今回は連結会計システムなどを提供する「アバント」(証券コード: 3836)について取り上げます。
(公式HP)
アバントの創業者は現在も代表取締役社長を務める森川徹治氏です。
森川氏は中央大学を卒業後、1990年にプライスウォーターハウスコンサルタント(2002年にIBMが買収)で社会人生活をスタート。
顧客企業への会計システム導入経験を活かし、1997年に「ディーバ」を設立しました。
(参考: 日経ビジネス「日本独自の連結会計ソフトを開発した『ディーバ』」)
連結会計パッケージ「DivaSystem」の開発・販売に加え、2004年には連結会計業務の「アウトソーシング」サービスも開始しています。
2007年に大阪証券取引所ニッポン・ニュー・マーケット(現・東証 JASDAQ)へ上場。
現在では国内時価総額トップ50社の半数以上が「DivaSystem」を利用しており、連結会計システムとして国内シェアNo.1を誇っています。
アバントは右肩上がりの成長を続けており、18/6期の売上は121.1億円となっています。
営業利益は16.3億円で、営業利益率は13.5%まで高まっています。
アバントが提供する会計システムは「連結会計」に特化しています。
(ディーバ)
サービスは業務プロセス視点で設計されており、メニューも連結会計のワークフローに沿ったものとなっています。
決算期の設定といった「決算準備」、グループ会社の「データ収集」、決算期ズレの対応、連結調整仕訳の計上といった「連結処理・分析」を経て、「決算完了」に至ります。
「3クリックアクセス」がコンセプトで、未経験者でも直感的に業務を実施できるユーザー・インターフェースも人気を集めています。
顧客企業数は着々と増加し、もう少しで1,000社に到達というところまで来ています。
旭化成やロート製薬、川崎重工などがクライアントで、顧客の約7割は10社以上の子会社を抱えています。
アバントはシステム販売だけではなく、業務支援サービスにも注力しています。
「決算効率化」や「連結経営管理」、「IFRS(国際会計基準)導入支援」など、連結会計にまつわるコンサルティングサービスを数多く提供しています。
個別決算から始まる決算業務のフルアウトソーシングも提供しており、「開示書類作成」といった部分的な業務の切り出しも可能です。
また、税理士法人と提携しているため、「連結納税」といった税務にも対応しています。
そのほか、運用開始後の運用サポート(Q&A対応)やバージョンアップ支援といった保守サービスも充実しています。
サービス別の売上高にも彼らの特徴が表れています。
新規システム導入に伴う「ライセンス販売」収益は6.8億円ほど。
業務支援をはじめとする「コンサルティングサービス」が74.7億円と売上全体の60%以上を占めています。
保守やアウトソーシングなどの「サポート(その他)」収益も39.6億円と堅調に推移。
システム導入に留まらない業務サポートの質の高さがアバントの競争力であるとも捉えることができます。
アバントのコスト構造をチェックしていきます。
近年の売上原価率は55%前後の水準で推移。
販管費率は改善傾向にあり、29.2%となっています。
バランスシートも確認してみましょう。
総資産88.1億円に対して現預金が45.6億円と資産全体の約半数を占めます。
調達原資として最も大きいのは利益剰余金で、42.7億円まで積み上がっています。
将来の売上となる前受収益は16.7億円ほど。
営業キャッシュフローは安定的にプラスで推移しており、直近3年は10億円以上のプラスとなっています。
18/6期は9.6億円のフリーキャッシュフローを創出しました。
2016年以降の株価は右肩上がりに上昇しており、現在の時価総額は221.6億円です。
現金45.6億円を考慮した企業価値(EV)は176.1億円。
フリーキャッシュフロー9.6億円に対して18.3年分という評価を受けています。
アバントは18/6期の好業績を受けて、新中期経営計画「BE GLOBAL 2023」を打ち出しました。
「CFO組織のデジタル化」をミッションに掲げており、デジタル情報を扱う現代のCFOを「CIFO」と定義。
市場規模は今後5年間で3,400億円規模まで拡大(年平均成長率: 約13%)していくと見込んでいます。
具体的な数値目標を売上高180〜220億円とし、サービスの継続利用料などによる「ストック収益」の比率を70%まで高めることを目指します。
「売上成長率+営業利益率が40ポイント以上」の記載には、SaaS企業の指標として用いられる「40%ルール」を意識していることが伺えます。
彼らはデジタル化3つのポイントとして「見える化(ビジネスインテリジェンス)」、「使える化(コンサルティング)」、「任せる化(アウトソーシング)」を挙げています。
すでに連結会計業務で圧倒的な地位を確立していることを考えれば、これから成長の鍵となってくるのは「ビジネスインテリジェンス(BI)」領域。
(ジール)
BIに特化した導入ベンダー子会社「ジール」では自社のBIツール「DivaSystem SMD」に限らず、先日グーグルから資金調達を発表したABEJAの「ABEJA Platform」や「Adaptive Insights(Wrokdayが買収)」といった製品も取り扱っています。
「CIFO ACCELERATOR」として「世界に通用するソフトウェア企業」となることができるか、今後の飛躍に大きな期待がかかります。
平日、毎朝届く無料のビジネスニュース。
Strainerのニュースレターで、ライバルに差をつけよう。