今回はECショップ『リコメン堂」などを展開する「ジェネレーションパス」(証券コード: 3195)をピックアップします。
(公式HP)
ジェネレーションパスの創業者は静岡県出身の岡本洋明氏です。
1986年に駒澤大学を卒業した後、「日本信販(現・三菱UFJニコス)」に入社。
債券回収や新規事業の立ち上げに携わりました。
30歳手前で退社し、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得します。
帰国後に「ソフトブレーン」の取締役に就任してIPOを果たした後、2002年にジェネレーションパスを創業しました。
(参考)
ジェネレーションパスの創業事業は意外にも「アルバムのデジタル化」。
岡本氏は3人兄弟の次男で自分が写っている写真は他の兄弟と一緒のものがほとんどで、自身の子どもたちに見せようにも実家からアルバムごと持ってくるわけにはいかなかったことから、アナログ写真のアーカイブ事業を思いつきました。
葬儀用映像の作成や結婚式のプロフィールDVD作成事業が軌道に乗る中、制作ノウハウをEC事業に活かせると考えた岡本氏は2007年にECショップ『リコメン堂』を立ち上げます。
MBAで学んだ統計学を武器に業績が急速に拡大。
2013年にはECショップを持ちたい企業向けのコンサルティングサービスもスタートし、翌2014年に東証マザーズへの上場を果たしました。
2015年にはタイの「チャロン・ポカパン(CPグループ)」から出資を受け、海外事業も積極化させています。
18/10期の売上は87.8億円(+15.0%)、営業利益は1.9億円に急増しています。
営業利益率は低下傾向にありましたが、18/10期は2.2%に上昇しました。
ジェネレーションパスは大きく2つのサービスを展開しています。
現在はデジタル・アルバムサービスは行なっておらず、『リコメン堂』運営などのECマーケティング事業が中核に。
また、OEM商品を開発したい企業に対する業務支援サービスも提供しています。
ECマーケティング
ジェネレーションパスはECショップ『リコメン堂』を自社で運営しています。
多様なジャンルの商品を取り扱っていることが特徴で、「楽天市場」など多数のECモールに出展しています。
基本的な仕入れ販売モデルとなっており、ジェネレーションパスが商品を買い付けて『リコメン堂』に商品ページを作成して出品しています。
自社ECを持たない企業の販路拡大や、ECサイト開設に向けたテストマーケティングとして『リコメン堂』を活用する顧客企業も数多くいます。
(Simplus)
2017年1月に自社ブランド「Simplus」も立ち上げており、オーブントースターやテレビなど様々な商品を販売しています。
そのほか、彼らは「EPO(EC Platform Optimization)」と名付けたECサポート事業も展開。
サイト構築や在庫管理、SEO対策など立ち上げから運用までECサイトの運営に必要な業務をサポートします。
OEM支援サービス
自社ブランド立ち上げで得たノウハウを活用し、ジェネレーションパスはOEM支援サービスも提供しています。
企画からサンプル製作、工場選定や量産・品質管理、納品、アフターケアに至るまで、OEM商品の販売に必要な業務全体をサポートしています。
セグメント別の売上高を見てみると、ECマーケティング事業の売上が69億円と売上全体の78%を占めます。
OEM支援も堅調に伸びており、今期は13.2億円まで増加しました。
「その他」は2017年9月に買収した「アクトグループ」の業績が加わったことで大幅な増収となっていますが、不採算となったため2018年11月に株式譲渡を発表しています。
中核事業である『リコメン堂』の事業KPIをチェックしていきます。
提携店舗数は着々と増加し、647店舗に。
ECサポートの拡充も評判となって顧客ネットワークは着々と広がりを見せています。
パートナー拡大に併せて取扱商品数は150万点を突破しました。
前年までの出店先内訳を見てみると、楽天系とYahoo系で24店舗。
近年はクーポンサイトなども含めてバランス良く出店しており、海外ECへの進出も果たしています。
(KJT.com)
ジェネレーションパスは2015年に「KJT.com」への出店を開始。
KJT.comはもともと上海の政府機関が運営していたECサイトで、日本や韓国など海外の商品を販売する「越境EC」です。
海外売上が開示されていないため現在の売上比率は10%に満たない程度ですが、ジェネレーションパスの成長戦略において重要な位置を占めています。
ジェネレーションパスのコスト構造を確認していきます。
売上原価率は70%前後で推移しており、わずかですが改善傾向にあります。
販管費率は宅配代金の高騰などによって28.6%に上昇しています。
今期はコンサルティングサービスが伸長したことにより、ECマーケティング事業が大幅な増益となりました。
バランスシートもチェックしてみましょう。
総資産32.9億円に対して現預金が7.0億円と資産全体の20%程度。
棚卸資産が9.9億円と約3分の1を占めています。
資産の調達元を見てみると、約半数が株主資本によるもの。
利益剰余金は4.4億円ほど積み上がっており、借入による調達は6.7億円となっています。
営業キャッシュフローはやや不安定で、今期は売上債権の増加によって2.5億円のマイナスとなっています。
2018年7月以降に株価が急上昇しており、現在の時価総額は114.0億円です。
現預金7.0億円と借入金6.7億円を考慮した企業価値(EV)は113.7億円。
18/10期の営業利益1.9億円に対して59.8年分という評価を受けている計算となります。
ジェネレーションパスは売上100億円を1つのマイルストーンとしています。
買収した企業の業績が振るわず18/10期の達成とはなりませんでしたが、今後は新規事業なども加えたさらなる飛躍を目指しています。
国内ECから事業領域を拡大した『メタECカンパニー』を掲げ、「エリア拡大」「商品開発(垂直展開)」そして「プラットフォーム(水平展開)」を3つの軸としています。
エリア拡大
中国をはじめとするアジア地域を重視しており、「株主であるCPグループの協力のもと、積極的に継続していく方針に変更はありません」とコメント。
2016年9月には同じくEC支援サービスを展開している「Hamee」との業務提携を発表し、システム連携などに取り組んでいます。
商品開発(垂直展開)
サプライチェーンの垂直統合戦略として、自社ブランド「Simplus」のラインナップ拡充に注力。
そのほか、2018年4月より中国大手メーカー「新綻紡貿易」へ資本参加しており、海外における生産機能も強化しています。
プラットフォーム(水平展開)
ジェネレーションパスは2017年12月から新規事業として自社メディア「イエコレクション」を立ち上げました。
(イエコレクション)
イエコレクションはインテリアや雑貨を紹介するWebメディアです。
『レコメン堂』で得られたデータを活用したコンテンツ製作やECショップへの誘導など、既存事業とのシナジーを狙った事業展開を行なっています。
さらに2018年7月、「ユニー・ファミリーマートホールディングス」との業務提携を発表。
(プレスリリース)
ECサイト構築を受注し、リリース後は会員向け割引キャンペーン等も展開していく予定で、市場の期待感が株価に反映されたようです。
『レコメン堂』を起点とした事業拡大で成長を加速していけるのか、引き続きジェネレーションパスの動向をチェックしていきたいと思います。
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