年は10%以下となっています。

その他に目立つ費用としては、荷造運賃が対売上高で11%、代金回収手数料が7%、給与手当が8%ほどとなっています。広告宣伝費は年によってかなり違いがあります。


収益性の改善は、売上原価率が40%から10%以下へと、4分の1以下に下がったことが大きな要因ということがわかりました。しかし、どうして原価率がこれほど低くなったのでしょうか?

売上原価率の改善は収益構造の変化にあった!

スタートトゥデイの売上原価率が大きく改善した理由を知るには、同社の収益構造について理解しておく必要があります。



スタートトゥデイの主要事業はもちろん「ZOZOTOWN」におけるアパレル販売ですが、その中には「受託ショップ」「買取ショップ」という主に二つの形態があります。

「買取ショップ」は各ブランドからファッション商材を仕入れ、自社在庫を持ちながら販売します。

一方、「受託ショップ」では各ブランドが「ZOZOTOWN」にテナントとして出店します。スタートトゥデイは出店ブランドの商品を受託在庫として預かり、代わりに販売します。この場合、スタートトゥデイ側は仕入れコストを負う必要がなく、受託販売手数料を受け取ることになります。


次のグラフはスタートトゥデイの商品取扱高の推移ですが、受託ショップ事業の比率がとても大きくなっていることがわかります。

割合ベースでもみてみます。

2007年3月期には受託ショップの取扱高は全体の60%程度でしたが、割合が年々増加していき、2017年3月期には90%にまで達しています。

取扱高だけでなく、売上高の内訳もみてみます。

売上比率でもみてみます。

2007年3月期には買取ショップの売上が全体の75%近くを占めていましたが、2014年3月期には20%、2017年3月期には0.25%にまで減っています。

逆に、受託ショップ事業は24.5%ほどだったのが、近年は72%ほどと多くを占めています。

この収益構造の変化が、売上原価の劇的な低下に繋がっていると言えます。

テイクレートがめちゃ高い

ここまで、スタートトゥデイの利益率が改善した理由は売上原価率が小さくなったからであること、そしてそれは仕入れコストが発生しない「受託ショップ」事業の売上比率が大きくなったからであることを確認しました。

この受託ショップ事業ですが、商品取扱高のうちどのくらいの割合がスタートトゥデイの売上になるのでしょうか?ちょっと計算してみましょう。


なんということでしょう。ZOZOTOWNでは、商品の取扱高に対して実に28.79%が売上高となっている(2017年3月期)ことがわかります。この比率をテイクレートと呼びますが、年々増大していることがわかります。

つまり、ZOZOTOWNで1万円の商品が売れると、そのうち3000円弱がスタートトゥデイの売上になるということです。すごい。

出店するアパレルブランド側からすれば大きなコストに見えますが、逆にいうと、これほどのコストをかけてでもZOZOTOWNに出店する価値があるということだと言えます。


バランスシートの内訳

ここからは、スタートトゥデイの資産や負債の変化をバランスシートから紐解いていきます。

まずは資産の変化を追ってみます。

2017年3月には、総資産557億円のうち、実に220億円が現預金、208億円が売掛金となり、この2つで資産のほとんどを占めています。

投資その他の資産が56億円に達していますが、全体から見るとあまり大きくありません。

負債もみてみましょう。

2017年3月期時点を見ると、資産557億円に対して負債合計は258億円にすぎません。さらに、そのうち115億円とかなりの部分が「受託販売預り金」になっています。


自己資本の内訳もみます。

利益剰余金が385億円とかなりの大きさになっています。また、自社株買いを117億円まで進めています。


キャッシュフローの変化とFCF倍率

最後に、スタートトゥデイのキャッシュフロー状況をみておきます。

2017年3月期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は171億円に達し、大きく増えていることがわかります。

スタートトゥデイの現在の時価総額は1.07兆円ですから、FCF倍率を単純計算すると62.5倍です。

これはつまり、スタートトゥデイを現在の時価総額で買収して、同社が毎年171億円のFCFを生み続けたとすると、元を取るまでに63年かかるということです。

ただ、スタートトゥデイは急成長企業であるだけにFCFは今後も増大することが期待されています。その成長度次第では、高い時価総額がよりリーズナブルなものになっていく可能性はあります。

今後も引き続き注目していきたいと思います。