今回取り上げるのはインド最大のオートバイメーカー「Hero Motocorp」です。
(公式HP)
Hero Motocorpの始まりは1984年。
インド最大級の自転車メーカー「Hero Cycle」と日本のホンダが合弁で「Hero Honda」を設立してインドでのバイク生産を開始しました。
インドのバイク市場は国内メーカーによる寡占状態となっていましたが、政府の外資規制緩和をきっかけにスズキ、川崎重工など日本企業が参入。
Hero Hondaもその流れに乗ってシェアを拡大していきます。
しかし、自社製品のインド販売を強化したいホンダとの間に亀裂が生じ、2010年に合弁を解消。
2011年にHero Motocorpに社名を変更して現在に至ります。
18/3期の売上高は3,340億ルピー(5,246億円)で前年から6.4%の増収。
税引前利益も524億ルピー(823億円)まで増加し、利益率は15.7%となっています。
Hero Motocorpの商品ラインナップは大きく「バイク」と「スクーター」に分かれます。
部品やメンテナンスなどの付随サービスも提供しており、メンバーシップサービス「Joyride」を展開。
会員数は100万人を突破しました。
18/3期の販売台数は758.6万台まで増加し、インド国内のバイク販売が全体の86%を占める650万台ほど。
スクーターも前年比+20%と成長を牽引しました。
Hero Motocorpの製造原価率は65.5%と6年間で7ポイント改善しました。
バランスシートも見ていくと、総資産1,740億ルピー(2,733億円)に対して現金・金融資産の合計が879億ルピー(1,381億円)と約半数を占めています。
資産の調達元のほとんどは株主資本で、借入金の合計は23億ルピー(36億円)程度。
営業キャッシュフローは増加傾向にあり、18/3期はフリーキャッシュフロー319億ルピー(501億円)を創出しました。
株価は堅調に推移しており、現在の時価総額は6,323億ルピー(9,932億円)です。
キャッシュ879億ルピーと借入金23億ルピーを考慮した企業価値(EV)は5,467億ルピー。
18/3期のフリーキャッシュフロー319億ルピーに対して17.1年分という評価を受けている計算となります。
インドのバイク販売台数は年々増加しており、2016年に中国を抜いて世界第1位となりました。
2018年3月末時点の総販売台数は2,019万台で、Hero Motocorpのインド国内シェアは約37%。
市場は年平均成長率(CAGR)9%のペースで拡大していき、2023年には250億ドル(2.8兆円)規模に達する見込みです。
トップシェアを維持しているHero Motocorpですが、近年は2位・ホンダの猛追を受けています。
ホンダはスクーター販売が右肩上がりで、シェアは60%に到達する勢いです。
国内で劣勢となっているHero Motocorpの次なる一手は「海外展開」です。
現在の展開エリアは37カ国で、やはり成長市場は東南アジア。
アニュアルレポートによると、バングラデシュでの売上は前年から70%増加したとのこと。
中東やアフリカ各国への進出も加速しており、ナイジェリアなど経済成長が進む国を攻略していく狙いです。